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邪神様との契約モノ  作者: オスめこ
3/8

邪神様


「お前には、平行世界にて生誕してもらう。」


  ≪平行世界≫


は?


「あ、あのどういう事でしょうか!平行世界って何ですか普通に現代がいいんですけど!」

「まあ落ち着け。一つ一つ説明する」

「・・・・・」

「まず平行世界についてだが、これはお前たちが観測できないだけで存在する。まあいずれは見つけることが出来るだろうさ。その中でも一番見どころがある世界にて生まれてもらうぞ」

その中でも一番?いろいろとあるのだろうか。やはり剣と魔法の世界とか近未来のフューチャー都市とか。そう思えば今さらあんな現代に戻るよりマシかもしれん。

「ふふっお前の考えはまあ分かる。だがそもそも人間が生まれることも、繁栄することも稀なのだぞ」

「えっ」

「地球に大量の隕石や彗星が衝突、生物が生まれることない地球もあれば、今よりも少し太陽に遠いため、氷ついているモノもある。哺乳類は死滅し、人間の代わりとなる魚類や鳥類が生まれ、文化と信仰を積み上げることもあるな。」

「・・マジですか」

てっきり今のようにどの世界線でも人類最強と思っていたぞ。魚や鳥が人間の代わりとか、おおよそ想像できん。

「というよりもだ、今お前が死んでしまった現代こそが最新だぞ。そこから先の未来など私たちは想像できん。さて、ではなぜ現代ではなく平行世界という理由だが・・」

そうだった。なぜ悪魔や天使、現代でもなく異世界なんだ?

「現代はもう人の数が多すぎる。これ以上無理に増やせん。死んだ魂の行き先などほぼ天国か地獄だ。世界を見ることなく死んでしまった無垢な者達は新しく生まれ変わるが、それくらいだな。現代への行き先は」

・・・これまでの説明だと神様が人間の数を増やしているように聞こえるが、現に今でも人口は増え続けている。どういう事だ?

「科学が発達する前ならば奇跡としてその数を整えることが出来た。邪神や救世主に働きかけ、滅亡と復興を繰り返してきた。だが、人が自然の現象たる出来事を理解すると同時に、奇跡は消え失せ、邪悪な力は災害として対処される。こうなると無理くり出産を止めることはできんのだ」

「なるほど。人が増え続けることが止められないから、感情の調整をしてくれる天使と悪魔に生まれ変わるしかないと」

「そうだ」

「わかりました。ではなぜ私は平行世界に?」

「・・・そこの世界では人間は繁栄こそしているが生態系としては下層に分類される。懸命にあがいて見せているし、何よりも最近になって信仰が生まれた。これが重要だ」

「信仰が生まれることが・・ですか?」

「そうだ。人間が我らを想像するにつれ、こちらとしても力が付き調整がしやすい。守ることも殺すことも容易となる」

「偶然ではなく奇跡や悪夢として介在できる・・と?」

「その通りよ。なかなか冴えているな。お前が第一号だが、これからはそこに魂を送り、誕生することになるだろうな」

なるほど。思えば人は昔から常に神様に祈りを捧げてきた。飢饉を乗り越えるためとか、戦に勝利するためとか。それにつれて余裕が生まれ、或いは無くなったら障害を滅ぼすべく邪神なんかも生まれてきた。神様の試練だとか、神様と対となる存在とか。そういった想像が今は弱まっているのだろう。まあ当たり前か。傷を治すのは神様に頼るより医学に頼るし、人が憎いのなら悪知恵を働かせて自分やそれを介しての誰かに襲わせるだろう。それでも今なお信者は多いし、語り継がれてきた伝承を信じる人もいるだろう。その始まりが生まれだしたのなら、こいつらにとっても守る価値はあるということか。

「まあお前にあれやこれやと期待しているわけではない。あくまでも人口増加と魂の処理のためだ。お前はただあちらで生まれ、己が人生を歩むだけでよい」

「なるほど・・・」

しかしまあ怖いな。話を聞く限りだと楽しみよりも恐怖しか生まれない。行きたくないなぁ。まあ無理だろうなぁ。この閻魔様決定事項みたいに話しているし。

「うむ無理だ。まあ安心しろ。記憶は消し、完全に初めからのスタートになる。今までの価値観など向こうの世界に持ち込まれても困るし、なによりお前を苦しめることになる。もう妻子の事など気にするな」


・・・・・・・


ああ この人もしかして今まで気を遣ってくれたのか?こちらが他の事考えないようにして。


「さてな。まあいいそろそろ始めるぞ。」

そういったとたん横にドアが作られ始めてきた。木製で綺麗につくられているが、ドアノブはひどくボロボロで、プレートは炭をぶちまけたの如く黒く汚れて読めない。いや怖ーよ。


さあ行ってこい 後ろからそう声掛けられて、トンッと背中を押される。

自然とドアは開き、真っ白い空間の下に、引っ張られるように落ちていく。



怖い



怖い怖い怖い怖い!



何か奇妙な感覚で落ちると共に、記憶・自分自身が消えてしまうというのがたまらなく恐ろしい!

あんな人生だったけど。自殺するほどだったけど。

いざ完全に消えてしまうと話されるとなぜか、恐怖が際限なく生まれてくる。今さらながら如何にか出来たんじゃないかって後悔がやたらと頭に響く。


嫌だ


嫌だ消えたくない!


みっともなく叫んで。でも声も出なくて。


だんだんと自分の何かが消えてきた


白かった世界もどんどんと暗くなっていく。



しかいがくらい



ねむりたい




いやだ・・おれは・・・・




「ああわかるとも!私にはよく分かるぞぉ!怖いよな?何もかも無くなるなんて、恐ろしいよなぁー?」


何かが傍にあった


それを何と例えていいのかわからない。


どす黒い、液体のような何かが可愛らしい声を発して話しかけてくる。


「私ならお前を救えるぞ!記憶を保たせてやろう残してやろう!どうだ?どうする?助けて欲しいか!?どうなんだ?早く言えよ!」


ぎゃいぎゃいと話しかけてくる何か。うるさくてかなわない。



でも



助けてほしかった。



その言葉を信じたかった。



だから俺は   そいつに縋ったのだ。 




助けてくださいと―




「くふうううふうあっははははは!!!いいだろう救ってやろう!お前の魂はキチンと残してやろぉう!!」



この邪神がな―




そうして



俺の意識は完全に消え去った。





    

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