51・・・「魔龍誕生」
この時代の元世界には1つ滅んでしまった大陸がある。
旧南米大陸だ。
かつての怒りの厄災が暴走し、当時の該当者のものであった溶岩の能力によって大陸全体が飲み込まれ壊滅したのだ。
当たり前だが生態系は完全に破壊され、今では火山岩を採取するくらいでしか利用価値がないところとなってしまったのだ。
ん?……なになに…当時そこにいた人々はどうなったのかって?
ははは、面白い事を尋ねるね?
死んだに決まっているじゃないか。
大陸が溶岩に飲まれたんだ。逃げられるわけないじゃないか。
しかし、そんな旧南米大陸を最大限に活用している勢力があるんだ。ご存知かい?いや、知らないだろうね。仕方がないさ、隠してきたからね。
……それはなんなんだって?
もう、そんなに急ぐでない。どうせもうすぐ分かるさ。
まあつっても、俺様の組織なんだがな?
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そして所は旧南米大陸。
溶岩に殆どの地形が溶かされ、飲み込まれているため、多少の起伏はあれど扁平な地形が大体を占める大陸である。
そんな所に1つの建物、そして直径1mの巨大な鉄柱によって区切られた3つの200m立法の檻に一頭ずつ巨大な龍が入れられている。
その檻の前の空間が歪み、1人の男を吐き出す。現れたのは「傲慢の王」。右瞳が金色に輝いている。
ここはミスト。ミスト旧南米大陸実験場。
彼らは影で動いていたのだ。この龍達を作るために。いや、龍の皮を被った化け物と言うのか?この際はどうでもいいか。
ミストという組織はこの傲慢の王によって造られたものであり、王の命令は絶対。そして職員は拉致など、とりあえず好ましくない方法で集められ基本は王の言いなりになっている。
だからこんな溶岩で塗り固められた少なくとも住めるようなところではない場所に沢山の人々がいるのだ。
突然人が現れるという現象に龍達は気が立ち暴れるが、すぐに大人しくなった。檻の鎮静効果の影響もあるが、檻を壊せないということに気がつき始めたのだろう。
「おうおうおう。暴れても無駄だってようやっと分かってきた頃合いかぁ?壊れるって事象を無くしたこの檻はどうあがいても壊せないってことをその脳ミソで理解すんのに時間がかかるったらありゃしねぇ」
ちなみにこの龍達を閉じ込めている檻は王によって「透過」「破壊」の事象を消去されている。
自身の何倍にも及ぶ巨体が3つ並んでいてもなお軽蔑の視線を向けられるのはやはり傲慢の王故なのだろうか。
その龍達から視線を外し、辺りを忙しそうに走り回る職員を呼びつける。
「何でしょうか、王」
「アディヨンポリズはゲートを越えれるか?」
「いえ、不可能です。何度シミュレーションをしてもゲートを通す際に体が壊れてしまいます」
「チッ、さすがドラゴンゾンビとだけある。あくまでこっちで運用するしかなさそうだな。じゃあ残り2体は越えれるか?」
「はい」
「よし。んじゃあ戻れ」
再び王は3体の龍を見上げる。
『この俺様が見上げるってンのも癪だな…クソ』
さて。この龍達だが、彼らは普通の龍ではない。
まず彼らはここ以外の場所を知らない。
なぜなら先ほども述べた通り彼らはここで破壊のために作られた「魔龍」と呼ばれる物だからだ。
よって彼らには破壊欲求しかない。
ではここにいる3体を紹介しよう。各々特殊な能力は持っているが後々にするとしようか。
1、溶岩魔龍・ゴグボルケ
記念すべき魔龍第一号。頭部及び尾部先端に1つずつ溶岩噴出口と、背中に巨大な火山を2つ背負う溶岩を司る魔龍である。
実はこの魔龍の能力は元々は厄災級能力者のものである。そう、この大陸を滅ぼした2代前の怒りの厄災だ。
彼が死んだ後奇跡的に残っていた体から傲慢の王自らが厄災級能力の権限と溶岩の能力を回収し、そのうちの溶岩能力をこの魔龍に転用したのだ。
全長はおよそ90m、背中の火山は1つ23mほどもある。
目は真っ黒に染まっている。
3体の魔龍の中で最も重く、翼もないため飛行は不可能。
その代わりというわけではなさそうだが、太くがっしりとした4本の足がその巨体を支えており、体は硬い鱗と自らが出した溶岩が冷え固まって出来た強固な外殻に覆われている。
2、闇魔龍・ヘルヘイム
3体の魔龍のなかで最も体長が長く、130mを誇る。ちなみにウロボロスよりは短い。
だがそれを上回る特徴があり、それは全身を包む闇。その闇は少し距離を置くだけで「そこにナニカがある」程度の認識しか出来なくなる程の濃さ。
こいつはその闇を駆使して戦うことだろう。
体についてだが、蛇のように細長い(蛇と同じ細さではない)体に一対の翼が巨大に発達し舞うように飛ぶ。一応後ろ足もあるのだが滅多に使うこともなく退化してしまっている。また目は真っ黒に染まっている。
眠る時以外は常に舞うように飛んでいるが、その浮力の源はよくわかっていない。おそらく自身の闇なのかもしれないが確証がない。
3、多頭腐魔龍・アディヨンポリズ
3体の魔龍の中で最も異彩を放つ龍。その最大の特徴は10本に及ぶ頭の数である。
こいつもゴグボルケと同じく四足歩行をするのだが、
頭部と尻尾に頭があり、4本足の付け根と背中から生える翼の翼爪部そして腕から首か伸びており、計10本である。
この頭の目全てが黒く染まり、それぞれに意思はあるようだが、一番権限が強いのは頭部の頭、次に尻尾の頭のようで基本的には頭部の頭に従って体は動く。
これによりアディヨンポリズはほぼ死角を持たないのだが、多頭故の致命的な欠点が生まれてしまった。
アディヨンポリズは1つの体に10の意思が備わっている。その1つ1つが常に同じ体で養分の奪い合いをしているのだが、その影響で体全体に栄養が行き渡ることが無い場合が多々あるため体の各所が栄養不足で腐っていたりするのだ。
だが不思議なことがあり、体が腐食しているにもかかわらずアディヨンポリズはピンピンしているのだ。
そのためつけられた別名は「ドラゴンゾンビ」
だがピンピンはしているのだがゲートを通過する際は思いのほか体に負担がかかっているらしく、アディヨンポリズのような腐食した体では耐えられないのだそうだ。
ちなみに翼膜まても一部腐食しているが飛行は可能であり、もし背中の後ろ側から生える腕も足と数えるのならば6本足となる。
以上である。
そしてついにこの3体を活動させる時が来た。今動かさねばいつ動かすのだというくらい。
だがあと1つ手順が必要であった。
『魔龍ども、よくその檻ン中で成長してくれたな。後で褒美をやるよ。足りねぇかもしんねぇが』
凶悪に顔を歪ませ、王は施設の職員全てを呼び出す。
「諸君!ついに君たちが育て上げたこの魔龍が活躍する時が訪れた!これは一重に君たちのおかげである!感謝しよう!…さて、帰りたまえと言いたいところなのだが残念ながら世界は今戦争をしているため安全な場所がない。身寄りのない君たちを手放してサヨナラでは申し訳が立たない…」
確かに、今世界中で龍界との戦争をしている。彼らを解放したところでどうせ安住などできず死ぬだろう。
だから王は閃いた。彼曰く「慈悲深い」案を。
「だがこの魔龍を運用した時点で君たちの仕事は無くなってしまう。かといってこの世界に安全なところはない。…しかし君たちを快く受け入れ、安らかに居させてくれる美しく素晴らしい場所を俺様は知っている。そこへ君たちを誘おう」
突如、魔龍達を閉じ込めていた檻が消滅した。
王は職員に向け紳士のようにお辞儀し、言い放つ。
「どうぞ、冥界へ」
王の目の金色の輝きが収まる。
すると職員達はまるで人が変わったかのようにパニックを起こし、魔龍達はそれに反応して襲いかかる。
王の支配。
この王たる男の、傲慢の厄災の権限能力。
それは「自身に畏れを抱いたものを完全支配する」もの。
完全、すなわち精神や魂までも掌握圏内にあるのというところが最大の特徴であり、囚われた彼が命ずる内容全てを忠実に受け入れ行う傀儡となり彼が解放するまで意識もない。
そんな状態で非人道的なことを平気でやらされるため、大体解放された者は状況を理解した後精神崩壊を起こす。
これでは流石に可哀想だろう、ということで彼は殆どの場合解放直後に死を提供する。それを彼は「慈悲深い」と表現するのだ。
彼にとっては狂って生きるよりも死ぬ方が余程良いという認識なのだろう。
というわけで今まで献身的に働いてくれた職員達を魔龍に食わせることにした。
腹を空かした魔龍達はいい食事が出来るし、職員達は楽になれる。まさに一石二鳥ではないか?
ちなみにこの中で唯一王だけ襲われることはない。何故なら彼の王たる威圧もあるのだが、それ以前に彼が自分自身に「『認識される』という事象を無くす」効果を付与しているため。
おびただしいほどの悲鳴と血飛沫が上がっていたが、ものの数分で魔龍達は職員を食い尽くした。残ったのは地面に付いた血だけ。魔龍達は綺麗好きなようで肉や骨、内臓もちゃんとその胃に収めたようだ。
しかし彼らの巨体を満足させるほどの量では無かったようだ。残念ながら。
だがそれでいい。
「さて、魔龍ども。貴様らに外の世界を見せてやろう。行け、そして蹂躙せよ」
バッと腕を拡げると魔龍達は歪んだ空間に飲み込まれ消えた。
王によってアディヨンポリズは元世界のどこかへ、ゴグボルケとヘルヘイムは龍界へ転移させられた。
1人残った王はもうここに用はないと言わんばかりに背を向け自身も姿を消す。
「さあ、王からの大きなプレゼントだ。ありがたく受け取り、そして楽しめ。くくく」
なーんかデカい敵とかいないよな…と思ってぶち込むドラゴン考えてたら時間かかってしまった!どらっごです。
こいつら魔龍達はまた後々出てきますよ!頑張ってもらいましょう!
では、また!




