64.お花畑
その後もまあ色々とあった。飲み物をかけられそうになったり。
それに関しては、そのご令嬢の鬼気迫る勢いで察せられたので魔法で防御した。しかも跳ね返るやつね。
そしたらそのご令嬢は
「なっ!!フェイリーク様!何てことなさいますの?」
と大声で言ってきた。周りに聞かせたかったのだろう。
首を捻ってると。
「だんまりですの?私にワインを掛けておいて?!」
はあ。ここにもお馬鹿さんがいたか。
「まあ。どこのどなたか存じませんが、わたくしグラスも持っていませんのよ?どうやってかけるのかしら?
あら?あなたのグラスは空ですわね。こぼしました?」
詰めが甘いわ。私がグラスを持っているときにしなさいな。
「そ・それは・・・」
「はあ。言っておきますけれど、わたくし魔法が得意ですの。掛けられた飲み物を跳ね返すぐらいお手の物でしてよ?」
とにっこり。
「リー!飲み物を掛けられただって?」
ヴィーがお手洗いに行っている間の出来事である。
「ええ。防御していたからわたくしは何事も無かったのですけれど、こちらのご令嬢がわたくしが掛けたとおっしゃって、わたくしグラスも持っていませんのよ?」
「君、さっきの陛下の言葉聞いてなかったの?リーは私の婚約者だよ?ってことは準王族。そもそもリーはファール国でも公爵令嬢なんだから君とは身分が違うんだけど。不敬だよ」
「・・・」
何も言えなくなったご令嬢。
「何も考えないでやったの?私の婚約者に罪を着せようとしてどうしたかったのかは知らないけれど、一族共にただでは済まないから。君も貴族でいられたらいいね」
「・・・そんな!ヴィット様!私のことお忘れで?」
あらら。またお花ちゃんですか。
「ヴィー」
「ええ?リー!誤解!!私君と何かした記憶ないのだけれど」
「私と夜会に出るたびに踊ったではありませんか。愛おし気に見つめてきましたわ!」
ああ。その手の・・・
「夜会で踊るのは王子の義務でしょう。しかもきっと君から誘ってきたのでしょう。私は誘った覚えはないから」
「ヴィー、この方には自分から誘いませんでしたの?」
「ああ。だって誤解されても嫌でしょう。それに誘いがたくさん来るからね」
「まあ」
「ああ!リー!これからはリーとしか踊らないよ!」
「それはそれで王子として構いませんの?」
「番だからね。他の女性と踊るなんて鳥肌が立つ」
と2人で会話をしていると、ご令嬢がわなわな震えだし
「あれが誤解だったとおっしゃるのですか?」
「ああ」
「あんなに熱っぽい視線だったのに?」
「熱っぽい視線とは?紳士的だっただろう?君を口説いたりもしていないはずだよ」
「それは、言えないからで私のことがお好きだったのでしょう!」
「それはない。私はリー以外好きになったことがない。自慢じゃないが、だから女性が周りにたくさんいただろう?」
全然自慢じゃないわね。しかも酷いのが名前すらも言ってあげないところだ。まるで知らないみたいに。
しかし、この言った言わないみたいなのどう収拾付けるの?
「あのねえ、私のことを好きなのは勝手だけれど私が好きだったように言うのはやめてもらえる?
何の証拠も無いでしょう?一緒に出掛けたことも無ければ2人っきりで話したこともないのに。
それも私に対しても不敬なの気付いてる?あとは近衛が聞いてくれるだろうから、たくさん聞いてもらって」
「ヴィット様!!私の方がその方より愛しております!!」
「君に名前を呼ばせることを許していない。勝手に呼ばないでくれる?
それに君が愛していても私は愛していない。私が愛しているのは婚約者のフェイリークだけだ!
連れていけ!」
と近衛に連れられ退場した令嬢は最後まで愛を叫んでいた。