6・・・「災い過ぎし、その後」
とりあえずこの回で一区切りです。
どうぞ。
空気が張り詰めていた。
いつのまにか蘭太の右目は金色に戻っていたが、それでも先ほどしたことを考えれば畏怖の対象であることには間違いない。
だがその中でおそるおそる口を開いた者がいた。火鉈も蘭太でもない。
「あの…、あなたはなんでさっきの人を殺したんですか?いくら敵だからって、やってみろって言われたからって…」
舞だった。
彼女は毒の能力者で、その能力の家系故に親族は暗殺などをしていたが、それを嫌い暗殺業から離れ現在FG内の火鉈のチームに属している。そして自らの能力の有効活用法を模索している。なお今までの殺人数は0。
だから気になったのだ。どうしてそんなさらりと人を殺められるのか、と。
それに対する蘭太の答えは…
「これぐらいしか出来ることが思いつかなかった。それに俺はルルを」
「私は蘭太を」
「「最優先に考えることにしたから。そのつながりを犯そうとするやつは排除する。今はそれだけ」」
蘭太→ルル→蘭太とルル
の順で話して答えた水の能力者は淡々と言った、はずだが不安そうだった。これで本当に良かったのかと。
邪魔者は排除する。そうしなければ大切ななにかを失うから。だから今はこれが正しい。と蘭太は自分に言い聞かせていた。
自分の信じる正義とは、ペアを、大事なものを守ること。そのためにこの力を使うんだと。
だが、それでも迷うことがある。自分じゃ確定しきれない部分がある。
なのでお返しみたいな感じで蘭太は質問し返してみた。
「ねえ…ずっとわからないんだけど、あんたらはこんなデタラメな力、有効活用出来ると思う?」
その場ではいいことなのだと思って使った力が後々悪い方へ転じるのではないか、と蘭太は恐れていた。
「うーん、癪にさわるのならごめんなさい。私は出来ると思いますよ。」
だからこそ舞の返事に、「大丈夫」というような言葉にピクッと反応した。
「なんであなたがあんなにも強いのかは分かりません。でも、その強さは無駄なものではないと思うんです。それに……強ければ強いだけ大切なものをもっと守れますし」
「あと、一人でもんもんと考えてもわからないのなら他の人と関わるのも大事だと思います。他人と関わり、交わって、その上で自分の考えを改めて、そうすればよりよくなるんだって。今の私みたいに。」
舞は蘭太に同種のものを感じていた。だから手を差し伸べたかった。
そして舞は驚愕の発言をする。
「もしよければ来ませんか?うちに」
「「「「わっツァ?!」」」」
「え!?」
メンバーの4人が一斉に舞を見た。舞も驚いて4人の方を見る。ちなみにメンバーのなかで舞だけが唯一年が異なり、16歳だ。
そんな年上4人に凝視された。
まじで言ってっか??的な感じだ。けどなんか雷花さんだけ…いや気のせいか。
そんな状況のところに、
「ふふっ」
という音がした。音源の方を見ると蘭太が左手の甲を口に当ててクスクス笑っていた。
しばらくそうした後、微笑んで、蘭太は、
「考えときます」
と答えた。
『……あれ?この子……』
と思ったのだろうかガバッと火鉈・雷花・剛牙・彼方が後ろを向いて固まり、
「オイ、あの子ほんとに男の子なんだよな?妖精女の子だったしワンチャン男装女子説あるぞ」
「私それ賛同するわ!あの子の微笑みは人をも殺せる…ハッ!さっきの光の能力者はいわゆる尊死で爆発したのかしら?!」
「ウッ…やめろ、あれは若干トラウマだ…。置いとけ。…それはそうとして俺も火鉈の説に賛同するぞ」
なんか小声でボソボソと会議を始めた。
まだ続いているらしい。
「私も賛同。でもここで話していても埒があかないわ。本人に聞いてみましょう。」
4人が立ち上がる。会議は終わったみたいだ。
流れについて行けず舞だけはしょられていたので「悲しい」という気持ちはあったがそれは数秒もしないうちに消し飛んだ。
「君!本当は女の子なんだろう?!」
と4人が質問した瞬間。
蘭太の右目が紅くなって、
「はあ?」
驚きと苛立ちの滲む声が帰ってきた。当たり前でしょ。返事しただけで4人にそっぽ向かれて何してるのかなって思ったらいきなり「お前女子やんけー!」とか言われたらビビるし、男子がそれ言われたらムカつくと思います。
4人に混ざらなくてよかった。舞は全力で安堵していた。
牽制のつもりだったのか、蘭太の右目はすぐに金色にもどった。
確かによく見れば蘭太は可愛い顔をしていた。ぱっと見は女子のそれである。
だが舞は思っていた。
『確かに女の子っぽいけど、けどね年上方…!あの子全身で主張してますよ…ッ!』
そう。もっとよく見れば気配とか視線とか体の震えとかで言い出しにくいけど言いたいことがあるというのはなんとなくわかった。
すなわち、
『俺は女じゃねえええぇぇぇ!!!』
と。仕方ないので舞は年上の4人に事実を突きつけてやることにする。
「あの、年上方、あの子ほんとに男の子です。」
「「「「な、ん…だと…」」」」
火鉈達は倒れるとまではいかないが夢を砕かれたような表情になった。
ええ…。もういいや。ほっとこ…。
疲れた様子で舞は蘭太の方を見ると、彼は歩いていて……
草むらから何かが入った袋を取り出した。
そしてこっちを向き、
「ふん、せっかくお礼も言おうと思ったのに台無し…また今度会ったときにする…」
といって自らの翼で飛び去っていった。
そしてしばらくしたとき、
「行っちゃったな、まさか生きてる間に厄災級に会えるとは思わなかったぜ」
さっきまで何事もなかったかのように火鉈が言った。だが誤魔化せるわけないじゃないですか。
「火鉈さん、すみませんがソレっぽく言ってもさっきのを見た後だと全く言葉に重みが感じられません。」
「舞、いくら毒の能力者だからって毒舌はやめてほしいな。少し心にきた。」
「これは能力でもなんでもありません。それに毒舌でもありません。事実を言っただけです。」
なんやかんや話ながら、変身を解除し(変身能力者は自ら変身を解くこともできる)、火鉈達も帰ることにした。
この時、雷花が蘭太の飛び去った方を見て慈しむような表情をしていたのは誰も知らない。
ーーーーーーーーーーーーー数時間後。「ミスト」にて。
「へえ、1人死んだか」
ボスがライトに言った。戦績評価をしているところだ。
「はい。俺の制止が届かず『アノコ』に突っ込み、爆ぜ散りました。」
「ほう、上出来じゃないか」
「え?」
ライトは驚く。このオッサン味方の命平気で捨てる系??
「ぶっちゃけ下っ端の命なんざ正味どうでもいいんだよ。俺は『アノコ』の成長が1番気になる。…あ、下っ端って危険レベルの奴らね。一般とか話になんないから論外だし。もっと言や禁忌もなぁ…」
まじかよこのオッサン…。俺やべえとこに居んのかも。
「それに、俺は『接触・交戦せよ』と言った。『最悪殺せ」とも言ったが『絶対殺せ』とは言ってない。だから任務完了だ。」
ふぉー。フォローされてるー。まじっすかー。でも俺はだいzy…やめとこ。フラグになる。
「あーそうだそうだ。上出来っつったのはワケがあってだな?爆ぜたってのはつまり生体干渉能力だろ?それって《厄災の特権》なんだわ。それを使うに至ったってことは割と成長してるってこと。だから『上出来』なんだ。」
あっ、ふーん。そういうことか。どうりで見たことない技だったわけだ。
「ほんじゃあそういうことで、報酬はまた後ほどやるわー。じゃ、お疲れー」
ゆる〜く終わらせてボスは部屋を出て行った。
ライトが1人残った。
「っふ〜。上出来、ねぇ…死者0だったら最高だったんだがなぁ」
「どうしたよ?そんなに『アノコ』ヤバかったのか?」
はずだった。いつのまにか近くに男がいた。だが顔は謎の影で口より上は見えない。
「ゔァ!?…あ、ああ。ありゃ俺じゃ無理だ」
「へぇ、まあお前は禁忌だし負けて当たり前じゃね?えっと確か『怒りの厄災』だったか?聞いてる限り面白そうだなー?いつか戦えねぇかなあー?」
男はニヤリと笑っていた。
その手には鉄の棒が握られていて、それに齧りついた。そして食べている。
「もしゃもしゃ…ん、お?食うか?」
「要らんわ、食えんわ」
速攻でライトは拒否した。
ーーーーーーーーーーーー翌々日。
火鉈はいつも通り起きる。
一昨日と違い昨日は平和に巡回が終わった。今日は休日のはずなのになんかFGから出勤要請が出ているのでいかなければならない。
なんかあったのかなー、なんかやったっけなー?と思いつつ用意を済まし、本部へと向かう。
着いた時には他の4人がすでに揃っており、建物に入ると、
「おや、待ってましたよ。」
と人事担当・唐滝がいた。
案内された場所は面会室だった。確かここは新入の者と会うところのはず。
火鉈達が来る理由はまったく心当たりがなかった。
だが、
「この中にあなた方と会いたいという子がいましてね、是非とも会ってやって欲しいのです。」
そうして開けられたドアの先にいたのは……
「どうも皆さん、1日ぶりですね」
ぺこりと礼をしてそう言った、一昨日の厄災だった。
ひぇっ、心当たりしかありませんわ。
あれ?前書きでふざけてなくね?そんな疑問をふと持った。(けれども直すにもネタが思いつかないためやらない)
どうも、どらっごです。
読んでて思ったかもしれませんが、このお話、地の文に登場人物の思考とかが混ざったりしてます。その点を考慮して見てくださいませ。
あと、
「章」とか入れとけば良かったなー…
って思いました。もしできたら追加します。
ではでは、また。