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厄災(ドラゴン)と人×妖精(ハーフフェアリー)  作者: どらっご
最終章「其の末は破滅か、或いは平和か」
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82・・・「それぞれの道へ」


「どういうことだ蓮藤蘭太!一度消えたはずの奴がなぜまた蘇った?!」


「イクスティクスさん、あの人は死んでませんよ?」


蘭太に問いかけたイクスティクスにルルが答えた。なぜなら蘭太にばかり負担をかけたくないからだ。


「どういう…ことだ?確かに姿は消えて…」


「身を隠したんです。グラスミラナが空気を読んで。それを知った上で私達は動いてました」


「なぜだ…?なぜそうまでして…」


「私達は平和に穏やかに過ごしたいんです。そのためには神様にもちゃんと生きてもらわないといけませんし、何より神殺しなんて物騒なことして穏やかに暮らすなんてできっこないですよ。そう考えたからこそ今貴女も生きているわけですし」


「う……」


晴れるような笑顔を浮かべるルルにイクスティクスは無意識にもたじろいだ。事実今の彼らに勝てる気は毛頭ない。


「それじゃあ私もちょっと行ってきますね」


そういってルルは蘭太の方へ行った。



ーーーーーーーーーーーー



「何か罰でも寄越すか?神の権限解除か?終魂刑か?」


「どれでもないよ。そもそも俺たちにそんな権限はない。いや…ある意味罰かな、せめて俺たち2人が寿命でこの世を去るまで死んじゃいけないっていうことをしてもらえればそれでいいや」


「俺が生きることを要求…?頭おかしくなったか?」


「知れたことわざわざ言わないでほしいけど…。心というものを身に染みて理解したはずのあんたにだから頼めることなんだよ?」


蘭太は肩を竦めてそう言う。

蘭太によって人間、その他諸々の生物の心の多様性を知ったグラスミラナにはよく命の大切さが理解できていた。

それとグラスミラナの限界突破を打ち砕かれたため、実質彼も2人を超えることは不可能という状況の中でまた戦う気にもなれなかった。


だが…。


「分かった。生きてやる。だが俺がいつまた何を思って世界を壊そうとするかは分からんぞ?その時にはお前達は生きてないだろうが」


悠久の時を生きるグラスミラナ達神でさえ、記憶というものは抜け落ちて行く。いずれこの心の尊さすらも忘れてしまってまた今回のような戦争を起こすかもしれない。

それなのに蘭太は動じなかった。


「そうかもね。だけどまあ安心してよ。その時は俺達の子どもや孫達があんたを止めるからさ」


そう。蘭太達は悠久の時を生きることは出来ないが、遺伝子と意思は子孫へ受け継ぐことが出来る。そしてそれが途絶えない限り永遠にこの抑止力は働くのだ。


「ふ、頼りにしている」


そう言ってグラスミラナは金色に輝く右目の輝きを完全に消した。長らく発動していた権限能力を解除し、自らが行なっていた支配を全て解いたのだ。


「これで俺が掌握していた奴らの呪縛は解けた。ケアは俺には出来ないから別の者に任せるとしよう。…じゃあな。もう会わんと思うが」


「会おうと思えばそっちからよろしくね〜」


蘭太は大きく手を振り、グラスミラナは軽く手を挙げて。

グラスミラナはその身を闇に包み、姿を消した。冥界へ帰ったのだ。


「…帰っちゃったね。あの人」


「そうだね」


【みんな、お疲れ様〜】


会話していたルルと蘭太の脳内に幼げな少年の声がした。

それと同時に意識が精神世界へ飛んだのだが、そこにいたのは2人だけではなく、カルナやイクスティクス、雷花とブラッディアンもいた。


そして彼らの前に揃っていたのは…。


【本当に、本当にありがとう。ようやくぼくらはいけるよ】


そう言ったデュ・ネイルを先頭にしたデュ族のみんなだった。

その中にはデュ・アークもいた。


「アク…デュ・アーク!どうしてお前もそっちに?」


【もう生に満足しましたよ。俺は】


「待って…待ってくれ…!我はお前に何も礼が出来ていないのに…!逝かないで…!逝かないで…」


イクスティクスが泣いていた。会ったときから酷なことしかしておらず、自分の過ちに気付いた時には居なくなっていた相手に償いをしたかった…のに。


【礼なら十分してもらいましたよ。イクスティクス】


崩れ落ちて涙を流すイクスティクスの肩に手を置いてデュ・アークは言った。


【俺を蘇生して、弟と会う機会をくれて…ありがとうございました…!】


と。涙を押し殺して頭を下げて。


【だからもう満足なんです。貴女には感謝してます。…これからは俺じゃなくてカルナを大事にしてやってくださいね】


「…ああ。ありがとう…」


デュ・アークはイクスティクスから離れ、デュ族の列へ戻っていった。


こちらは蘭太達とデュ・ネイル。


【やほ、未来のぼく】


「さしずめ君は記憶改変を受ける前の俺ってとこかな」


【あたり♪】


「じゃあ…体を返さないと…て言うわけないない」


デュ・ネイルは一瞬目を見開き、そのあと口元を笑わせた。


「俺たち2人で生きるって決めちゃったからさ。悪いけどもう譲れないんだ」


【にひ。そういうと思った〜。百点満点だね!】


「…?」


【もう心配はいらないみたいで良かった〜。ぼくらがいなくてももう大丈夫だね!】


その言葉の直後、デュ族のみんなの体が透け出した。


「いくんですか…?」


ルルがデュ・ネイルに尋ねた。


【うん。ぼくたちの役目は終わったから。あとはぼくたちがいなくても君たちなら問題ないさ】


君たちだからこそ。と小声で言った言葉は聞き取られることはなかった。


【あそうだ、未来のぼく?ルルちゃん泣かせたら許さないからな?】


「わ、わかってるわかってる!そんなことしないよ!」


【ほんと〜?信じるよ〜?】


訝しむように蘭太をじろじろ見ていたデュ・ネイルだったが自身の体がもう消え行きそうなことに気づくとため息をつくように笑った。


【ふ、もうお別れか…。でもこれでいい。これでいいんだ。…ね、ぼくたちデュ族のことを任せてもいいかな?】



「………うん。任せて。俺たち2人がみんなの血を繋いでいく。みんなが生きた証を残していく。だから安心して」


【そうするね。…ありがとうね、未来のぼく。いや、蘭太くん】


そうして、デュ族のみんなの意識体は消えていった。


君たちならきっと大丈夫。2人で支え合えるからこの先のどんな苦難も乗り越えられる。


そんな声が風に吹かれるように聞こえた。


記憶改変を受ける前のデュ・ネイルの意識体は本体は蘭太という形で生きているため、自身が消えることを認めない限り蘭太が死ぬまで存在することは出来た。だが自らが消えることを選んだ。

なぜならもうこの体は蘭太の物だから。自分より蘭太の方が上手くやっていけるから。



ーーーーーーーーーーーー



「これからお前たちはどうするんだ?」


意識が体に戻ってきた後、イクスティクスは蘭太たちに尋ねた。


「どーすっかな。俺は世界旅行でもするかな。雷花も来るか?」


「ええ、そうしようかしら」


「え!?一緒に来ないの?」


「あーうん…。俺もなんかやりたいなってことが出来てきたからさ、けどお前らを巻き込むほどじゃないし。まあ問題ねえよ。俺らは繋がってら」


「そう…だね。じゃあ俺たちは2人で暮らす場所を探しに行くよ」


蘭太とブラッディアンは互いに手を挙げ、パチンと互いの手を叩いた。


「じゃあまたな、蘭太、ルル。いつか会うその時までしっかりやっとくんだぞ?」


「うん!そっちこそな!」


ブラッディアンがゲートの枠を作り出し、雷花と共に通っていって姿を消した。


「じゃあ、俺たちも行きます」


「またいつか会いましょう、2人共!」


蘭太とルルが手を繋いで自らを光に包んで姿を消していく。


「またね!会いにいくよー!」


「今度は平和な場所で会えることを祈っている」


そんな2人にカルナは大きく、イクスティクスは静かに手を振って応えた。

そして2人は完全に姿を消した。


「行っちゃったね」


「そうだな…。あ」


「どうしたの?イクス?」


「いや、空が綺麗だなって思ってな…」


「そうだね…。久しく見てなかったよ…。青い空って、いいね」


元世界に長い間赴かず、紫色の空に荒れ果てた龍界にいた彼女達にとって元世界にとっては当たり前の青い空が非常に尊い物に映って見えた。


「龍界、直そか」


「そうだな。壊しすぎた以上、我は信頼回復から始めねばならないだろうが…」


「ゆっくり着実にしていけばいいんだよ」



…………………。


その日から数年。

元世界、龍界共に復興が進んでいた。


しかし、終戦のその日から世界のどこを探しても蘭太とルルは見つからなかった。

具体的には彼ら特有の気配が存在していなかった。



どうも、どらっごです。


なすべきことを終えた彼らはそれぞれの道を歩んで行きました。

なのですが、字数がオーバーフローしそうなので終戦後の世界は次回に続け、この小説を締めくくりたいと思います。


最後だからこそこの後書きを使って書き連ねたいことはありますが、それは次回ぐらいにしておこうと思います。


それでは、また。

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