仮に今が変わるなら僕はきっと願うであろう。
私の歳は今年で38歳である。
結婚もしておらず、転職に次ぐ転職で仕事も長続きしない。
基本的に私は人と上手く付き合っていけないのである。
それは他人だけでなく身内でも同じである。
こんな私でも昔は夢があった。
その夢に向かい頑張っていた時期もあったが、途中で挫折してしまい、夢半ばで目的も無くしたダメな人間になってしまったのだ。
まぁ、そんなこんなで実家に帰っても誰も喜んではくれない。
むしろ昔から私を毛嫌いするものばかりで、私の居場所なんてどこにも無かった。
家族からも死神と言われるくらいに私は望まれてはなかった。
そんな環境だったため、家出も沢山したし、人生終了も何度も考えて実行した事さえあった。
それに私は何度か交通事故にあった経験があるけど、一度たりとも怪我を負ったことはない。
誰にも望まれないくせに、私はこうして生きている。
これはどうしてなのか。
私は若くして人生を終えたかった。
生まれてきて後悔しかない人生にもう疲れ果てたのかもしれない。
どうしてかな?
私みたいな人は沢山いると思うけど、私はその人達がどうして生きていられるのかが不思議でならない。
今の私は終わりを待っているだけの人生だ。
出来るなら早く終わらせたい。どうせ地獄行きだけどね。
この世界に本当に異世界やパラレルワールドがあるなら行ってみたい。
神様がいるなら私を裁いて欲しい。
別に救ってくれなくていい。むしろ救う価値なんて私にはないのだから。
よく誰々がお亡くなりになったとニュースを見るたび、どうしてあの人が亡くなるのに、私は生きているのか。
あの人ではなく、私が変わってあげたいくらいだといつも思う。
『ねぇ、神様。私はいつまでこの世界にいなくてはいけないのでしょうか?』
私は何度も試してみた行為を再度行うことにした。
それは歩道橋からの落下と車への追突である。
私は大型トラックが来るのを確認してそれにあたるようにタイミングを合わせて一気に飛び降りた。
その瞬間、物凄い音と共に私の身体は空高く舞い上がると次の瞬間地面へ叩きつけられた。
私の身体はゴロゴロと何メートルか転がりそのまま放置された。
時間も夜中だったし、飛ばされた場所は草むらで見つけるのも大変だったこともあり、トラックの運転手はその場から走り去っていった。
『ようやくだ。これで良い。私はこれで・・・。』
私の意識が無くなってどれだけの時間が過ぎたのであろうか。
(時間?いやまて!)
私は自分にまだ意識がある事に気がついた。
(また私は失敗したのか。)
そして私は諦めて起きあがろうと身体を起こそうとした。
だが、普段なら痛みがあると思っていたが身体はすんなりと起き上がることが出来た。
1つの違和感だけを残して。
(何だ?やけに周りが大きく見えるな。)
私の周りにある物全てが大きくて、それに何だか歩くのも困難だ。
別に怪我をしているわけでは無い。
周りを見渡して観察してみたが、どうやら私自身が小さくなっているようだ。
(確かに私の手も小さく見える。)
私は思う様に動かない身体を何とか動かしていろいろと調べる事にした。
(う、うーーん。うーーん、届かないし、動けない。)
どうやら身体に異変があるみたいだ。
すると1人の女性が私の前に顔を出して来た。
『あらあら、起きてしまたまたのですね。ほら抱っこしてあますからもう一度おねんねしましょうね。』
女性が私を抱き上げると目の前には鏡があり、ようやく私も今の状況を理解した。
(自分、赤ん坊になっとるやないかい。)
私は何が何やらわけがわからない状況に戸惑いながら暮らしている。
だが身体が自由に動く様になってすぐ言葉も話せる様になっていた。
そして2歳になる頃にはこの世界のこともわかるようになっていた。
どうやらここは日本ではないようだ。
まぁそれは父や母、そしてお世話係の人たちを見れば分かる。
(いわゆる異世界転生、とや言うやつだな。)
私自身興味はあったのでこれはチャンスだと思った。
そしてついに前世では永遠に眠ることが出来たのだと安堵していた。
最後にトラックに撥ねられてそのまま人生が終わった。
思えば何も無かった人生だったなとつくづく思う。
私は今2歳の誕生日を迎え、両親に連れられとある屋敷に来ていた。
『さあ、今日は大事な1日になるぞ。』
『ルークちゃん、今日は貴方が主役よ、ちゃんとご挨拶して立派なお婿さんをゲットするのよ。』
この両親は2歳の子供に何を言っているのだ。
それにお婿さんとは・・・私は性別が男から女に変わっていたのだ。
楽しく過ごせるなら、私は性別など気にしないのだ。
そう思っていた時もあった。
私はその後もすくすくと育ち、今年で16歳になる。
幼少期は武芸に勉学、そしてこの世界には魔法みたいな物がある。
それを1から叩き込まれた私は両親の期待以上に成長したらしく、上流貴族が通う学校に行くことになった。
私の両親もそれなりに地位のある貴族ではあるが、父親は欲が無く、今以上の出世を望まなかったのだ。
だが一人娘である私には思う良い暮らしをさせたいのか、頑張ってくれたみたいである。