67.問題は山積み
婚約式をしてからは、私がセリアンスロゥプに訪れ王子妃教育をサラッと学んだり王妃殿下からお茶会に誘われたり
ヴィーと魔法の訓練をしたりと結構な頻度でセリアンスロゥプへ通っている。
ちなみにあの婚約式でのことは王族皆から何度も謝られた。
私が許してもお父様がなあ・・・。それと陛下もなあ・・・。
セリアンスロゥプへ行くのですら、行かなくていいと言い張って中々に揉めて王子妃教育だと言われて渋々許すぐらいだし。
ヴィーとは魔法の特訓をした後お茶をしてそこそこ交流を深めていた。
ヴィーの甘々は際限なく、私を膝に乗せたがったり給餌をしたがったりと忙しい。まだ顔合わせのことを根に持っている私は、拒めるときは拒んでいるが時間の問題だろう。
拒むとあの可愛いお耳と尻尾がぺしゃりと倒れるのを見るのが心苦しくなってくる。
そうして中々平和に過ごしていると、やっぱりそうは問屋が卸さないらしくそれは晩餐に招かれた時に起こった。
私の前に料理が置かれ、隣に座っていたヴィーが甲斐甲斐しく私の給餌をしようと手を伸ばした。
すると
「リー!!毒が入ってる!!食べるな!」
「毒!?」
私は気付かないけど、獣人の鼻には感知できたようだった。
もちろんヴィーの怒り様は凄まじく、料理人、メイド、侍従に侍女、ありとあらゆる晩餐に関わった人間の身柄を拘束した。
そして調べた結果わかったのが、侍女の仕業だったということだ。
何でもヴィーに懸想していたらしく、あの顔合わせのときに侍っていた侍女のうちの1人だったそう。
ヴィーが婚約を嫌がっているのに・・・と妄想が広がったらしい。
侍女であれば、ヴィーを見てればわかるだろうに。
私に甘々なヴィーを見て嫉妬してしまったんだろうけど、王宮の侍女ともあろうものが程度の低いものだ。
そしてまたしてもヴィー関係だ。お父様が怒るだろうな。
と思っていたら、やっぱり激怒。ついでに陛下も激怒してセリアンスロゥプへは行かなくていいとのことで私は現在自宅でかれこれ3ヶ月はのんびりしている。
これだけ色々あっても婚約が破棄されないのは、私とヴィーが番だからである。
番は引き離すと獣人側が執着の塊になり、邪魔する者を害するようになると文献に書いてあるからだ。
お父様もお兄様達もファールの陛下も妃殿下も私を可愛がってくれていたリアム殿下もローガン殿下も皆私の婚約を破棄させよう、白紙にしようと動いてみてくださった。
けれどセリアンスロゥプ側から番は引き離すことができない。すまないとのことだった。
獣人であるレインさん、セオ、ミーナに聞いても番は厄介だから・・・。と婚約は継続となった。
正直私はどちらでも構わない。まあヴィーが私から離れられないらしいので婚約者でいても良いとは思っている。
婚約者が女性と浮名を流してきている相手だとこうなることは覚悟していたし、令嬢達が悪し様に言ってきても言い返せる自信もあったしやり返す(物理でも)自信もあった。
毒を盛られたと聞いても、何も思わなくなってるのは過去の弊害だろう。当事者の私より周りの方が怒っている。
レインさんからヴィーが限界だとのことで、私がセリアンスロゥプへ行くのではなく
ヴィーがレインさんと共にうちへ来ることになった。
もちろんお父様は許してはいないが、王族の頼みは断れないとのことでうちであればと条件を出し会うことになった。
「リー!!!!!!!」
会った瞬間飛びつかんばかりに走って抱き着いてくるヴィーに苦笑する。
「ごきげんよう。元気にしてましたか?」
「ああ。リーだ!私の腕の中にリーがいる!」
と私を抱きしめながら呟いている。抱き枕に徹すること数分。
やっと落ち着いたヴィーが
「リー!!元気そうだ。もちろん私も元気でやっている。リーに釣り合うように色々勉強中だ。まだ転移はできないのだけど」
「それは何よりでございます」
「いつも辛い思いばかりさせてごめんね」
「まあヴィーが引き金ではありますけれど、ヴィーが事件を起こしているわけでは無いので」
「過去の私を殴ってやりたい・・・」
とめそめそし始めた。めんどくさい。
はっ!!!そうだ!!!
「ヴィー、神殿へ行きませんか?」