冷めた真意
※蘭城はメインヒロインではありません
蘭城についていくこと5分、俺たちは学校近くのカフェに来ていた。もちろん、自転車は押してきた。
「ここ、私のお気に入りなんだ~」
「いっらしゃい」
いざ、そのカフェに入ると男性の渋い声が俺たちにかかった。
「マスター、久しぶり~」
「おや、遥ちゃん。久しぶりだね」
そんな会話の内容から察するに二人は旧知の仲なのだろう。
俺が席に着いたのを確認して蘭城はようやく話を始めた。
「それで、カラオケに行かなかった理由だっけ?」
「あぁ、確か『あんな下心丸出しの奴らと仲良くしたいわけがない』だったか?」
俺と蘭城は再度その話をし始めた。
「まぁ、それもあるけど本音は違う」
「・・・」
「マサ君と同じだよ、私は誰かを信じるということができない」
蘭城のその言葉にどこか納得してしまう自分がいた。
「・・・どうして俺がお前と一緒だと思うんだ?」
「う~ん、それを聞かれたらなんとなくっていうしかないんだけど、しいて言うなら『眼』かな?」
「眼?」
その言葉を俺は理解できず、首を傾げる。
「うん、一度裏切られた人間の目だよ」
「・・・ちょっと昔話を聞いてくれるかな」
そう言って、蘭城は昔話を始めた。
「私ね、この性格と体のせいで昔から結構モテてたんだ。告白とかも何回もあったりしたよ。まぁ、特に好きな人もいなかったから断ってたんだけどそれが駄目だったのかな」
蘭城は哀しそうに尚且つ寂しそうに話を続ける。
「結構な人の告白を断ったときかな、女子たちからやっかみを受け始めたんだよね。その中には今まで私がかなり仲が良い人たちも入ってたんだよね」
「その時からだよ、誰も信じられなくなったのは。もちろん、家族のことは信頼してるけどそれ以外の人は信用できなくなったんだ」
蘭城はそこで言葉を止めた。こちらを見つめてきていることから俺に何かしらの慰めの言葉を求めているだろうか。
「・・・知るかよ」
だが、そんな要望に応えてやるほど俺はお人よしではない。
「・・・」
その返答を聞いた蘭城は何もしゃべらない。
「生憎と他人に同情するほど人ができちゃいないんでな。それに、自業自得だろう?」
『自業自得』その言葉に今まで無反応だった蘭城はピクリと反応した。
「・・・」
しかし、すぐに何事もなかったかのように薄気味悪い笑みを顔に張り付ける。
「お前が俺にいったい何を期待してるのかは知らないが、悪いが俺がお前の期待に応えることは絶対にない。慰めて欲しけりゃ家族にでも言え、同情してほしければ彼氏でも作って聞いてもらえばいい。形だけでも同情してもらえるんじゃないか?」
「・・・じゃあ、私はどうすればよかったの?」
ここにきて、ようやく蘭城は言葉を発した。
「はっ、そんなこと俺が知るかよ。自分で考えろ、俺は何もしないと言ったからな」
「その言葉使いだと答えがわかってるように聞こえるけど?」
無理やり貼り付けた薄気味悪い笑みが崩れかかっているところを見ると、かなり頭に来ているようだ。
(あともう少しかな)
「うんにゃ、知らねぇよそんなもん」
「なっ!?」
俺の適当な返答に蘭城はついに変な声をし始めた。足が小刻みに震えていることからストレスが溜まると貧乏揺すりが出てしまうようだ。
「当たり前だろ。俺はお前と同じ目にあったわけじゃないんだから」
「な、なら私はどうすればいいのよ!」
口調も可愛らしいものから我が儘な感じになってきた。
「ん~、そうだな~」
俺は考えるふりをしながらさっきからずっとこっちのことを見ている蘭城が『マスター』と呼んだ人に視線を向ける。
「・・・(グッ)」
「・・・(コク)」
その視線に気づいたマスターは親指を立てて来たので俺も頷く。多少の騒ぎなら目をつぶるよ、と言うことだろう。
「自分で考えろ」
「さっ、さっきからそればかりじゃない!」
俺がまたしても適当に答えると蘭城はまたしても反論してきた。
「と言われても知らないもんは知らないしなぁ」
俺はあくまで意地悪に努める。
「あ~、ん~。もう!」
反論することができなくなったのか蘭城は地団駄を踏んだ。
(そろそろかな)
「何、ニヤニヤしてるのよ」
俺がニヤニヤしているのを見て、蘭城が毒づいてきた。そのまま俺は話を続けることにした。
※主人公の察しの良さは特技みたいなものです
作者)俺もそんな特技欲しかった!