32.大人になりたくない
本日2話目です。
この国では15歳でデビュタント。16歳で成人として認められ結婚もできるようになる。
正直今まで忘れたふりをしていた。自分がもうすぐ成人で大人になっているということを。
サイラスやライオネル、ダンは13歳ぐらいにはもう子ども扱いされなくなった。
ロイとセオだけは今でも抱っこしてくれるし、手も繋いでくれる。
私の精神的支柱で、何かあった時はいつも抱っこしてくれていたからだ。
でも、レインさんに言われてミーナにもそろそろ抱っこは…と言われてしまった。
「はあ…」
「どうしたんだいフィー」
お父様だ。ヴェル兄様も結婚して兄が家からいなくなって、今はお父様と2人だ。
「この間、ミーナに言われたの。もうそろそろ大人なんだから抱っこはやめましょうねって。レインさんにも公の場では獣人の耳や尻尾は触ってはいけないって言われてしまって…大人になるって嫌だなあって」
「それはそうだな。まあミーナは女性だからいいとしてもロイやセオとは父から見ていてもちょっと仲が良すぎるように見える。子供の時は微笑ましかったが、フィーはもう大人だ」
「寂しい」
しょんぼりした私に
「フィーには婚約者は作らなかったから、無理に引き離さなくてもいいと思って今まできてしまった。まあまだ嫁ぐ予定もないし、ロイやセオがいいなら少しずつ減らしていくのでいいんじゃないか?」
お父様も私に甘いから、徐々に減らせと言っている。
この年で男性に抱っこされてるなんてマナー違反もいいところ、はしたないし淑女として失格。
「大人になりたくない。結婚もしたくないけどしなきゃ欠陥品みたいに言われるんでしょう?まあもう私は言われ続けているけど」
「フィーは欠陥品なんかじゃない!!自慢の娘だ」
「ありがとう。結婚するにしてもせめて思い合える人がいいから人選はお父様に任せます」
「私はできればフィーには好きな人と結婚して欲しいと思っている。フィーの言い方だと好きな人じゃなくていいって言ってるように聞こえるぞ」
「私は学園にも行ってないし、知り合いが少ないから好きな人もいないしこれから誰かを好きになるかわからないから生理的に受け付けない人以外なら大丈夫。お父様を信じてるわ」
「そうか。でもデビュタントして社交界へ出て好きな人ができたら言いなさい」
「わかりました」
「うちは公爵家だ。無理に結婚する必要もないしフィーが好きにするといい。フィーがうちにいてくれたら私も寂しくないしな。うるさく言うコバエどもは私が叩き潰すから安心しなさい」
とお父様は言っているが、そんなわけにはいかないだろう。
嫁に行かない妹がずっといてもお兄様の迷惑になるだけだし、今でも私は欠陥品だとフォレスト公爵家の足を引っ張っているのにこれ以上は迷惑はかけられない。
ロイに付いてきてもらって国を出てもいいかもしれない。
大人になるって本当に嫌だ。考えることも多くなるし規制も増える。