40.打診
あれから、ライアー伯爵令嬢は隣国に不敬を働いたということで身分剝奪。平民となったその後はどうなったのかわからないが、まあ貴族令嬢に庶民の暮らしはできないだろう。
もちろんローガン殿下とは令嬢の有責で婚約破棄。ライアー伯爵家は男爵へと降爵。
やらかさないといいな がフラグになったか。
私への態度見ててもマナーが出来ていなかったから当然と言えば当然よね。
私は当たり前のことしかしていないのだけど、王家の方々からは感謝された。すぐに対処したから被害が最小限で済んだということで。
3か月ほど経ったが、隣国の方は怒っていないそうで夜会でたまに獣人の方を見るようになっていた。
王子殿下が優しかったのも助かった一つだけれど、レインさんのおかげでもあるだろう。
レインさんが優しくてよかった!
そうそう。
あの一件で私が喋れることは周知されて、私を悪く言う人間はほぼいなくなった。
言い返されるし、不敬だしね。
「フィー。話がある」
お父様から呼ばれた。
「どうしたの?険しい顔してる」
「フィー。すまない!!!婚約の打診だ」
「お父様がこの話を持ってきたということは断れないのね?」
「ああ。すまない」
もうお父様半泣きである。
「構いません。どこの方です?」
「隣国セリアンスロゥプの王家だ」
「セリアンスロゥプの…ということは第三王子殿下?」
この間お話ししたしね。
「いや…それが…」
「違うの。ではどなたです?」
「第二王子殿下だ。すまない」
「ああ。お花たちを愛でることが好きな王子殿下ですか」
「すまない!!!」
ついに泣き出してしまった。
「仕方ないではありませんか。どうして会ったことも無いのに私に打診が来たのでしょう」
「わからんのだ。これから王宮へ行くことになっている」
「わかりました。準備してくるわ」
今日はお供にロイを連れて王宮へ。
陛下の執務室に呼ばれた。執務室ということは、内々のお話があるのね。
「フェイリークよく来たね」
「ごきげんよう陛下」
「この間は助かった。感謝する」
「いいえ。臣下として当たり前のことをしたまでですわ」
「それでな、此度の婚約の打診についてなんだが」
「はい」
「一度断ったんだ」
へえ。断ってくれる気だったんだ!
「うちの国はそこまでセリアンスロゥプと政略結婚を誰かにさせねばならんほど困っているわけでは無いしな。だが、向こうがどうしてもと言ってな。ほかの令嬢ではダメかとも聞いたがフェイリークでないといけないそうでな、断っていたらいよいよこの間のことを持ち出して来てな」
断れなかったのか。
「陛下。大丈夫ですわ。お受けいたします」
「すまない。フェイリークに負担をかけてしまって。ローガンの尻ぬぐいまでさせてしまう。フェイリークには幸せな結婚をしてほしかった」
お父様みたいなこと言ってるわ。
「陛下。そんなに気遣っていただかなくて大丈夫ですわ。その代わり、条件を付けてくださいませ」
「ああ。何でも言ってくれ」
「護衛と侍女を平民でも連れて行きたいこと。転移を好きにいつでもどこでも使えるようにしてほしいこと。この二つですわ」
「任せておけ!それぐらいは通して見せよう」
「ありがとう存じます」
「フィー、いつでもどこでも転移はなぜだ?」
「だって嫌なことがあったら帰ってきたいじゃない?」
「フィー」
とお父様にハグされる。
「いつでも帰っておいで。帰ってきたらずっといてもいいんだよ」
「ふふ。ありがとうお父様。これでお父様も安心でしょう?」
「ああ」
「でも本当にどうして私なんでしょう?レインさんに聞いたらわかりますかしら?」
「聞いてみよう。レイン殿を呼んでくれ」