時には忘れることも大切
ここらで蘭城編は終了となります、重ねて言いますが蘭城はメインヒロインではありません。
それと、なんか3話で現実恋愛の日間ランキングで46位に入ってて驚きました。
「・・・気は済んだか?」
地団駄を踏む、蘭城に向かってそう告げる。
「・・・どういうことよ!」
またしても、俺の言葉が理解できないのか蘭城は声を荒立てて質問し返してくる。
「考えることが苦しいなら忘れちまえってな」
「それって・・・?」
蘭城はその一言のだけで俺が言いたいことを大方理解できたようだ。
「俺だって悩みがないわけじゃない、そんなときは忘れちまうに限る」
「で、でも・・・」
ここまで言っても蘭城は忘れることを良しとは思わないようだ。
(やっぱり、そういうことか)
俺はここでの会話で『蘭城 遥』と言う人間の大まかな本質を捉えられていた。
「お前、優しすぎるんだよ」
「優しすぎる?」
落ち着いたのか蘭城は冷静にそう聞き返してきた。
「知ってるか?悩み事を抱えている大半の人間はその悩み事を解決できない場合忘れて、なかったことにするんだとよ」
このネタは以前、家でテレビを見ていた際に知った話だ。
「人間、どうしても辛いことや苦しいことがあったら忘れようとするだろ?それと同じだよ」
「じゃ、じゃあ私はどうすればよかったの?」
俺のその言葉を聞いても蘭城はやはり納得できないようだ。
「だから、それが駄目だっつてんの」
そんな蘭城の言葉も俺はバッサリ切り捨てる。
「お前から聞いたさっきの件はどう考えても悪いのはお前じゃなくてそのやっかみをした連中だろ?お前はただ告白されて、好きじゃないから断った。それだけだ」
「で、だ。その何が悪いんだ?お前はお前の気持ちに従ってそうしたんだろ、ならお前が悪い要素なんて一ミリたりともないだろ」
そこまで言い切ると、蘭城はなぜか俯いてしまった。
「わ、私は・・・」
蘭城は夢現のようにボソボソと何か呟いているが声が小さすぎてうまく聞き取れない。
「あ~、もう、うだうだうるさい!」
ついに堪忍袋の尾が切れて、つい声を荒げてしまう。突然のことに蘭城も少しだけ体を震わせた。
「いいか!嫌なことは忘れれば良いし、もし忘れられないなら家族にでも相談しろ!絶対、お前の家族も俺と同じことを言うと思うけどな!」
「・・・ぷっ、あははっ!!」
その言葉を聞いた蘭城は呆然としたのち、先ほどの暗い表情から一変。大声で笑い始めた。
「なんだよ」
俺は突然笑われたので少しだけムッとなってしまい、棘のある声を出してしまう。
「いやだって、何か話がおかしくなてるなぁって。ぶふっ」
蘭城は説明しながらも笑うことをやめない。
「ったく、調子が狂うな」
俺はなんだか恥ずかしくなり後頭部を掻きながら軽口をたたく。
話も落ち着いた以上、これ以上マスターに迷惑をかけるわけにはいかないのでこの後すぐに店を出た。
「今日は付き合ってくれてありがとね」
カフェから出るなり蘭城は俺に向かってそう言ってきた。
「・・・別に」
先程笑われたことを少し根に持っているため無愛想な返事になってしまう。
「・・・ねぇ、これからもマサ君って呼んでもいいかな?」
すると、蘭城はたどたどしくそう聞いてきた。要は、これからも友達でいていいかと言うことを聞いているのだろう。
「好きにしろ」
その質問に「もちろん!」とカッコよく言うのは恥ずかしかったので適当に返す。
「うん、これからもよろしくねマサ君!」
「あぁ、よろしく」
俺と蘭城は改めて友達となった記念に握手をした。
(・・・これはただの自己満足だ)
(この世に裏切らない人間なんていない)
(だから、これは俺のエゴだ)
(願わくば・・・)
・・・信じられる人間がいることを