53・・・「攻略のために」
「あはははァ!!ブッコロブッコロォォ!!」
『ストレスでも溜めてた?』
「ンなわけねーがたまにゃあ目一杯暴れねぇとなぁ!!」
狂人じみた大声を上げながらブラッディアンはブクリスの攻撃を腕の装甲で相殺しながら殴る蹴るの肉弾戦を仕掛ける。
「狂ってますね…!本性表しましたか!?戦闘用妖精!」
「知るかァ!とっととくたばれ!3、2、1!」
グラムを片手で掴んで使用不可にし、ブクリスの顔面を殴り飛ばす。
「ぐあっ!」
「おぃゴルァ!!そいつ寄越せやァ!」
後退したブクリスに飛びかかりグラムの柄を持って持ち主は蹴り飛ばすことで武器を奪取。距離を取られる前に袈裟斬りを送る。
ゴロゴロと転がされたブクリスが見たのは奪ったグラムをまるで粗大ゴミのように明後日の方向へ捨てるブラッディアンの姿。
「なっ!?魔剣をそんな扱いするとは…!」
「うっせバーカ欲しかったら取りに行けば?いや、ご自慢の具現でもう一個造れるか?…いや無理そうだな」
事実無理である。ブクリスは自身のイメージで具現するものは何個であろうと可能だが、本に取り込んだものは1度しか召喚できない。
なので、
「魔剣グラムは無理ですが…。こういうことならできます。具現、ランス」
自身本来の能力で手を槍を収め、見せる。
「はぇー…」
「分かりましたか?あなたは僕から武器を失わせることはできないんですよ」
「あっそ。じゃあ武器持ったお前を潰しゃいいわけだ。簡単じゃねーか」
「あまり舐めては行けませんよ?」
「ああ舐めねえぜ?男なんざ舐めるわけねーだろきっしぇえ」
チッとブクリスは舌打ちする。うざったい相手だ。
「ハァッ!!」
今度はブクリスから仕掛け、乱れ突きをする。
それを正確に避けるブラッディアン。
『やー遅い遅い!』
『貴方ずっと避けてるつもり?何か武器とか出せないの?』
『ま焦んな焦んな雷花さんや。…けど回避一方ってのもまずい?じゃあちょっと面白いもんやってみせようか。元素は…充分だな』
自身の横を通り抜けた槍の柄を掴み動きを封じる。
「くっ!またですか!」
「いや少し違うぜ!?なぜなら!」
ブラッディアンはブクリスの胴部装甲にアサルトライフルの銃口をぶつけた。
「っ!?一体どこから!?」
「どこからともなくだよ!」
ダダダダダダダダダ!!!
高速で弾が撃ち出され、全弾直撃。使い終わったアサルトライフルは消滅した。
「コレ一度見たヤツなんだな。そん時仕組みを演算で解析しておいたからあとは材料次第で作れるってわけよ!」
『蘭太君の中にいるときにもすればいいのに…』
『いや無理。あいつが使って耐えられるのは今のところデュアルブレイガンしかない。1発撃つ程度なら持つかもしんねぇがそれならもう事足りるしな』
『良いことなのか悪いことなのか…』
何となく気持ちは察する。だがそれが今の蘭太の力の規模。仕方がない。
その時、ドスンッと音が聞こえ、見るとリーチャが落下したところだった。
「ハッ向こうはカタがついたみたいだぜ?降参すんなら今のうちってな」
「さて、どうですかね?僕達はそんなに脆くありませんよ」
「バカ言え…!?」
急に動けなくなる。
「あの女ァ…!!」
『ブラッディアン!?』
蘭太の声が念話で響く。一気に緊迫感が漂うが、ブラッディアンは閃いた。
『リーチャが縛ってるのか!今解除させる!』
『いや待て!放置してくれ!お前はブクリスを頼む!』
『何で!?』
『あは。ピンチはチャンスってなァ!』
ブラッディアンの目が一瞬光る。解析を始めたのだ。この隔絶の力の。
この解析に集中するため、しばらくは動けない。いや縛られているためどの道動けないのだが。
まずは範囲。この隔絶はどうやって、どのように発生しているのか。
「ほう?動けないことに観念したようですね?」
「でもあんたはブラッディアンに攻撃は出来ない!」
蘭太とブクリスが交戦開始。するとその蘭太に向けて自身にまとわりつく見えないエネルギー体が伸びていく。
『ふーん…』
そしてそれが蘭太を覆いかけたところで、
『蘭太!バックステップ!』
念話で叫ぶ。応えて後退すると、元いた場所でそれが球体を作った。
「おっけ。仕組みが分かったぜ」
といっても問題がある。分かったは分かったのだがどう脱出しようか。
その時。
「おらぁぁぁ!!」
なんと蘭太がブクリスを掴んでリーチャの方へ投げつけると、隔絶の障壁が緩んだ。その隙に脱出。
『思わぬ収穫だ』
空中に浮遊する蘭太に近づき、耳打ちする。
「リーチャの隔絶を解析しといた。どうやらあの女の隔絶は手から出てる1枚のカーテン状で、伸ばせば伸ばすほど弱まる。プラスどうやら集中が要るのかして驚かせたりすると極端に弱まる。さっきの俺みたいにな」
「なるほど」
「つーわけで突き放す。ブクリス頼むぜ。ちょっと女の相手もしたい」
「…欲に走ってない?」
ジト目で見られたので目をそらして口笛を吹こうとしたブラッディアンは自分達が油断していたことに気がついた。
ブクリスが本を広げて詠唱していたのだ。
「やべ!」
「開け、破滅の書。現れ出づるは『メテオ』」
手を振り下ろすと空から隕石が現れる。でかい。今からの破壊は無理だ。
出来たところで被害は逃れられない。
「やばばばばば」
こんなのをまともにくらえばまず無事ではないことは確か。
ブクリスとリーチャは隔絶で自分達を守っている。
「クッソチーターがァ!!しばくぞコルァ!!」
罵声を送っておくがやばい。
その時、蘭太の手がブラッディアンに触れ、取り込んだ。
「んなっ!?」
「手を貸せ!」
再び三重共鳴状態になった蘭太はブラッディアンの演算能力を利用し、ルルの氷の能力で自身、そしてカルナ達を守るように防壁を展開。
そして隕石が着弾。
物凄い熱量で氷が溶けるが、高速で作り直して溶解と生成の速度を合わせる。
「ううっ!く……!」
少しでも気や力を抜けば全滅を免れない爆風相手に蘭太は持てる力を振り絞り、耐える。
爆風が収まった時にはほぼ全ての力を使い切っていた。
だがそこを狙っていたようにリーチャが蘭太を隔絶の障壁で閉じ込めた。
「ぐぁ…!」
「お疲れ様。よく耐えたわね?でも疲れちゃった?あたし達に委ねればすぐに楽になれるわよ?」
「そんなことするか…!」
ぐぐぐっと障壁が狭まり蘭太を締め付ける。
「ぁ…が!」
「反抗する子どもは嫌われるわよ?大人しく死ね!」
さらに締め付けられる。
「あ、言っておくけど今あたしは権限能力使ってないから君を普通に殺せるよ?ふふふ…」
殺す…?死ぬ…?
あってはならない。俺は生きねばならない。
抗う心に呼応するように身体の内からナニカがこみ上げる。
「グルァァア……」
「?」
それは両目の瞳と翼を青く光らせ、翼で地面を抑えゆっくりと立ち上がる。
ゴォォォォォォォォォォォ!!!!
喉から龍の巨大な咆哮を轟かせ、全身を水で覆い、自身を圧迫していたものを消す。
だが相当ダメージが嵩んでいたのかして、足がふらつく。
「なーんだ、反撃来るのかと思ったらそうでもないじゃん!じゃあもーいっかい!」
「創生!反射板!」
「ぎょえ!!?」
突然の乱入による能力でリーチャは自分自身を拘束した。すぐに解くが驚いた様子は隠せない。
さてその乱入者とは、カルナだった。
「その子は殺らせないよ!」
「…はぁ」
ブクリスが溜息をつく。
「あのですね。僕達の目的はあくまでこの怒りの厄災の抹殺。邪魔をしないのであれば貴方達は無視してあげようと思っていたのですが仕方がない。リーチャ、怒りの厄災と創造龍を捕らえなさい」
「ラジャ!」
蘭太とカルナが拘束されたのを確認し、ブクリスは本を広げる。
「開け、必中の書。現れ出づるは『ゲイボルグ』。…倒れていただきましょう。創造龍」
「…ッ!!?」
召喚されたゲイボルグは主の意に従い突進。カルナの胸めがけ。
「やめろぉぉぉぉ!!!!」
蘭太の悲鳴を置き去りに、ゲイボルグは突っ込む。
果たしてその槍は…。割り込んだウロボロスに突き刺さり閃光と電磁波を激しく散らした。再生と破壊を繰り返しているのだ。
「な…!?ウロボロス!?」
「ぐぅおおおおおお!!!」
その身を盾にし、両手でゲイボルグを掴むウロボロスはいくら再生しているとは言え苦痛の声を上げる。
「逃げろ!ウロボロス!」
「断る!私は貴女を守るために居るのだ!貴女を置いて行くなど出来るわけがないだろう!もしそうして私が生き、貴女がいない世界になるのなら、私は喜んで命を捨てて貴女を守る!死など怖くないわぁ!!」
「だめだ!だめだよ!!」
だんだんカルナが悲痛な声を上げる。
「それにもし私が盾となり死んだとしても!彼が、蓮藤蘭太がいる!私の代わりはもういるのだ!…だから大丈夫ですよ」
いけない。
ウロボロスが死んでしまう。輪廻が死んでしまう。
それだけでも大事だが、それ以上に許せないことがある。
【見捨てるのか?ここで】
ナニカにそう問われる。もちろんNOだ。
拘束されながらももがく。失ってはいけない、その一心で蘭太は右目を手で覆う。
「おい…!使ってやるから出せよその力…!『怒りの』!今ここで使えなきゃ役立たずだろぅが!
右目には元から青色に光っていたところに赤が入り、紫色に光る。
「こんなところで見捨てるのか?そんな程度なのか?決意はそんなに弱いのかぁ!?」
言葉に出して自分自身を挑発する。そして。
「ふざけんなァァァァァァ!!!!」
咆哮とともに右の瞳から黒ずんだ紫色の炎が燃え上がり、障壁を浄化で再び打ち破る。実際に燃えているわけではなくエネルギーがそう見えている状態である。
跳ね上がった身体能力で高速移動し、ブクリスに接近。
「そんな!?」
「グルァァア!!」
パァァン!!と音を立てて殴り飛ばした後、起爆性水蒸気を圧縮したものをリーチャに向け放ち爆破。
そのあとウロボロスに接近し、未だ彼を穿とうとするゲイボルグを左の腕と翼で強引に引き抜く。
「うぐ…ああ…!」
そこで頭痛が響く。
極端にかつ意図的に怒りを溜め込んだため過剰な負荷が乗ったのだ。
「くそ…!」
全身を光に包ませ、変身解除しようとしたところで肩に手を置かれた。
見るとそこにはウロボロスがいた。
「ウロ…ボロス?」
「お前は今、何のためにその力を使った?」
彼は蘭太にそう問うた。




