12.執事(エバンス視点)
私は公爵家で執事をしている。旦那様は代々宰相を務める由緒正しい家門である。
今代の旦那様も例にもれず大変優秀で、陛下からの信頼も厚く王宮で泊まり込みが多く仕事に打ち込んでいらっしゃいます。
そんな旦那様と大変お美しい奥様は政略結婚ながら仲睦まじく、次代もお生まれになり順風満帆だと誰もが疑いませんでした。
ウィリアム様もレイヴェル様も大変優秀で王子殿下のご学友にもなり、皆が皆誇らしい気持ちで過ごしておりました。
4年空いてご懐妊された奥様のご出産を今か今かとお待ちして、お生まれになったのはお嬢様でございました。
お生まれになったお嬢様を抱くこともなく奥様はお休みになられました。
お坊ちゃま方のときとの違いに驚きましたが、きっとお疲れなのだろうとその時は思ったのでした。
しかし、名を付けることもなく
抱くこともなく乳母に預けられました。
3日経ち旦那様が帰ってきてやっと、お名前が決まりました。
フェイリークお嬢様。妖精ですね。
旦那様はお喜びのようで安心いたしました。
しかし、奥様はお嬢様の名も呼ばず寄り付かず一年を過ごしました。
喋り始める頃どこで調べたのか奥様が指定の医師を呼べというので手配致しました。
その医師とお嬢様の部屋へ入りしばらく、医師が帰ると満足そうな奥様。
何だったのだろうと思っていれば、何とお嬢様はお話にならなくなりました。否お声が出せないようでございました。
旦那様へ報告しようと思いましたが
奥様に止められ、家族の声を奪うと脅され報告ができませんでした。
料理長も脅した奥様は、お嬢様のお食事を減らしていきました。
お嬢様の部屋では何やら怒声のようなものが聞こえ、鈍い音も聞こえます。
毎日毎日行われているだろうその行為に恐怖し、より何も言えなくなりました。
小さい小さいお嬢様は毎日毎日行儀作法を学んでいるようでした。奥様がいないときもお嬢様は一生懸命練習しておられました。
声が出せないお嬢様は誰にも助けを求められず、感情を無くしていかれました。笑うのも貼り付けたような貴族の笑みで、心から笑うことが無くなりました。
それから泣くこともなく、行儀作法の練習をしていないときはぼんやりしているか眠っているかのどちらかになりました。
どんどん衰弱していくお嬢様。旦那様!早く気付いてください。お嬢様が亡くなってしまいます。
どうして私は最初に報告しなかったのか!毎日見ているだけでも辛いのに、お嬢様は…
そうして、大旦那様と大奥様がお孫様達に会いに来てくださいました。
そして、やっとお嬢様は解放されたのでした。
私もやっと解放される。
申し訳ございませんお嬢様。旦那様。
旦那様が屋敷に帰り使用人を集めたとき、自分の罪をはっきりと旦那様にお伝えし処罰を待ちました。
旦那様は、奥様が全面的に悪いと言われ私と料理長はお咎め無しとなったのでした。
しかし、お嬢様に顔向けできません。
そう思っていると
お嬢様は屋敷に帰ってこないとのことでした。
ああ。お嬢様申し訳ございません。
申し訳ございません。
処分が甘いですよね