25.大人に近づくということ
10歳になった私に、護衛の皆が徐々に抱っこもエスコート抜きの手繋ぎもしてくれなくなってきている。
寂しい。
だからロイとセオにはまだまだくっついている予定だ。
人前ではダメかもしれないけど、誰も見てないとこだと大丈夫だよね?
わかってる。大人になるにつれてそれは許されない。
特に貴族社会では淑女が男に引っ付いているなんて、下品ではしたない行為である。
だけど、まだまだ子供じゃない?
貴族である限り、結婚も絶対だ。政略結婚とかさせられたりするのかな?
お父様に限って強制とかはしなさそうだけど、貴族の義務である以上覚悟も必要かな。
そろそろ王子殿下たちとの交流もやめた方がいいな。
リアム殿下は17歳だし、ローガン殿下は15歳。
お二人とももう成人だ。私がうろうろしてやっかまれても困る。
お父様に相談に行こう。
ロイに通訳を頼む。
『お父様、そろそろ王子殿下方と交流するのは卒業しようと思います』
「だが、王宮には通わないといけないだろう?」
『レインさんのところへ直接転移させてほしいのです』
そう。わたしは転移を会得したのだ!
「王宮で転移は禁止されているの知っているだろう?」
『でもこのまま王宮へ通ってたらご令嬢たちにやっかまれてしまいます』
「そうだな…。もうフィーも10歳だもんな。王子殿下方も婚約者候補はいるがまだ婚約者が決まっていないからな。陛下に相談しよう」
ということで、お父様が陛下と相談した結果
こっそり転移を使うことを許された。特例である。
私にかけられた魔術については相変わらずレインさんに解術をしてもらっているが、大きくなるとともに私には疑問に思えるようになった。
これだけ、時間がかかって中々解術が進まないなんて〝呪術″なんじゃないのかと。
『レインさん、私にかかっている魔術は呪術ではないですか?』
「呪術…
なぜ思いつかなかったのか!姫、そうかもしれません。調べてみます」
呪術だとしたら私はそんなに疎まれていたのか。
産まなければよかったのに。
女の子ができる可能性を全く考えていなかったのだろうか?
と考え込んでいると
「大丈夫か?」
とロイが膝に抱き上げながら話しかけてきた。
『大丈夫。今更気にしてないよ。そんなに疎まれてたんだな~って思ってただけ。産まなければよかったのにね』
「そんなこと言うな。俺はお嬢様が生まれてきてよかったと思ってるぞ。それに旦那様や坊ちゃん達も」
『わかってるよ。だから気にしてない。産まなければよかったとは思うけど、生まれてこなければよかったとは思ってないから。毎日楽しいよ』
本当に気にしていないのだ。周りが気にしているだけで。
喋れないだけで特に不便は無いし、運動神経も結構いいし、可愛く生まれてこられて
ポンコツだけど親ばかで優しいお父様やシスコンだけど優しくてカッコイイお兄様たち、頼りになるお祖父様とお祖母様、毎日守ってくれている護衛の皆や、私のために侍女になってくれたミーナ。
母だった人以外には私は恵まれているとそう思う。
ポンコツ神様曰く、この魔術も解けるだろうということらしいし
私幸せだよね!
久しぶりに神様にでも会いに行こうかな。