旅の目的を果たした時私は少年を抱き締める
とても短いですが、詰め込めるだけ詰め込んでみたので是非楽しんでいってください。
少年が一人。
床は悲しみに濡れ、本は彼を中心に散乱していた。
少年を見る。
目が濁っている。体には引っ掻いたあと。髪には白髪が目立ち、頬は痩せこけている。ふと隙間風が彼の髪を揺らすと、フケが舞い散る。
少年は動かない。
彼が待つ瞬間がやって来るまで。
青年が一人。
ドアの隙間から、中を覗き込んでいる。
青年を見る。
瞳孔が揺れている。手は胸に当てられ、息が荒い。
そして青年はうずくまる。彼は頭を弱々しく横に振ると、走り去ってしまった。
青年は逃げる。
誰かが助けてくれるその時まで。
神が一柱。
頬杖をついている。
神を見る。
冷めきった目は、少年と青年を見つめていた。
「くだらない。」
神々しい口から、言葉がこぼれる。ただ、それは
「本当に、くだらない……。」
嫉妬と悲しみに満ちていた。
神はなにもしない。ただ、今日もそこに在り続ける。
勇気が一つ。
私の手の中で輝いていた。
それは、なんの装飾もない地味な剣。
それは、どこにでもある鉄の剣。
それは……あらゆるものを切り伏せる聖なる剣。
私はその剣をゆっくりと腰の鞘に納め、その頼もしさに笑みをこぼす。
そして、踏み出した。長い旅の一歩目を。
私は今日、自分を殺す旅に出る。
読んでいただきありがとうございました。