44.ルイス(第三王子)視点
昨日2話投稿の予定が1話になってました。すみません!
僕はセリアンスロゥプの第三王子として生まれた。父が獅子の獣人で母が虎の獣人、僕は虎の獣人だ。
兄が2人。1番目の兄は父そっくりの獅子の獣人。優しく賢く、王に向いている。
2番目の兄は虎の獣人だが色は僕や母と違って、白い。だから髪も白いし目も水色だ。そんな2番目の兄は僕が物心ついた時から誰にでも人懐っこく接していて、大きくなると対象は女性になった。
女性とみると誰でもいいのかと思うほどに、紳士的によく本で見るような理想の王子様を演じていつでも何人もの女性と一緒にいた。
そんな兄と隣国であるファール国で行われる夜会へと交流を深めるべく向かった。
兄は早々に女性に声をかけ楽しく過ごしていたから、僕はファール国に行った叔父を探すことにした。
すると叔父は僕より少し年下ぐらいのすごく綺麗で可愛い女の子と一緒にいた。どうやら知り合いらしい。
名乗ってくれた女の子はこの国の姫だった。
姫と言っても公爵家だが、王家の血をひいていると聞いたことがある。
そんなフェイリーク嬢は、叔父とすごく仲が良く。叔父に懐いていた。叔父上が帰って来ないはずだ。
叔父上に抱き着いていたのも可愛かったし羨ましかったな。
ダンスも凄く上手だった。
そのあと馬鹿な令嬢の対処は迅速で素晴らしかった。思わずカッコイイと言ってしまうほどだった。
そして疲れてしまったフェイリーク嬢は帰っていった。
「叔父上、フェイリーク嬢いいですね」
「可愛いでしょう」
「僕婚約者になってもらおうかな」
「やめておきなさい」
と叔父と話をしていたところに兄がやってきた。
「叔父上久しぶりですね」
「ヴィットは相変わらずだそうだね」
「ええ。変わらず元気ですよ。ところでここ甘い匂いがしません?」
「「いいえ」」
「おかしいな。とくに叔父上の方から匂いますね」
「そうかな?」
とクンクンしている叔父上。僕たち獣人の鼻でわからないということは…
まさか。
いや、まさかな。
そして何回かファール国の夜会に参加していたら
兄上がやっぱりたまにすごく甘くていい香りがすると言い出した。
それを聞いた両親が番だ!!と言い出し、叔父上に言って令嬢を探し始めた。そして行き当たったのがフェイリーク嬢だった。
そして両親はファール国を脅すようにフェイリーク嬢と兄上の婚約を取り付けた。兄上には内緒で。
そして顔合わせの日になって、両親は兄上に伝えた。婚約者ができたぞ!と。
それを聞いた兄上は逃げた。
何も聞いていない兄上は、番がいるのに勝手なことをした両親に怒って逃げた。
侍女に捕まえて連れてこさせたのも悪かった。
兄上は大きな声で文句を言いながら入ってきてしまった。フェイリーク嬢がいるところへ(知らない人から見れば)侍女たちを侍らせた状態で。
兄上は番であるフェイリーク嬢の姿を見て固まっていたし、その固まってる間にファール国の全員から殺気が出ている。フォレスト公爵など血管がキレそうである。
最悪。
それを見たフェイリーク嬢の声色は低くなり、ぽつりと呟いた。
「私今まで何のために我慢してきたのかしら?それなら私も許されるでしょう?」
小さな声だったが我々獣人には聞こえた。我慢とは…?
「陛下、王妃殿下、恐れながら第二王子殿下はわたくしとの婚約がご不満なようです。
わたくし側妃ですか?それともお飾りの正妃でしょうか?どちらでも仕事は致します。つきましてはまたお知らせくだされば王子妃教育も受けますのでまた日時をお伝えくださればと思います。今日のところはわたくし失礼致しますわ。ごきげんよう」
と言って護衛に抱っこされて消えた。
抱っこ…しかも護衛からも殺気が…しかも消えた。
最悪の展開だ。フェイリーク嬢は勘違いしてしまった。でもそれも仕方がない。
まだ固まっている兄上に
「おーい兄上!!」
と声をかけていると
「セリアンスロゥプの王よ。フェイリークでないといけないのではなかったか?側妃やお飾りの正妃にさせるためにこの国へよこすなら私はこの国と縁を切っても構わないし、この間の件なら慰謝料はきっちり出す。フェイリークのことは諦めてくれないだろうか」
とファール国王。番だと知らない国王は国との縁を切りたいとまで言っている。
おろおろしだした両親。そこへ
「ヴィットーーーーー!!!!!!!」
と叔父上の怒声が響くのだった。