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30.ミーナとセオドア視点

 お嬢様は15歳になった。もうすぐデビュタントだ。

15歳になったお嬢様は、とてもとーっても美しく成長した。

平均より少し小さいが、体つきは華奢で着やせするけど脱げば出るところは出ているという何ともけしからんスタイル。女性からしたら羨ましいに尽きる。


拾ってもらったときは私も子供だったけど、子供とは思えない気遣いが出来て可愛い妖精のような女の子だった。

可愛い可愛いお嬢様の侍女をするのはすごく幸せで、私自身も立派な侍女になれるようによく頑張ったと思う。今ではお嬢様の身の回りのお世話を全てできるようになった。

お嬢様をより可愛くより美しく見せられるのは私だけだと自負している!


13歳で話せるようになったお嬢様は喋ってもやはり理知的で、より魅力的になった。

旦那様は余計な虫が湧くと頭を抱えている。

いまだに誘拐を企てようとする連中もいるほどだ。どれもお嬢様や護衛達に返り討ちにされているが。


そんな強く美しく優しく、賢く商才があり魔法の才もある非の打ちどころのないお嬢さまだけど

1つ間違っていることがある。いや。間違っているというかしてはいけないというか、何というか。


私たち獣人が大好きなお嬢様は、私はもちろんセオドアさんやレイン様も大好きである。

そう。耳や尻尾。もふもふが大好きだ。

お嬢様は疲れた時や辛い時、甘えたいときや癒されたい時は基本的に私の傍にいるかセオドアさんに抱っこされている。

15歳になった今もだ。

私の耳や尻尾を触るのはまだいい。だけどセオドアさんに抱っこされて耳や尻尾を触るのはどう考えてもアウトだ。


「セオドアさん。いつまでお嬢様を抱っこされるので?」


「あー。そろそろ卒業しないといけないよな。だがなぁ…」


「お嬢様が可愛くて仕方がないのはわかります。小さいですしね。抱っこもそうですけど、耳や尻尾の接触のお話はもうしておかないといけないですよね?」


私たち獣人の耳や尻尾を触る異性は恋人同士や夫婦といったパートナーにしか許されていない。

同性の場合相手が許していれば問題は無いが、異性となればそれは問題しかない。


「だってなあ、あの姫に言えるか?もふもふするなって。子供のときからずっと触ってるんだぞ?悲しい時も嬉しい時も」


子供のうちは許される。

だけど、大人になると匂いが付くからダメになる。


「俺は結婚する気もないしな。いいだろう?このままでも。レイン様だって伝えずそのまま今まできてるじゃないか」


「だけど、セオドアさんだって番が現れたらどうするんですか?お嬢様は番も知らないのに急に突き放すんですか?」


「番が現れるかもわからないのに…ミーナが伝えてくれよ。俺毎回あんなに嬉しそうに抱っこされて耳触ってる姫に言えねえよ。触るななんて」


「でも私よりセオドアさんの方がお嬢様といた時間が長いじゃないですか」


「俺は姫に嫌われたくない!!この関係が変わるのが嫌だ!」


大の男が駄々をこねている。

でも私も一緒だ。この獣人のルールをお嬢様に伝えて〝触るな!″って言ってるように思われないか、今の関係が壊れるんじゃないか

何より悲しいお顔をされるのが辛いのだ。


そして私とセオドアさんが出した結論は、レイン様に伝えていただくということになった。


どうかお嬢様に上手に伝えてください。

あと侍女としてもそろそろ抱っこ自体おやめいただきたいのですが。

まあそれは、私が伝えましょう。


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