54.話し合い
顔合わせの次の日、私の気持ちはもうすでに戻っていた。
思えば、護衛の皆もミーナも連れて行くんだし今までと大して変わらなくない?ちょっと環境は変わるけど、第二王子の妃なんてそんなに公務も多くないだろうし。
セリアンスロゥプにピクシーの支店を出すのもいいかもしれない。
旦那様(仮)が好きにするのだから、私も好きにさせてもらおう。
という結論に至ったのだ。結婚する気も無かったから、落ち込む必要もなかったよね?
旦那様(仮)が女性と不特定多数とベタベタするのだから、公の場以外は私も抑えなくていいよね。セオとレインさんのもふもふ癒しが失われなくて良かった!
と朝から考えているところに、お父様が
「フィーおはよう。昨日の今日で悪いが王宮へ行って昨日の話の続きをしようとのことだ」
「お父様おはようございます。わかったわ」
朝ごはんと準備を終えて登城する。
応接室へと入る。
陛下や王妃様、レインさんがいた。
「昨日の今日で悪いな」
「いいえ。大事なことですから」
「それで、あの後だがなセリアンスロゥプ側は婚約を継続したいそうだ」
「そうでしょうね」
とお父様。
なんで?第二王子殿下が嫌がっているのだから、婚約は白紙に戻したらいいんじゃないの?
「第二王子殿下は嫌がってらしたのに?」
「あー。何というか…」
陛下が口ごもる。
「姫。あの馬鹿な甥はあんな振る舞いをしてしまって一応後悔しているらしいです」
まあ。後から考えたらそうだろうね。王族にあるまじき行為だし。
頷いておく。
「それでな、もう一度話がしたいんだそうだ」
「まあ!ぬけぬけとそんなことがよく言えるわね!!」
と王妃様が怒っている。
「構いませんわ」
「フィー!!もっと怒っていいんだぞ」
「怒ったところでどうにかなります?婚約は継続なのでしょう?怒ってもどうにもなりませんわ」
黙り込んだお父様。
「すまんな。フェイリーク」
「もとはと言えばローガンのせいよね!本当にごめんなさい。私の監督不行き届きよね」
「いいえ。どうせ断れなかったのでしょう?なぜか私でないといけないようですし」
全員が黙る。
「それで話し合いはいつ致します?私はいつでも構いませんけれど」
「そうだな。すぐに会わすのは腹立たしいが、フェイリークは早く終わらせたいのだろう?」
さすが陛下。よくご存じ。私の立場がどうなるのかさっさと聞いておきたい。
「一週間後でどうだ?」
「かしこまりました」
そして一週間後、お父様と一緒に転移でセリアンスロゥプへ向かう。
レインさんは今回も付いてきてくれている。
ロイとセオも一緒だ。
今回はレインさんの案内で応接室へと通された。
そこには前回と同じメンバーが待っていた。
そして入室するなり全員で
「「「「「この度は大変申し訳ございませんでした」」」」」
と謝ってきた。
いきなりのことに目を白黒させていると
「姫、この度の馬鹿な騒動についてこの者達から言い訳を聞いてほしいそうです」
レインさんまだ怒ってる。
「わかりました」
とりあえず全員で席に着く。
「フォレスト公爵、フェイリーク嬢。まず国の長として、家長として私と妃の言い分を聞いていただけるだろうか」
「「はい」」
「この婚約は私と妃が、第二王子であるヴィットにサプライズで良かれと思って取り付けた」
「「はい」」
「それで、サプライズであるから当日まで秘密にしておきたかった」
「「…」」
「当日になってヴィットに婚約者が出来たから今から顔合わせであると伝えた」
「「…」」
私とお父様はもうチベスナ顔である。
「そうしたらな、ヴィットは逃げてしまって…」
「「そうでしょうね」」
「だから侍女に迎えに行かせた。
恥ずかしながらヴィットが何と呼ばれているかは貴殿らも存じておるだろう?だから手っ取り早いと思って侍女に頼んだ。そしたらあれだ。
あんなことになるとは思いもせなんだ。
結果としてフォレスト公爵家、フェイリーク嬢、ファール国をも軽んじるような事になってしまった。我々の軽率な考えのせいで傷つけてしまい申し訳なかった」
と国王が頭を下げた。国王たるもの簡単に頭を下げてはいけないので、本当に悪いと思っているのだろう。