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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

INNOSENCEシリーズ

勘違いがもたらしてくれたもの

作者: 南條 樹

キーンコーン! カーンコーン!


『起立! 礼!』


放課後の教室、一日の授業から解放され、教室内は生徒同士の話声で賑わっていた。


「由希、カラオケ行こー」


声を掛けてきたのは、何時も一緒に居る仙道千晶。茶髪にピアスと今時の子だ。そんな私も千晶と同様で、茶髪で緩くパーマを充て制服も着崩している。


「ゴメン! 今日は用事あるから無理ー!」

「そっかー。 じゃあ、ウチらだけで行くよ。また明日、バイバーイ」


千晶達を見送ると、私は机に突っ伏した。本当は用事なんて無い。ただ、たまには一人で居たくて用事があると嘘付いただけ。

教室を見渡すと、さっきまで騒いでいた他の連中も既に居なくて、教室には私一人だけだった。


(たまには図書室にでも行ってみようかな。あそこならきっと彼女が居るはず)


そう思い私は図書室へ向かった。その途中、人気も無い空き教室から微かに声が聞こえてきた。私は、声が聞こえてくる教室のドアをそっと開けて中を覗いた。


(あそこに居るのって秋雨姉妹だよね? 何やっているのだろう?)


『咲、もっと……』

『ふふっ、恋は本当にキスが好きだね』

『うん……好き……』


(うわぁー、あの二人キスしてるよ。あの噂は本当だったんだ)


二人に気付かれない様に、そっとその場を離れ再び図書室へと向かった。


(羨ましいな……)


先程目撃した秋雨姉妹のキスシーン。私も好きな人が居る。相手は異性では無くて同性、彼女の事を考えるとどうしようにも無くなる。学校では同じクラスだけれど、彼女と私とじゃ天と地の差がある。

彼女──中條葉月。私の幼馴染みだけど、私と葉月以外は誰も知らない。葉月は、成績優秀でクラス委員をしており、身長も高くすらっとしていてスタイルも良い。その変わりと言っては何だけど胸のサイズは慎ましい程度だ。

対する私はと言うと、成績は中の下、身長も平均より低めで化粧もしている。そのせいもあってかギャルに見られがちだ。身長が伸びない変わりに、胸だけが大きく成長してしまった。お陰で同クラス他クラス問わず、男子の目線は私の胸に集中している。そう言えば秋雨姉妹の妹、咲も大きかったよな……そんな事を思っていたら図書室に着いた。


図書室へ入ると、真っ先に一番奥へと向かう。他の人から丁度死角になるその場所では葉月が勉強している。私は、彼女に気付かれない様にそっと近付いて行ったら、彼女の隣に知らない女の子が居た。


『お姉様、あ~ん』

「夢乃、ここで飲食はダメですよ」

『え~! 折角お姉様に食べて貰おうと思ったのに』

「その気持ちは嬉しいですけれど、今はダメです」

『そ、そんな~』


だ、誰? あんなにも仲睦まじいなんて、二人はもう付き合っているの!? そんな事ばかり頭の中でリピートしていて思考が纏まらない。兎に角、ここから離れなきゃ。

無我夢中で走り去り、気付けば人気の無い校舎裏に来ていた。何やってるのだろう私。辺りを見渡せば、太陽が沈み暗くなりかけていた。私は、重い腰を上げて家に帰って行った。


(まさか葉月が女の子と付き合って居たなんて……)


家に帰ってからも、図書室での事が頭から離れなくて気分はスッキリしなかった。



◇◆◇◆◇◆



あれから一週間。

結局ズルズルと学校を休んでいた。千晶からメールが来ても適当に返した。学校なんて行きたくたい。どうせ行っても、葉月は例の後輩とイチャイチャしているだろうし。そんなネガティブな事ばかり考えてしまう。

そんな時、玄関からチャイムが鳴る。誰か来たのだろうか?

私はそっと玄関の扉を開けると、そこに居たのは葉月だった。

私は勢いに任せ扉を閉めたが、葉月が何か言ってて、その声が大きく近所にも迷惑が掛かると思い、渋々彼女を家の中へと入れた。


「どうして学校休んでるの?」

「……体調悪くて」

「本当に?」

「……本当の事話したら、葉月はきっと私の事嫌いになる」

「何でそんな事言い切れるの?」

「答えなんて言わなくても分かるよ……ずっと葉月の事見てきたから」

「ずっと見てきた?」

「あっ! いや……それは……」

「ハッキリと言いなさいよ。貴女らしくないわよ」

「…………好き。葉月の事がずっと好きだった。でも……葉月は後輩の子と付き合っているから、私が告白しても迷惑なだけだよね」

「私の事好き……? 後輩と付き合ってる? えっ!? それって、どういう?」

「図書室で後輩の子と仲睦まじくイチャイチャしてたじゃない!」


失恋確定で告白なんて辛いだけなのに、葉月は黙秘を許してくれなかった。仕方無く、私は葉月へ告白した。気付けば涙が溢れて頬を伝っていた。


「ああ、アレを見られていたのね」

「ほら、やっぱり。覚えているじゃん」

「それで由希はショックを受けて休んでいたと……それだけ私の事が好きなんだね。あの子に嫉妬しちゃうくらい。でも、私とあの子は付き合っていないわ」

「言葉では何とでも言えるよ!」

「これならどうかしら?」


そう言うと葉月は私の方に近付いてきて次の瞬間、私と葉月の距離がゼロになっていた。


「由希、好き。 ずっと前から好きだったの。でも、まさか由希も私の事が好きだったなんて」

「本当に私の事、好き?」

「本当よ。何度だって言うわ。私は由希が好き」


もう一度、唇同士が重なり合う。今度は、先程よりも長く重ね合わせた。


「私も葉月の事、好き」



◇◆◇◆◇◆



あの後知ったのは、図書室に居た後輩は、葉月の従姉妹の望月夢乃。その従姉妹には彼氏が居るから、葉月と付き合うなんて事は有り得ないと教えてくれた。

一週間休んでいた間に、中間テストが終わっており、私は追試を受ける事となった。


「ここの問題は、こうやって……出来た!」

「どれ? うん、全部正解。これなら追試、大丈夫そうだね」


葉月と付き合う様になって、元々苦手だった勉強を見てくれた。授業で先生の説明を聞くより、葉月の説明を聞いていた方が分りやすく全く解けなかった問題も簡単に出来た。


「追試で合格したら、ご褒美にキスして?」

「も、もう……合格したらよ」


そう言いつつも、葉月の顔は真っ赤になっていて、何だかんだ言いつつも葉月も私とキスしたいみたいだから、ご褒美とか言わず唇にキスをした。


『ちゅっ!』


「ん!? んんー! んんー! ぷはっ! ちょ、ちょっと由希!」

「ずちゅっ、ぢゅる、んふぅ……ぷはっ! ご馳走様♡」

「ご馳走様じゃないわよ。舌まで入れてくるなんて……」

「でも、満更でも無いと思ったでしょ?」

「……うん」

「じゃあ、もう一回!」

「えっ! んふぅ! んんー! んんー!」

「ちゅっ、ぢゅる、ぴちゃ、ちゅく……」

勘違いからとはいえ、葉月と付き合えてる今が一番幸せ。

これからも、この関係が続きますように。












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