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64・・・「仲間と戦うということ」


「兄…さん…」


手帳を懐にしまい、蘭太は呟いた。

確かに復活した過去の記憶を辿ればこの書き残された内容は信じることができる。

…できるのだが。


「デュ・アークだったかアクネルだったか…。同じか。ここを発ってから一体何があったんだ…?」


ブラッディアンでも分からないという風だ。

そう。

過去の兄と今の兄の振る舞いが異なる理由が。


「え、でもお前昔ここに来て滅ぼしたんだろ?」


「ほとんど王のおっさんがやったんだけどな。俺はやってないといえば嘘だけど。…でも俺らに密告したアクネルはその時からあの様子だったぞ」


昔なら今この瞬間にブラッディアンにストレートパンチをキメていただろうが今はしない。昔と今では心持ちが異なる上、仲間だ。

それに今ブラッディアンに当たったところでなんの意味もない。


「ま、本人に聞いてみるしかないね。一回出よう」


というわけで地下室から出る。

その時、禍々しい龍気を感知する。


「……?」


1番首を傾げたのはカルナだった。


「おかしい…」


「何が?」


「この…闇?を司る龍なんていないはず…」


全ての龍の母である創造龍カルナでさえ心当たりのない龍気は更に近づく。

それはどうやらこちらの存在を知っているようだ。


そしてその正体は…。


「あ!蘭太さん!」


聞き慣れた声。舞だ。

つまり火鉈達。だが、火鉈達はこんな龍気を持っていないはず。

と言うかまずもって龍気など発しないはずだ。


「君のお仲間さん?」


カルナが尋ねてくる。そうだよ、と答えておき火鉈に問う。


「何が…あったの?」


対する火鉈は一瞬目を伏せ、視線を逸らす。


「旧日本軍の9割以上が戦死。俺らは先に進むために奴らを置いてきた」


「……」


目を見開く蘭太。火鉈は逸らした視線を戻す。


「気にすることじゃない。お前はお前の信念のために離れたんだろ。…で、何か得たか?」


「あ…うん、ちょうどさっき。昔の…かな。兄さんのこと」


「そっか。お前の兄さんは何かお前に伝えたかったのかもな」


「うん」


「…じゃ、こんな状況だし、俺いつ死ぬか分かんねーし、今のうちに俺からも伝えること伝えときましょーかね?」


んーっ、と伸びをした後火鉈は。


「共鳴変身」


紅蓮の焔を装甲として纏い、蘭太に拳を放った。


「!?」


水神龍の遺伝子を利用し水を展開した右手の平でそれを受け止める。

よくみると火鉈の装甲は様々な点で変化していた。


各装甲に黒いラインが入っており、右目の赤く変色した黒目部分と髪が赤黒くなっている。

そして1番の変化点は腰から生えた一対の翼。


「火鉈…?何を……!?」


「分かるか?俺も今日をもって龍人になったんだよ。この戦争終わらせるためにな」


そして拳を防ぐので精一杯な生身の蘭太の、がら空きになった脇腹を蹴り飛ばす。


「ぐはっ!」


突然の事態に固まっていた皆がようやく火鉈を止めようとした時には火鉈は辺りを燃やし、蘭太と火鉈しか中に入らないようにリングを作り上げる。


「ちょっと待ってろ。この程度で死ぬんじゃ戦争なんか終わらせれない」


そう外野に言いつけた火鉈はリングの内側に進む。その先には蘭太がいる。


「何のつもりさ…?」


「見てわかんねぇか?俺と、お前が、戦うんだよ。…早く変身しろ。じゃなきゃ死ぬぞ」


火鉈は手を伸ばし火球を放つ。銃弾のような速度で迫るそれは間一髪で躱した蘭太の髪を焦がした。


「くっ……、三重共鳴、変身!」


やむなく変身。火鉈が炎で2つの鉈を生成したので蘭太はデュアルブレイガンと背中の氷剣を構える。


「行くぞ」


小さくそう呟いた火鉈は疾駆し蘭太との間合いを詰め、X字を描くように剣を振り下ろす。

させじとその軌道上に二本の剣を重ねる…が。


じゅわぁっ!と氷剣が触れたそばから蒸発したため、結果デュアルブレイガンのみで受けることになる。

氷剣は元より一撃程度しか持たないのは学習済みだったおかげで被弾は防げたが…。


「熱量が増大してる…!?」


凄まじい熱気と、氷剣がコンマ1秒も防ぐ役に立たないことに蘭太は驚いていた。

考えられる理由はただ一つ。


「火鉈…お前、火龍の遺伝子を取ったな?」


「正解」


「じゃあなんで闇の気配もするんだ?」


「俺が奪った遺伝子を持ってた火龍が闇の龍…の闇に侵食されててな。それごと俺の取り込んだのさ」


そこでぐっと力を込めてきたためわざと押し出されるようにするりと抜け出す。

だが火鉈はそんなことに構わず喋る。


「お前がいなくなった後、俺たちは闇の龍に襲われてな。奴の闇に飲まれたり、捕食されたりして旧日本軍の当時残存していた人間の8割が死んだ。結果スチールが討伐してくれたけど…俺は自分の無力さを呪った」


「だから…龍の遺伝子を輸血で取り込んだのか…?禁忌に手を出したのか!?」


「そうだ!禁忌の俺がな!俺はお前とは違って、多少のリスク程度無視しねぇと強くなれない!」


「この…」


プチっと蘭太の中で何かが切れる。


「バカヤロォォ!!!」


電気能力で加速し一気に間合いを詰め、剣に分厚い氷を纏わせ大剣にして叩きつける。

対する火鉈は二刀流のクロスブロックで受け止める。


「命を粗末に扱う奴なんか大嫌いだ!お前は仲間なんだよ!?火鉈の死を望まない人だっているんだよ!?」


「へぇ…じゃあお前が今刃を振るってる相手は誰かなぁ?」


それを聞いて蘭太の剣撃に加わる力が弱まった。

火鉈はそんな蘭太に嘆息した。


「あ?この程度で躊躇うのか。甘ったれんな!!」


防いでいた剣撃をいなし、空いてしまった蘭太の胴に二本の剣撃を当てて同じところを殴り飛ばす。


「足りねぇな!全然足りねぇなぁ!??お前の戦う決意はそんなもんなのか!?あ?味方は攻撃出来ないとかそんな綺麗事通じると思ってんのか!?」


倒れる蘭太に火鉈は叱咤する。


「今までもあったろ!?味方だと思ってた身内と戦ったこと!ならこれから先も味方だと思ってた相手に襲われることだってあるに決まってるって考えなかったか!?その度にお前は躊躇うのか!?例えその躊躇ってる間に本当に大事なものが失われるとしてもか!?」


全てを守る。

このたった5文字の行動はぶっちゃけてしまえば不可能である。

どこまでが全てなのか?

かつて義理深い仲間だった敵も守るのか?それが例え自分の、今の仲間の、大切な人の命を狙っていたとしても?

敵であれば駆逐できると豪語するものは大抵その手の判断が鈍い。それは蘭太も例外ではない。


何を守り、何を倒すか、それを自ら考え選ぶということ。


それを身につけなければもし。

もし仮に何かしらの手で本当に仲間を操作され蘭太の命を狙われた時に彼はあっさり仕留められてしまう。


だから火鉈はそのことを蘭太に伝えようとしている。

最強の伝達法で。

言葉よりも伝える力に長けた「行動」で。


「く……」


『蘭太』


迷う蘭太にルルが中から話しかける。


『火鉈の伝えたいことはよく分かるよ。それが現実になるかもしれないってことも。でも私達の心は繋がっている…そうでしょう?』


「………ぁ」


その言葉で蘭太は気づく。

仲間との、大切な人との繋がりは簡単に途切れるものではない。

本気でぶつかってくるのなら、こちらも本気でぶつからねば失礼というものだ。

蘭太は立ち上がる。


「そうだな…何も変わらない…」


「?」


火鉈が一瞬首をかしげる。


「仲間が敵になったとしても…!本気でぶつかることは!!」


そして、デュアルブレイガンをバレットモードにして高圧水流のレーザーを火鉈に発射。


「俺の灼熱を水如きが貫通できるかっての!!」


火鉈はレーザーに対し爆炎で蒸発させる。

だが蘭太の作戦は脱線すらしなかった。

なぜなら、蒸発した水分が目的だからだ。


火鉈の周りの水蒸気が膨張し、暴発した。


「のぁっ!??」


得意の水蒸気爆発である。

なんとかやり過ごした火鉈の目が捉えたのは氷を纏わせた大剣を携え駆け抜けてくる蘭太の姿。


蘭太は疾駆の勢いを殺さずそのまま乗せて大剣を火鉈に振り抜くが間一髪で火鉈の二刀流に防がれる。


「…へっ、残念だったな。お前の剣は俺には届かない」


「届く。強引にでも絶対に」


「は?」


直後蘭太の背の翼の爪が手のように広がり火鉈の両手首を掴んで無理矢理外側に動かす。

その力は非常に強く、徐々に火鉈の腕は外側にどかされていく。


「な…に……!?」


遂にがら空きにさせられた火鉈に蘭太は大剣を振りかぶる…が、そこを爆炎が襲いかかる。


「くぅッ!?」


「アホが!!誰が腕からしか炎が出せねえっつった!?別にどこからでも出せんだよ!!」


ただでさえ灼熱の炎を生み出せた火鉈の、さらに強化された焔である。

蘭太は全身が本当に燃えるような痛みに襲われていた。なのに離さない。


「どうした!離れねえと燃えるぜ!?感覚麻痺ったか!?」


「…違う」


「あ?」


「こんなとこで逃げてたら…俺たちの望みなんて手に届かない!!!」


一瞬業火の外からでも見える青い2つ光が輝き、炎を蹴散らすように水が出現。蘭太を覆い炎から守る。


「うっそだろぉ前!??」


「うぅおおおぉぉおおおおおおお!!!!!!」


いっぱいに振りかぶり、今度こそ火鉈に大剣をぶち当てる。

そこを起点に水と炎が圧縮され、暴発・大爆発を起こし火鉈と蘭太をそれぞれ反対にぶっ飛ばした。


派手に飛ばされた蘭太はまず左手で地面を掴んで勢いを殺し足で着地。

火鉈は転がりながらも体勢を戻し立膝で止まる。


「…この程度で倒れは…しないか」


「ああ。足りねぇ」


ならばまだ続けるのか…?と思っていた時、火鉈は自ら変身を解き、周りを隔絶していた焔のフィールドを消滅させた。


「…え」


「もう分かったろ?俺が伝えたかったこと」


「分かったには分かったけど…そんなあっさり解く…?」


「用は済んだんだ。…なんだ?ここで疲弊してぇのか?」


「ぁいや…したくはないけど」


「だろ?俺だって体力は残しときたい」


蘭太、火鉈の意見が合致したのは偶然ではない。

龍の遺伝子を持つ者はすでに感知しているのだ。

強大な死の龍気を。蘭太達の進行方向を進むごとにそれは濃くなっていくのを。

蘭太も変身を解き、4人に分離する。



ふと。

2つの気配を感じた。


「んな…?」


じーっと気配を感じた方を見ていると…。

前に一度見た男が女性を連れてこちらに来ていた。


「チッ…グラビティ…!」


「ステイステイ!どうどうどう…」


モロ剥き出しの怒りを曝け出す火鉈を馬を鎮めるように蘭太は抑える。


そんな様子の火鉈をガン無視し、近くで着地したグラビティは抑え係の蘭太に話しかける。


「やはりお前だったか。蓮藤蘭太」


「ドウモでーす…さっきの戦いで感知したみたい…?」


「ああ。あれがなければここに来れたのは幾分後だろうな」


「おぃゴラァ!今更何用じゃボケェ!!」


「黙れ炎の。…む」


グラビティは後ろを振り返る。


「…ほう?王はいないのか。厄災(ドラゴン)級の気配がここだけ濃密だったからいると思ったが…まさか王以外の厄災級が集まっていたとはな」


予想とは異なっていたようだがグラビティは嘲笑することはなかった。


「…さしずめ最終決戦は近い、と言ったとこか?」


「そう…だと思うよ」



どうも、どらっごです。


見たら分かる火鉈君の先生タイム回ですね。


あ、グラビティと真麗さんが合流できた理由については次話にて書きたいと思います〜。字数的に。


さて、ぼちぼち終わりも見えてきましたね。短いですけど(笑)

でも何卒最後までお付き合い願います。


ではでは、また。


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