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62・・・「兄弟の遺したもの」


カルナに率いられ、蘭太達はとある場所へ来た。


かつての故郷。

と言っても「故郷」と言われなければ分からないほど更地になってしまっていたが。


「正直…終わったなって思ってたんだ、ボク」


ぽつ、とカルナが呟いた。


「アクニリディアがボクに『君を故郷(ここ)へ連れて行って』って頼んできたのはここが消えるわずか2日前だった」


その当時、念話の類で気さくにそう言ってきたラ・アクニリディアをカルナは思い出す。冗談程度に受け入れたがまさか本当にさせられるとは思っていなかった。なぜなら消えると思っていなかったどころかありえないと思っていたからだ。


「アクニリディアの遺伝子という存在は全ての世界の【浄化】を司っているんだ。それが消滅した時の恐ろしさは君でもよくわかるでしょう?」


「…はい。世界の傷が治らないってことですよね」


「そう」


細かく述べると、アクニリディアの遺伝子があることで【浄化】の概念が存在出来るのだ。

つまりこれが失くなるということはすなわち、汚れた水は汚れたまま綺麗にならず、壊れたものはさらに壊れても直ることはなく、果ては体に出来た傷すら治らず悪化するなど、最終的に滅亡へ強制的に辿らされるのだ。

故にカルナはその時点で「終わった」と確信してしまい、悲観的になった。が。


「だから正直君が現れてくれたことにとても感謝してる。救われた気分だったよ。…だけどそれは同時に君に圧をかけてしまうということ」


あの時、武器を求めて龍界へ現れた蘭太と対面した時。仄かに息づくアクニリディアの遺伝子を感じ取り、カルナは蘭太の助けになることを決心した。

この少年に頼るしかないという心だった。


だが、様々な方面から希望という名の圧をかけられているはずの少年はぽりぽりと頬をかき、ルルをちらっと見て視線をカルナに戻す。


「別に…構わないですよ。でも俺たちは俺たちの望みのために色々なことを知って、戦って、生きるだけなのでなるべくそれに沿えて下さいね?」


「ふふ、言ったものの生きてもらえればそれでいいよっ。簡単でしょ?」


意外にも単純な要望だった。


「うん」


蘭太は首を縦に振った。


さて…、と蘭太は旧故郷の更地を見る。

正直ここになんの用があるのかは全く分からなかったが、右目が青く光る。


「……?」


と同時に脳内にノイズとともに景色が浮かぶ。

空が青く、家々が立ち並び、周りには森がある。

昔の景色だった。


そして蘭太はどこかに引き寄せられるように歩き出した。ルルやカルナが黙ってついて行くので他の者もついて行く。


着いたところはやはり何も無い、が。


「こ…こ」


操られるように跪いた蘭太は手で砂をどけると、下に金属質のものがあった。ルルが呟く。


「扉…?」


「蓋」


「どっちでもいい気が…」


速攻で訂正されて若干しゅんとなる。

それは置いておき、蘭太はその地下へと続くであろう道を塞ぐ蓋をあけるべく手をかけるが…、


ガコッ


開かない。というよりどこからどう開くのか分からないほど枠と密着していた。

ではなぜ蓋とわかったのかというと取っ手があったからである。

どうすれば…と思っていた時、近くに手形の絵があったので重ねてみる。すると何やら認証したようで蓋がゆっくりと開きだした。


「おお…あ!砂!入っちゃう!いかーん!」


周りの砂が入っていこうとしていたので慌てて阻止する。砂まみれの地下とか勘弁だ。

そんなこんなで砂を入れずに蓋が開いたので、蘭太達とカルナの5人以外を地上に残し、入って行く。ちなみにカルナは最初は蘭太達4人で行かせようとしたのだがウロボロスにお前も行けと押された。


雷花の電気による灯を各々が持ち、その灯を頼りに下ると書斎の間に出た。

といっても狭い。明らかに1人用だ。

そして見渡すまもなくとある手帳の見つける。いかにも「見つけてくれ」と言わんばかりなのでスルーするわけには行かない。


というわけで開けてみた。



ーーーーーーーーーーーー



よう。今コレを開けて読んでんのは誰かな、親父?おふくろ?いや、ネイルか。どのみち家族認証のロックかけた部屋にコレはぶち込んであるからこの3人以外が開けることはないだろ。


俺は明日には旅立つ。きっと帰っては来れない。だからここにデュ・アークという男が存在したってこもを俺自身が書き残す。多分なんの役にも立ちやしないだろうが。


知ってるか?今のデュ族には兄弟が俺たちしかいねえんだ。いや、表現がまずいな。遺伝子の濃度が無に等しすぎてデュ族とみなされてない奴らが圧倒的に多かったんだ。

俺は幸い2分の1くらいアクニリディアとやらの遺伝子を持っていたから特に気にはしてはいなかったよ。


村長どもは分散しすぎたやらなんやらで酷く嘆いてやがったみたいだが、そんな時アクニリディアの遺伝子を5分の4も引き継ぐ凄えやつが生まれた。

誰かって?お前だよ、ネイル。


村長どもはこぞって喜んだ。

妬むやつもいたがネイルにはなんの責任もねぇ。こればっかりは運だ。

だがなんの事故があるかわかったもんじゃないから俺が側にいることにした。


…すまねえな。俺が近くにいたせいであんま友達出来なくてさ。


とまあそんな感じで暮らしてたわけだがつい1週間前くらいだっけな、どうにも龍界の異変が顕著になってきた。感覚的なもんだが。


だからデュ族の【浄化】能力ガーとか言われるようになってな。便利屋じゃねえよアホか。

とも言ってられねえんだ。イクスティクスが本格的に動き出したからだ。


でも行くとして誰が行く?他の皆か?実質一人っ子の奴らか?

いや。俺だ。

俺は誰よりも早くイクスティクスのとこへ行き倒す提案をして村長どもに飲ませ立候補した。


こういうのは俺が適任なんだよ。


アークって名を貰った時から運命は決まっていた。親じゃねえ、俺が決めた。


何、俺がいなくなったってお前が居る。「希望」が居る。


それに仮に犠牲があっても俺1人。まあよくね?

…って思ってた。

なのによ、何考えてんだ村長ども。


『もしお前が帰って来ず、この村が滅ぶようなことがあれば、残ったものの魂と遺伝子を用いて…神器を作る。誰か残したい者はいるか?』


なんて聞いてきやがった。頭おかしいって思ったよ。村長どもは自分達の魂までも賭ける気満々だからな。

その計画を廃止させようとはしたが悉く失敗した。


『お前で無理ならこうせざるを得ない』


だと。

俺はネイルを残すよう頼んだ。自分の弟だし、何より現在のデュ族のなかで1番アクニリディアの遺伝子を濃く受け継ぐ若い子だったからだ。


…はあ、書いててほんと自分がロクでもねぇと思うよ。勝てるっていう念じだけでもしとこう。

なんか、ダメな兄貴でごめんな。


気晴らしとまではいかないだろうけど、おまけで書いておくよ。


ネイルはさ、見たことあるか?妖精を。

あれぁ…今から4日くらい前のことかな。

村からちょっと離れたところに池があるのは知ってるだろ?そこに綺麗な青い女の子の妖精が寝てたんだ。血流してたけどな。

それを見た俺は秒で家を飛んで帰り秒で輸血用の注射器を持ってきた。

直接遺伝子を体内に入れてやった方が回復も圧倒的に早いだろうなって寸法だ。

なんか近くにも注射器があったが…気にするな。


あとこの輸血、本来やっちゃいけないんだが…なんだろうな。なんかやっちまった。まあ人命救助だと思い込むことにした。


輸血したらみるみる傷は洗われるように治った。


感謝はされた。何かお礼をしたいとも言われた。けどおそらく未来のない俺にそういうのは適さない。だから、


『もし俺に似た男の子がここに来たら俺のことには触れず付き合ってやってくれねえか?その子は心を痛めてるかもしれないからさ』


と答えた。

名前は聞かなかったが、怪我の理由だけ聞いておいた。


注射器(コレ)使って龍族の血を取ろうとしたの』


『なんでだ?』


『興味!でもそしたら襲われて肩に噛み付かれて気を失っちゃった。でもあなたが血をくれたおかげで治ったんだけど…龍族の遺伝子、増えたなぁ…』


『あー…ごめん、妖精ってそういうのを【混血】で嫌うんだったか』


『ううん、どのみち私はもう手遅れ。生まれた時から龍の遺伝子あるからもう迫害だよ。だからこうやって1人』


こんな感じの会話をした記憶がある。

なかなか深刻だったのでそれ以上は聞かなかった。

そういやあの可愛らしい妖精は今頃どうしてんのかな?誰かと出会ったりしてるだろうかな。



思ったより枠取らなかったか…まあいいや、こんなところか。

日記みたいにしたところでつまらないだろうし。


うん。

もし俺が生きてたらさ、大きくなった姿を見せてくれよ。

もし俺が死んでたら空からお前を見守ってるけどな。


俺はお前の未来を見届けることは出来ないかもしれない。でもお前はしっかりとお前の未来を進んで欲しい。


名前は願いを込めてつけてもらうものだ。例外はあるけどな。


だけどお前は確実に願いでその名前を貰った。皆の、俺の、そしてお前自身の。


だからもしものときは、未来を頼んだぜ。


水神龍族(デュ)()希望(ネイル)



どうも、花粉で窓が開けられないどらっごです。


花粉許すまじ。鼻水と鼻の痒みがノンストップです。干物になりそうです(嘘)


さて、デュ族内での輸血が禁止されている理由をサクッとこちらで書きますね。(何故本文で書かないのかと言いますと、手帳に書き残した当時のデュ・アークは弟くんがこの理由をすでに知っているものとして書いているからです。)

これはこの小説独自の考え方なので現実ではありえないと思いますが、龍族の個体の血には遺伝子も内蔵されているので(考え方としては血=遺伝子でいいかと)輸血をするとその遺伝子もそのまま移り、新たな個体の遺伝子と結合する。という性質があります。

ちなみに流血などして外気に触れたりするとこの遺伝子は壊れ、消滅します。なので怪我させて残った血を回収してもただの血です。


さて、このことを踏まえると、【浄化】機構を司る水神龍の遺伝子も輸血によって他の個体に移ることが可能なわけですが、もし安易に広範囲の生物に行き渡ってしまったときのまずさはよくわかると思います。

怪我をしても【浄化】で治し、物が壊れても【浄化】で直し、これでは誰も生の有り難みを理解できなくなるどころかむしろ命というものを簡単に軽んじ、【浄化】能力の有無で差別が起こったり、その他諸々生き物としての本来あるべき姿を見失います。(何か書きづらい…表現が上手くできないのが辛い…ごめんなさい)


なので水神龍の直系であるデュ族がその遺伝子を厳重に管理、継承することで【浄化】機構の安定を図っています。(族の中での乱用も許されない。もし行われた場合は何らかの刑が課される)


ちなみにこの遺伝子移りは対象に数ミリパーセントでも同じ物が含まれていると成立しません。

なのでデュ族間での輸血のし合いはただの輸血となります。



走るように述べましたのでないとは思いますが足りない部分があるかもしれません(保険掛け)

足りなかったら後々にでも書いておきます。


ではでは、また。

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