58.スキンシップ
「それに関しては私が悪かったとしか言えない…。だけどこれからは、絶対に他の女性と仲良くしないからそのスキンシップをやめてもらえない?」
とおそるおそる聞いてくる。
「やはりだめですか…」
はあ。仕方ないか。
「私達獣人は独占欲が強いんだ」
話したのは今日が初めてなのに独占欲…
「だからね、そのスキンシップは私にしてくれたらいいと思うんだけど…」
またモジモジしている。
「ヴィーと話したのも今日が初めてですし、慣れるまでは難しいですわ」
「じゃあ早く慣れて!!たくさん会おう!」
と意気揚々と伝えてくる。もちろん尻尾はふりふりしている。
「ヴィーがファール国へ来てくださるのなら」
「セリアンスロゥプへは来てくれないの?」
「わたくしが来るのは簡単ですが、追いかけてきてくださるのでしょう?」
と微笑む。
「私はまだ転移ができないのだが」
「身に付けてくださいましね?」
「…。どれだけ会えないの…」
「ヴィー、もしわたくしが攫われたら?わたくしは待ってる間に何されるかわかりませんわね」
まあ余裕で撃退できるんだけどね。
ヴィーはハッとして
「すぐ覚えよう!」
とキリッとした顔で答えた。
それなりに話をしたところで皆の元へ戻る。
「あら。ヴィット、よくそれ許してもらえたわね」
それ?と首を捻っていると
「兄上…」
と第三王子殿下。
「これでも抑えてるんだよ?本当はエスコートで腰抱きたいし、肩抱きたいしふわふわの髪も撫でたい!」
「ほとんど腰抱いてるのと同じじゃない。それ」
と王妃様が指さした先は尻尾だ。
私の腰に巻き付いているのである。
「フェイリーク嬢、それ虎獣人の愛情表現の一つなんだ」
へえ。と巻き付いた尻尾を触ってみる。
ふわふわだ。
「リー。それは…」
とヴィーが照れている。
「姫。獣人の耳や尻尾は人前で撫でてはいけませんと教えましたね?」
とレインさんからの圧力。
「はい。でも巻き付いてるから」
「フェイリーク嬢、それは人前で体触ってるのと同じだよ」
と第三王子殿下。
ええ!私今までセクハラしてたの?
急いで手にしていた尻尾を離す。
「ああ…リーになら構わないのに…」
「レインさんもセオももっとはっきり教えてくれたらよかったのに…」
「待って!叔父上やそこの護衛の耳や尻尾も触ってたの?」
こくりと頷く。
「絶対やめて!もう私のだけにして!」
ガバリと抱きしめてきた。
何なの?
レインさんとセオを見ると二人とも苦笑いだ。
「姫。耳や尻尾を触るのは愛情表現ですからね、ヴィットと姫は番ですから他の異性との触れ合いはヴィットが嫌がります」
「レインさんもダメ?」
「…」
「ダメ!!絶対ダメ!」
「まあ。あのヴィットがこんなになるなんて。フェイリーク嬢、わたくしのだったら触っても良くってよ」
と王妃様が提案してくれたが、さすがに王妃様のは無理よ…。
「姫、ミーナのであれば大丈夫ですよ」
「ダメ!私のだけにして!」
「…」
抱きしめられていた手から抜け出す。
「お父様、帰りましょう」
「ああ。そうだな!心の狭い男などフィーには似合わん。帰ろう」
「では皆様、ごきげんよう」
貼り付け笑顔でカーテシーからの転移。
《《ロイ・セオ念話にて》》
『番らしいぞ』
『番存在したんだな。っていうか知らなかったとはいえ番によくあの態度できたな。それでよくもまあ手のひら返して婚約者名乗るよな』
『お嬢様はすぐ許しちまって』
『姫が許しても俺はまだまだ許さんけどな』
『王子めちゃくちゃデレデレしてるなー。一丁前に独占欲まで見せて』
『姫はドライだけどな』
『しかもうまく転がしてる』
『早くも尻に敷かれる未来が見えるな』
『まあ実際転移ができないと話にならんだろう』
『ああ。姫がもふもふしてるぞ』
『我慢してたからな』
『あらー。王子の独占欲煽っちまった』
『まあ婚約者になったからなー。仕方ないか』
『あー。それは姫が嫌がるぞ!ほらみろ』
『あれもダメこれもダメ。ついこないだヤラかした奴には言われたくないよなー』
『ああ、やっぱり』
『さ、俺らも帰るぞ』
「では我々も御前失礼致します」