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救星の魔法考古学者  作者: 村崎リラ
第一章 暗闇の魔物
24/125

24 休息日

 ブラオルイーネ地下4階にある居住区の一室。

 ベッドと小さなテーブル、クローゼットしかない質素な部屋だ。

 その部屋で目を覚ましたカンナは、傍らに置いてある時計で今が朝である事を確認する。


 地下に広がるブラオルイーネに長い事籠もっていると、朝と夜の感覚が曖昧になる。

 昼の短いフェーブスブルクで暮らしていてもなお、光の入らない環境とは慣れないものであった。


 今日でブラオルイーネに来てから七日。

 そして、クロノス封印まであとどれだけの時間が残されているのだろうか。

 寝起きの回らない頭で日数を計算しているが、そこでふと重要な事を思い出す。


──あと50年、か。


 クロノスの事で気をとられていたが、この星(エカルラート)には寿命がある。


 ”アストラの少女”が預言した星の滅亡まで、あと50年。


 自分が50年後に生きているのか、死んでいるのかは分からない。

 しかし、急速な衰退を目の当たりにした事のあるカンナにとって、徐々に迫りくるそれは言葉にできない恐ろしさがあった。


──いや、今は前向きにならないと。


 寝起きだからだろうか、暗い方向へ思考が動いてしまうので、それらを振り切る為に思い切り起き上がる。

 そしていつも着ている長いコートを羽織り、部屋を出た。




「やけに人が多いな」


 カンナら三人は朝食をとる為に食堂へと向かう道中、普段よりもやけに人が多い事に気づく。


 食堂の中も、普段は見かけない研究者達でごった返していた。

 その中でも一番人だかりになっている掲示板前で、すらっと背の高いよく知った人物を見つける。


「ウィルフレドさん!」


 掲示物を見ていたウィルフレドも声の主が分かったのだろう、彼は振り返る。


「おはようございます。今日、何かあるんですか?」

「カンナさん、おはようございます。今日は、休息日なんです」

「休息日?」


 そう言われて辺りを見渡すと、確かにアストルム教団の制服ではなく、私服の者が多かった。

 それに、いつもより皆の表情が明るい。


「ブラオルイーネは地下にあるという性質上、籠もりきりでは心身に良くないから、と。月に一度、意識して外へ出かける日を支部長の提案で作ったのです」

「……休んでいる暇はないのですが」


 休息日がどのようなものかは理解したが、カンナは自分達には猶予がないと言いたいのだろう。

 しかしウィルフレドは首を振る。


「根を詰めるより、一旦休んだ方がかえって効率は良くなるものです。頭の中も整理できますし。良かったら掲示板を見てください」


 そう言われると、何も反論はできない。

 カンナはウィルフレドに言われるがままに人だかりの先を見る。


 そこには、個性豊かなさまざまな掲示物が貼り出されていた。


 掲示物は内容こそばらばらだが、そのすべてに”同好会”という単語が入っている。


「同好会?」

「ええ。休息日に合わせて活動しようと発足されているのです。教団の方なら誰でも参加自由なので、良かったら参加してみてください」


 前方にいた人が捌けていくので、徐々に掲示物に近づいて行き、漸く目の前で読む事ができるようになる。


 「へぇー」と間延びした声でそれらを読んでいるイリスに、ウィルフレドはとある事を教える。


「一番人気があるのは、支部長主催の『星を見る会』ですよ」

「それに参加します!」


 間髪入れずに返事をするイリスに、答えが予想通りだったのかウィルフレドはにっこりと微笑んで掲示板の下にある机から貼ってある物と同じ紙を手渡す。


「昼に出発、外でランチを食べて、夕方から夜に星を見る──。し、私服で参加! 私部屋に戻ります!」


 慌ただしく部屋に戻っていくイリスを見届けて、カンナやエンジュも一つ一つ内容を読んでいく。

 それを横目にウィルフレドも別の紙をとってカンナに見せる。


「因みに、自分が参加しているのは『森の中で昼寝をする会』です」

「……名前通りの活動なんですか?」

「ええ。仕事、研究、すべてのしがらみを忘れてただ森の中で夕方まで眠るだけの活動です。この日の為に頑張っていると言っても過言ではなくて……」


 その言葉に、彼が普段どれだけ苦労し疲れているのかを察し、カンナは苦笑する。

 そしてできれば自分も参加したいところだ、と思ったところでエンジュがこちらを見ている事に気づく。


「カンナ。わたしは──」


 カンナと同じところに参加する。


 彼女がそう言いたいのはすぐに分かった。だから、偶にはと先手を打つ。


「エンジュ。お前が参加したいものを選ぶといい」

「いいの?」

「俺は、なんでもいいから。ほら、好きな同好会を選んでくれ」


 一瞬躊躇うようだったが、気になっていたものがあったのだろう。


 エンジュは可愛らしい絵が添えられている紙を取って、カンナに見せた。


「じゃあ、これがいい」

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