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救星の魔法考古学者  作者: 村崎リラ
第一章 暗闇の魔物
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2 遺跡と魔法結界

 最近漸く発掘作業が始まったばかりの、第八遺跡。

 次々と遺物が発見され、発掘や運び出しの為の人員で賑わっている。


 転送門と呼ばれる、瞬時に空間を移動する魔法によって第八遺跡に到着したカンナとイリス。

 行き交う人々をかき分けて、発掘隊に指示を出している男に声をかける。


「魔法考古学室です。協力要請を受けて来ました」


 話しかけられた男は「ああ!」と声を上げ、小走りで駆け寄ってくる。


「お待ちしておりました。第八遺跡発掘隊長、魔法史学者のハダルと申します」


 人の良さそうな中年男性は、ハダルと名乗った。

 ハダルは土まみれになった手袋を取り、手を差し出す。


「カンナ・ヴェレンツです。こっちは妹の……」

「イリスです。よろしくお願いしまーす!」


 二人もそれに応えて、手を握る。


 満足気に頷いたハダルは、道の先にある古びた扉を指し示す。


「それでは、早速中へ案内します」


 遺跡へ出入りする隊員達の間を縫って、彼らは遺跡の奥深くへと潜っていく。


 発見されて間もなく、未だ発掘が続いている遺跡だ。

 中は当然埃っぽく、少し歩くだけでも砂埃が立ち上がる。


 服の袖で口元を覆いながら、カンナはハダルに手渡された遺跡の資料に目を通す。


 発掘隊の資料には、この遺跡はとても深いところにあると書かれていた。

 最奥以外は結界もなく、遺物も比較的良好な状態で発掘されている。

 中には貴重品とされる”魔法書”も見つかっており、遺物の調査にも期待が高まっていたところだ。


 だが、問題はその最奥にあるらしい。


「遺跡の最奥と思わしき場所に魔法結界があって近寄ることかできず、それで魔法考古学者の派遣を要請した次第です。お手を煩わせてしまって申し訳ない」


 そう言って、ハダルは申し訳無さそうに眉を下げる。


「俺達は遺跡発掘に携わるのが本分ですから」

「私もカンナもちょうど手が空いていたところなので、気にしないでくださいね」


 その時。

 一瞬、遺跡全体が揺らいだような感覚に襲われる。


 それはカンナだけではなく、イリスやハダルも感じたようだ。二人とも、息を飲んで辺りを警戒している。


 いつの間にか、辺りは魔法の灯り以外は真っ暗で、気温も下がっていた。

 代わりに道の先に、ぼんやりと発光する何かが見える。


 発光するものの正体は魔法によって作られた結界だ。


「……魔法結界か」


 魔法結界とは、古代人によって作り出された壁のようなもの。

 対応した言葉で解除する事ができるが、問題はその言葉にある。


「これです、件の魔法結界。発掘隊では読める人間が居らず困っていたのです」

「古代言語は難しいですからね」


 古代言語。それは、古代人によって作り出された複雑で難解な言語。

 現代人では習得するには長い月日が必要である。

 魔法考古学者は古代言語を修める事が絶対条件でもあり、だからこそカンナとイリスはこの第八遺跡に派遣されてきたのだ。


 カンナは結界に手を触れる。


 触れた場所は揺らぎ、波紋となる。その先へは手は伸ばせない。

 それと同時に、触れた場所に古代言語で記された文字が浮かび上がる。


「イリス、読めるか?」

「読める……けど、言葉の意味が分からない」

「魔法結界は固有名詞が多いからな。意味は後で調べよう」


 もう一度結界をひと撫でする。


 結界は先程よりも強く光り、解除しない限りは絶対にこの先へは進めないという事を示しているかのようだった。


「ひとまず、解除しますので離れてください」

「はい。お願いします」


 ハダルが下がり、イリスも一歩下がったのを見届けてカンナはその単語を読み上げる。


「”グランオルビット”!」


 魔法結界は、正しく声に出して読み上げる事で解除される。


 彼らにとって意味の分からない単語だが、確かにそれは正しかったようだ。

 光っていた文字は消え、その先へ続く道が拓けた。


 それとほぼ同時に、勢いよく何かがカンナに突進し、ぶつかってカンナもろとも吹き飛んだ。


「ぐっ」


 壁にぶつかったカンナと、驚いて何も言えずにいるハダル、慌ててカンナに駆け寄るイリス。


 三人が見たものとは、カンナと衝突して倒れ込む小さな女の子だった。

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