7・・・「新生チーム、始動(1人増えただけなんですけどね)」
第2部スタートの時間だ!
やあみんな、影宮火鉈だ。
今はFG本部総長、増沢さんと作戦について話している。
唐突だが俺たちは最近忙しい。なぜなら……
「なァ?!今度は旧北九州へ?!」
「そうだよ、最近そこで『隣の者』のケルベロスが現れたらしくてね。君たちにはソレの討伐に…」
各地で起こる問題の手伝いにずっと駆り出されているのだ。まあこれぐらいならいい。問題は…
「いやちょっと待ってくださいぃ!?そろそろ休みくれてもいいんですよ?!俺らもう3週間!貴重な夏休みのうちの5分の3くらいぶっ通しで働いてるんですが!宿題とかあるんですよ?!」
休みがない。夏休みのはずなのに、だ。ちなみにすでに厄災級の件から一ヶ月がたっている。
いくら禁忌能力者といっても火鉈達は所詮子どもである、いや子どもでなくても適度な休暇は必要なはずだ。
だがここ最近は『隣の者』出没案件でよく駆り出されている。その理由は……
「え、だって新入りクンとってもこのテの案件で活躍してるじゃんか?聞いたよー?この前のキマイラのやつとか他の人がどんだけ頑張っても暴れるのやめなかったのにあの子は目合わせただけで大人しくさせて元いた場所に帰したって。」
そう、俺たちのチームには新たに1人のメンバーが増えた。その子が中々優秀なのだが、それに目をつけられコキ使われているというわけだ。
ちなみに「隣の者」はハーフフェアリーとは違うところに住んでいるため普段は会わないし危害もない。だがたまに気まぐれを起こしてこちら側にやってきて人を襲う時がある。だからこちら側で発見した場合は基本排除する。
「それに宿題なんてさっさと終わらせれるでしょ?FGメンバーたるものそんなもん速殺ダヨ、速殺☆っていうわけで今回もヨロシクねー!」
「はぁい…」
仕事が追加されてしまった。なんかブラックじゃね?ああ、休みたい…。
だが、部屋から出て行く火鉈の耳に、真剣そうな増沢の小声がふと聞こえた。
「さて、俺は今からドラゴンの件を処理しないとな…」
……すみません。あなたの方が頑張ってました。
数分後。
チームに割り当てられている部屋にて。
「へー、今度は旧北九州かー…」
のんびりとした口調で喋っている少年がいた。
そいつこそ新入りだ。名前はというと…。
「お疲れだな、でもお前結構期待されてるからまだまだ使われると思うぞ、蘭太。」
「えぇぇえー…」
そう、蓮藤蘭太だ。あの厄災級のやつだ。
なぜこいつが俺たちと一緒に行動するようになったのかは、一ヶ月前に遡る。
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「どうも皆さん、1日ぶりですね」
面会室に案内された俺達は、厄災級の少年とまた会った。正直その時はビビった。
厄災級は、何故か本能的な恐怖を感じさせる。その効果は厄災級のことを知っている火鉈に1番効いていた。
だが……。
「あ!来てくれたんですね!水の人!」
舞が喜んでいた。まじですか。
そして、あろうことか雷花は、
「やー!また会えたね!私嬉しいよー!!」
と言いつつ少年を抱きしめていた。
「ぐぅ!?ぐるじぃ、じぬぅぅぅ……!」
「おおぃ!雷花!その子窒息死するぞ!離してやれ!」
もうなんなの?「怖ぇ…」って思ってたのにこうなるとか。なんかもう…ビビってたのがバカみたいだ。
「けほ、けほ、あんた、胸部装甲厚い…。俺みたいな年頃の奴にはキツすぎる…」
「うーん?私そんなに大きくないと思うけれど…」
「いや、違う、破廉恥なサイズではないけど、なんていうかこの絶妙な隆起が、ツぁーーー!!」
急に少年は頭を抱えて悶える。よく見ると頭の一部分に氷が張られている。
もしや…、と思い彼のペア妖精を見てみると……。
すっごいなんてもんじゃない、モーレツにイラついた表情をして少年を見ていた。
「痛いっ!ごめんなさいルル許してもうこんなこと言わないから!」
なんか新鮮な気分だった。この前まで畏怖の対象だった奴が実はこんなだったとは。
見ているのも良かったがそろそろ少年が涙目になって来ているので止めることにしよう。
「す、ストーップ!前振りが長い!そろそろ本題はいろーぜ!」
数分後。
「あい、改めまして自己紹介します。蓮藤蘭太です。15です。そしてこっちが…」
「ルル・イーリアです。よろしくお願いします。」
先程とはうって変わり、2人とも若干かしこまっていた。会談とかをするときはこうなる子なのだろう。
こちらも自己紹介をする…が、
「ふむふむ、あ、今日は2つほど用件があって来ました。まずは…炎の人、一昨日は…あ、ありがとうございました。」
「あ、ああ…ん?」
あれーおっかしいなー?、俺ら自己紹介したはずなのに能力の属性で分類されている…。もしかして名前言い忘れたっけな…?
「俺、名前言ったっけ?」
「あ、聞いてます、影宮火鉈、ですよね?何か問題ありました?」
「ええっとだな、せっかく自己紹介し合ったんだから名前で呼んでくれると…」
「…?あ!そういうことか!さっき『水の人』っていわれたのでそう呼び合うのがルールなのかと思ってました」
「いや、そんなことはないぞ。名前で呼んでくれればそれでいい。それで、『ありがとう』って俺何か感謝されるようなことをしたか?」
俺がこいつにしたことで思い当たることと言えば…。
「えと、初めてあったときに俺の顔蹴りましたよね?アレです」
待て待て。蹴られたことに感謝?まさか…
『あなたが蹴ってくれたおかげで俺はあなたを殺す口実を得ました。ありがとうございます。じゃあ、死ね。』って流れなのか?!俺の人生ここまでなのか?!
「すいませんホントもう、俺まだ死にたくないです命だけは勘弁してください!」
火鉈は全力で謝罪した…が。
「……?何してるんですか??え??」
少年は困惑していた。そりゃもう慌てた感じで。
すると、少年のペアの妖精が話し始めた。
「おほん、すでに記憶とかを共有してるので代わりに私が話します。蘭太はあの時悲しいながら私のことを意識しているようでしていない、不安定な状態だったんです。」
ハーフフェアリーはその性質上お互いの信頼関係がなくなると変身能力を失うどころかお互いの能力を利用し合えなくなる。その領域にまで行きそうだったのだろう。
「でもあなたに叱られたおかげで見直せて、立ち直れたんです。だから感謝しています。あと決してマゾじゃありません。」
なるほど、そういうことだったのか。殺されるわけじゃない、良かった。
安心したので未だ慌てている蘭太を落ち着かせる。
「あー、とまあ1つ目はそんな感じです。一昨日言いそびれただけなんですけどね。そして2つ目なんですが…」
元の調子に戻った蘭太は(おそらくこっちがホントの本題だろう)2つ目の用件に入った。すなわち……
「俺を…皆さんのチームに混ぜてくれませんか?」
「「「「「はい、喜んで」」」」」
理由を聞くまでもなく即答。当たり前だろう。災いは相手ならば絶望的だが味方ならばその逆だ。受け入れない方が頭どうかしてる。
そこからの話はロケットのようだった。
増沢にメンバー新規加入申請を送り、速攻で受領され、蘭太がFGメンバーになるのに1時間もかからなかった。
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「でも最近『隣の者』案件ばっかだね…」
蘭太はくてーっとしている。多分この3週間の労働で1番疲れているのは彼だろう。
なぜなら『隣の者』案件の処理方法は、
1、対象に会う
2、蘭太が出て目を合わせ、大人しくさせる
3、蘭太が話して言うことを聞かせる
4、帰らせる
と言う流れで、全部蘭太がやっているのだ。火鉈達に出来ることは『隣の者』に会うまでの案内ぐらいである。
蘭太効果は絶大なため、最近はよく駆り出されているが、それにしても出没しすぎな気がする。
「それで?いつ出発するの?」
雷花が火鉈に聞く。これに対する答え方も最近では定型文化してきている。
「明日ー」
ーーーーーーーーーーーーー所在不明地。
「聞いたぜ。『アノコ』、旧北九州に行くんだってな」
そこにいたのはライトだった。だが今はボスとやらの会話ではない。ではその相手はというと…
手に持つ鉄棒を齧る男だった。
「ガジガジ…へぇ、なかなか誘導にのってくれてんじゃんか。『怒りの厄災』との戦いは近いな…。あ、お前も食うか?これ」
「要らんって毎回言ってるだろ?!それ食えるのお前だけだからな!?」
鉄なんて食べられるわけがないがこいつは何故かよく食っている。本人曰く「栄養補給だ。美味いぞ。」らしい。
「そうかー?美味しいのになー…。まあいいや、とりあえず『怒りの厄災』との戦いに備えて一発肩慣らししとくか、錆びるといけねぇしな。共鳴変身」
そうして変身した男の背からは、
鉄で出来た龍のような翼があった。
どうも、どらっごです。
章の後付けできた!やはり区切りは大事ですね。これから各章続くわけですが一章と違って話数を伸ばせるよう頑張ります。
ではでは、また。