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せつやくぶ!  作者: 奈瑠 なる
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第2話 体験入部について

 入学式の翌日からは通常授業が始まる…とはいえ、そこまで進んだ内容はやらず、中学校の内容の復習のような授業ばかりである。テストも当分ないので、生徒たちは新しい学校生活を満喫していた。


「…Zzz…」


 …満喫の仕方は人それぞれである。


 となりでは彩香が静かに読書をしている。この二人の空間だけは、相変わらず別世界のような静けさに包まれている。

 と、その聖域に割って入る一人の少女。愛奈がちょんちょん、とゆとりの肩をたたく。


「ん?なーにー?」

「お二人さんだけ別世界に旅立ってるとこ悪いんだけどさ、部活、どうすんの?」


 今は放課後、もうクラスメイトたちは体験入部へとそれぞれ向かっていた。


「部活ー?」

「私は…まだ何も考えていませんね…」

「あははは…」


 案の定二人とも全く考えていなかったようだ。


「でも、もうみんな部活の体験入部に行くらしいよ?私たちもとりあえずさ、見学でもいいから行ってみない?」

「まー見学だけならいいかなー」

「私も一緒について行っても…いいんですか?」

「もっちろんだよ!一緒にいこ?」

「!…はいっ!」


 彩香は満面の笑みで、ゆとりは興味なさげに愛奈について行くことにした。




 まずはテニス部。

 テニス部ではとりあえずラケットで球を打つ練習をさせて貰った。ゆとりは見学である。愛奈は小気味よくぽーん、ぽーんと打ち返せているのに対し、彩香はあられもない方向にすっとばしたり、そもそも当たらなかったりと、どうやらノーコンのようである。

 

 続いてバスケ部。

 フリースローの練習をさせてくれるらしい。立つ姿勢や構え方、シュートの仕方なども細かく教えてくれた。愛奈は3回のうち2回はシュートを成功させることができたが、彩香はやっぱり1回も成功させることはできなかった。


 次は手芸部。

 フェルト生地に糸で簡単な文字を刺繍させてもらえるそうで、今回も彩香と愛奈が挑戦した。愛奈はカクカクの小学生が作ったかのような作品に仕上がってしまったが、彩香は綺麗に『ゆとり』と刺繍してみせた。

 もちろん当人のゆとりは寝ていたが。


 最後に茶道部。

 お茶を飲む作法について教えてもらった。愛奈は動きが固く、居心地が悪そうだったが、彩香はきっちりと作法通りにお茶を飲むことができていた。

 ゆとりはちゃっかりお茶菓子だけ食べていた。




「ふーっ…今日は結構回れたね~」


 日も傾いてきたので今日の体験入部は終了にした。みんなで自販機でジュースを買い、一息つく。


「しっかし彩香ちゃんはすごいね!文科系の部活なら何でもイケるんじゃない?」

「そ、そうかもしれませんが…知らない人ばかりの部活に入るのはちょっと、気が引けまして…」

「ん~まぁ…彩香ちゃん人見知りっぽいもんね。私にも敬語だし。…クラスメイトにはタメ口でいいんじゃない?」


 ずっと気になっていたことを言ってみた。クラスメイトにまで敬語というのは、ちょっと壁を感じてしまって落ち着かないのだ。


「し、しかし…。最初から、タメ口で話すというのは…なんというか、怒らせてしまわないかと…」


 …まぁ、そんなとこだよね。うん、わかってたさ。


「怒らないって、大丈夫」

「しかし、愛奈さんはそうでも…」

「クラスメイトってのは同い年なの。”タメ”なの。タメ口で話して怒る子なんていないよ。そんな子がいたら私が成敗してくれるわー!」


 ちょっと大仰に言ってみる。実際そんな子がいたら許さないし。問題ない。


「う…うぅ…」


 ちらっとゆとりに視線を向ける。

 いつの間にかジュースは飲み干して捨てていて、壁にもたれてスリープ状態だったゆとりは薄く目をあけた。


「大丈夫ー。何があっても、私は彩香の友達だからー。私が守るよー」

「…うん、ありがとう、ね。頑張るよ」


 …やっぱ幼馴染って偉大だな~と、少しうらやましく思う愛奈であった。




 解散後、ゆとりはMINEでひかりに呼び出せれていたので、帰る前にひかりの部屋に寄った。


「おぉ~いらっしゃい。待ってたよ、ゆとり!さぁ中へ入って~?」


 なんかひかりが妙に強引だ。こういう時は大抵余計な面倒事を思いついているのだと、ゆとりの経験が物語っていた。

 ちゃぶ台に対面で座る。


「ゆとり、部活はどこにするか決めたのかな?」

「まだだけどー?」

「そっかそっか、それは良かった…フフフ」


 ひかりはバイトをしているので部活には入っていない。いわゆる帰宅部というやつだ。そんなひかりがこんなタイミングで部活の話を切り出してくるということは…。

 イヤな予感しかしない。


「なんと!お姉ちゃんは部活を作ることにしたのですっ!!」


 やっぱりか。もう帰りたい…。


「一人暮らしだと何かとお金がいるから、高校生である私には自由になるお金が少なかったのです。なので部活の時間をバイトに充てておりました…が!それでは”部活で友達と楽しい時間を過ごす”という大事なイベントを捨てることになったのです!ぶっちゃけ寂しい!寂しいのよ!!」

「…バイト先で楽しい時間は過ごせないのー?」

「バイトと部活は別物なのよ!」

「そうですかー」

「…で!お金と部活を両立させるために考えた私の秘策が”節約部”なのよ!」

「…はぁ」

「でもね、作るのはいいんだけどね?正式に部活として活動するためには最低5人は部員が必要なのよ。…でも小金台学園(ここ)ってやたらと部活に力入れてるから帰宅部なんてホントごくわずかでさー…」


 うん。何がいいたいのか分かってきた。


「あと三人。一年の中から部員探してきて欲しいわけよ!ね?よろしくね!」


 やっぱりめんどくさい内容だったようだ。しかもゆとりは強制的に入部させられている模様。しかも友達のほとんどいないゆとりには、三人も部員を集めるのは至難の技だ。


 …しかし結局押し切られてしまった。

次回は節約部のことを彩香と愛奈に相談します。

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