61・・・「職員の遺したもの」
デュ・ネイルという子が来てしばらくは無気力で虚ろだったが、なんとかまともに生活可能なくらいにまでは回復させることが出来た。
しかし呼びにくい。なかなか発音したことがない語のためだ。なので新しい名前、所謂セカンドネームを与えることにする。
とは言っても何にしようかと思いつつ歩き回っていると中庭に蓮と藤と蘭があった。
美しいと思った。
そこからはもう直感だっただろう。彼のセカンドネームは「蓮藤蘭太」とした。
後に蓮藤蘭太は突然私に尋ねた。
『ぼくは龍に運ばれてきたのか?』と。
知らない。私は嘘をついた。
本当は知っている。彼は王と戦闘用妖精が龍界から連れてきた作られた孤児だと。
どうせ連れてこられている間に夢か何かを見たのだろう。
『そうなんだ、この部屋に来る前じゃぼくをここに運んだ龍は遠くへ行ってしまったって聞いたけど…』
ああ。そうだね、確かに遠いところへ行ってしまっただろう。
とは答えられず、私は無言になってしまった。
怪訝そうな顔をされたので話を切り上げ、ここでの生活を教えることにした。
次第に彼には不思議な現象を起こす力があることに気づいた。
水の浄化である。
どんなに汚れた水であってもその身を触れるだけで触れた点から波紋が広がるように汚れがなくなり透明になるのだ。水質検査をしても不純物は綺麗さっぱり無くなっていた。
…彼は浄化の能力者なのか?
そう思って遺伝子検査をしてみたのだが私はとんでもないことを知ってしまった。
彼にはペアがいないどころか見たこともない遺伝子を持っていた。人間のでも妖精のでもない。
つまり彼はハーフフェアリーの能力者ではない。
まさか…。だが龍族であってもそんな能力は聞いたことがない。
『蘭太くん。君は自分の両親について知っていることはあるかい?』
もしかしたら親に何か手がかりがあるかもしれない、そう思って尋ねたのだが返ってきた返事は…。
『分かんない…。何も思い出せない…けどそのことを尋ねられるとなんだか殺したくなる…』
『そう。すまないね、体が拒んでいるようだ』
『体が?』
『そう。生き物には心と体があってね。別物だと思った方がいい。君も私も心という名の意識で体を制御しているわけなんだが体がその制御を振り切ることもあってね』
さて。直接尋ねる作戦は潰えたため彼のことを知るには間接的に検査をせねばならない。
といってもいつまでも彼を同じ部屋に留めておくのも気が引ける。
というわけで彼を施設の中に限り自由にした。勿論検査などは受けてもらうが。
自由にしたのには理由がある。
萎縮を防ぐためだ。長時間同じところに拘束していてはおそらく心が疲れまともな検査どころではなくなってしまう、そう考えたのだ。
そうして2年間が経った。
例の謎の遺伝子のことは分からない。強いて言えばこの世界に存在する遺伝子ではないということだけか。
今の私にこのことを解明できるのだろうか、正直不安である。
さらに2日後、彼は私に「とある女の子を見た」という話を振ってきた。
…これまでも女の子は見てきただろうになぜその子には反応したのか?
とその時は思った。
それは置いておいて、話を聞いたところ、青髪で自分より少し低めの身長で……うんたらかんたら。
実際に測ったのかとおもうくらいの饒舌だったので尋ねてみると
『違うよ、目で見たんだ』
と答えられた。
『変態かな?』
『違うよ』
なんだこいつ。それのどこが違うっていうんだ。まあ見ただけというのならボディタッチには至ってないということなのでセーフとしておこうか。
気になったのでその女の子とやらもついでに調べておくとなんとびっくり蓮藤蘭太と同時期に入ってきた少女だった。何か惹かれあうものがあったのかもしれない。
私による検査はまだまだ続く。未だに遺伝子のことは分からない。
そして数日が経ったとき。
やばい音が聞こえた。具体的には爆破音。
何事かと思って駆けつけると、水色の装甲を纏った蘭太がいた。
もう頭が痛かった。
ペアがいないはずなのになぜ変身出来ているのか、そもそもなぜ彼のような幼い少年が変身出来ているのか。
その日から私は2人の面倒を見る羽目になった。
気になっていたこともあったし良しとしよう。頭は痛いが。
少女はルル・イーリアと言った。これまた呼びにくいので別名をつけようとしたところ氷を張られたのでやめることにした。マジで痛い。
後日、私は気になっていたことを調べた。
それはずばり少女の遺伝子である。
そして驚いた。
蓮藤蘭太とルル・イーリア。彼らは例の謎の遺伝子が共通していたのだ。
つまり、人間側の遺伝子をもつ蓮藤蘭太と妖精側の遺伝子をもつルル・イーリアが共通の謎の遺伝子で繋がることで変身を成立させたのか。
頭痛がする。人知を超えている気がする。
さらに謎は深まる。
なぜ人間と妖精という異種族が同じ遺伝子を共有しているのか。
悪いが遺伝子の解明に専念したいのでこの謎はもう考えるのをやめる。脳が苦しいといっている。
数日後、私の頭痛は治らない。
きっと彼らと別れるまで続くだろう。暇じゃないだけ悪くはないが。
この日、何を思ったのか王が彼らと対面しに来た。何が目的かと思えばいきなり攻撃を仕掛けるが蓮藤蘭太は普通に避ける。
それを気に入ったのか王は「怒りの厄災」の力を蓮藤蘭太に与えると言い出した。正直正気を疑ったが、あまり反発しすぎるといけないので退室した後さりげなく彼の元いた場所についてを聞いた。
すると王は私を小馬鹿にしつつ水神龍ラ・アクニリディアという龍の遺伝子を引き継ぐデュ族の村だと教えてくれた。
『どうせ神龍の遺伝子を持っていてもガキだから働かんだろうが』
とも言っていた。
興味深いことを聞いた。調べよう、と思ったが。
『明日からここで培った技術をアノコに注げ。厄災級の力を使いこなせるようにな』
仕事を課せられた。畜生。
というわけで検査改め実験と称して我々の技術を与えることとなった。
のだが、ここでひとつ不穏なことが起こった。同僚が2人ほど消えたのだ。その2人は何か知ってはいけないものを知ってしまったという話をしていたような。
上司からは気にするなと言われたがそんなことできるわけがない。
私は調べることにした。あの手この手、たまに蓮藤蘭太を使ったり他の同僚と協力したりして。
そして知ってしまった。
実験と言い出したところで不穏には思っていたがやはりここは孤児院のような生易しい施設ではなかった。
広すぎてよく分かっていなかった。
いや、こんなに広いのに孤児が大して多くなかったを不審に思っていれば気づけたのかもしれない。
まあいないに越したことはないのだが、テロなどはあり慢性的に孤児はいた。
孤児達の大半はこの施設に留まることはなく、何故か旧南米大陸へ送られていた。更に調べるとそこから出たものが有るという記録はなかったためおそらくそこで死を迎えている。
そのことを把握しているはずの王は全く意に介さないどころかそれを望んでいるようでさらに不審である。
なのでさらに調べてみると魔龍というワードが出てきた。
戦争時代でもないのに何故?
私は答えに至った。
王は自ら戦争を起こそうとしている。何故、どうやってかは分からないが魔龍とやらを使おうとしているということはおそらく世界を視野に入れている。
その結論に至った時点で同僚はすでに14人も消えていた。
私は急ぐことにした。何をか?蓮藤蘭太に技術やその他諸々を注ぐことだ。
私もいずれ消される。タイムリミットは近い。
容量を拡張させたし、私自身が親からもらった愛という物を教えた。
だが、何かいけなかったのだろうか。
蓮藤蘭太は暴走してしまった。
ちょうどいい。私は残せるものは全て残した。どうせミスト側に消されるくらいならば彼に無自覚のうちに始末してもらった方が良いだろう。
未来、戦争が起こるかもしれない。その時にこの日記が平和へ手助けになるのならば私は本望である。
最後に言わせてほしい。
蓮藤蘭太は厄災ではない、希望である。
もしその気があるのならば、彼の助けになってほしい。きっと後悔はしないはずだ。私はそう確信している。
日記とは言いがたいが、記すのはここまでだ。
私は彼にさよならを告げに行く。
今までありがとう、君は未来の希望になってくれ
と。
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「怒りの…厄災」
確かに疑った。ただの怒りの厄災なのかと。
明らかに歴代のと違いすぎるのだ。
歴代のは進んで殺しをしていた。もっとも危険な厄災級とまで言われていたのだ。
実際危なかった。出会うや否や殺意MAXで喧嘩を売ってくるような輩だった。これがまた強力で厄介だった。
そのことを踏まえると蓮藤蘭太は真逆と言える。
「色気の」
「何?」
「この記録のこと、怒りのは知っていると思うか?」
「分からない。なにせ私彼との接点皆無に等しいし」
「そうか。じゃあ龍界へのゲートの場所は?」
「心当たりはあるけど壊れてるかも…ちょちょ!元世界守るお仕事は!?」
心当たりはあると聞くやいなやすたすたと歩き出したグラビティを慌てて真麗は呼び止める、が。
「ぶっちゃけ俺たちがいなくてももう大丈夫だろう。俺たちに依存しないといけないようじゃこの先やっていけんしな」
「それは…」
「つーわけで行くぞ。ひとまずゲートを探す」
急ぐように言うグラビティを真麗はまた引き止める。
「ねえ、どうして?この記録のこと伝えたところで鍵になりそうなことなんて無さげよ?」
「分かってないな」
グラビティは元より情報を伝えるために行くつもりではない。
「怒りの厄災、改め怒りの希望を手助けしに行くのだ」
どうも、どらっごです。
日記のやつ書いて〜さて故郷の方も〜と思ったら字数かなり行っていたので日記の方だけです。
多分次話は故郷の方かなと思います!(凄まじい行き当たりばったり感)
あとなんかすいません。一部昔書いたけど忘れてしまっていた部分を思い出し強引に繋げました()
やっちまった感すごいです。反省します。
では、また。




