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49・・・「戦いを望まぬのなら」


「全くしょうもないことだな」


流浪の厄災(ドラゴン)級、グラビティはある山に建てた居候用の小屋でぼやいた。

なんか召集をかけられたような気がするが知るか。俺は生憎律儀に従うようなデキたモンじゃない。


「だいたい何が悲しくて正しい歴史も知らんような馬鹿どもの下につかんならんのだ?俺の力はそんなことのためのものじゃな…さむ」


咄嗟に気圧を弄り寒さを退ける。よくよく耳をすませば足音まで聞こえた。


『冷気を使う能力者か…?』


コンコン、と扉がノックされる。

何者か分からない。居留守を使う。


「『飽きの厄災』!いるんでしょ?」


「女…?いや!いないぞ『飽きの厄災』などというものは!」


「じゃあ今応答してるのは?」


「空耳」


「居留守を使うなぁぁぁぁ!!!」


「うルッせぇ!!」


バゴン!と扉を開けると女性が大の字で仰向けに倒れていた。見覚えのある顔だったが、鼻が赤い。原因には心当たりしかない。


「あ、お前か。『色気の』。すまんなこの扉外開きなもんで」


「…ずっ」


鼻を啜った荒垣真麗の鼻からは鼻血が垂れていた。


「痛い…」


「本当にすまないと思った。まあなんだ、とりあえず入れ。あいや、軍に入れというのだったら帰れ」


「そういうのじゃないの。というかもう行っちゃったし」


「ほう」


真麗を小屋へ入れ、とりあえず鼻にティッシュとかを詰めておいた。


「それで?要件は」


「報復と言う名の戦争が始まったのと、龍界に攻め入ったのは知ってるわよね?」


「ああ」


「それで、懸念の域を出ないんだけど龍族側もこっちに何かを送り込んでくるんじゃないかって思うの」


「ほう」


「だからそれが起こった時に私と一緒に防衛してほしいなって思って…」


「何故だ?」


「私達の居場所を守るため。この世界が滅んだらどこにもいられなくなる、それは防がないといけない」


「そのために災いの力を、破壊の力を使うのか?生憎だがこの厄災級の力は壊すためにある」


()()()()()()()()()()()()()()()というのが正しいわ。持ってる者の使い方次第よ」


「……使い方次第、ね。少し考えてやるか」


「ありがとう」


「しかし…お前召集されなかったのか?」


「されたわよ?」


「何当たり前のように召集拒否してんだか…」


「それは貴方も同じでしょう?ちなみに私は残るっていうの、スチールの提案よ。元世界(こっち)のことも考えないといけないって」


「お前さてはあの鉄野郎にコキ使われてるな」


「えっ…へへ…残念ながらその通りですよ…畜生」


死んだ顔で恨めしそうに真麗は答えた。


ここに一つ、防衛隊がひっそりと出来上がったのであった。



ーーーーーーーーーーーー



戦闘開始から2分。

地形情報。台地、深い谷。

台地側に旧日本軍、谷側に飛龍。なお台地側にも歩行型の龍族が存在。陸と空での戦闘が起こっていた。

同時に、異変が生じていた。


『おいどうした!?様子が変だぞ!』


ブラッディアンが焦る。何故なら蘭太は全く攻撃を当てられずにいるのだ。戦場に突入した直後からコレが顕著に現れた。

今は蘭太の呼吸が荒く、ルルも落ち着きがない。

そして負の感情が湧き続けているのか、どんどん蓄積している。このままでは暴走の危険もある。


「がぁっ……声……が…!」


頭を抑え悶え始めた蘭太は空で無防備になるが、不思議と敵であるはずの龍も襲ってこない。ブラッディアンと雷花は不審に思い出す。


『声…?』


『聞こえないの…?悲鳴と怒号まみれで頭がおかしくなりそうなのに…!』


同じ精神世界にいるルルが呻く。だが残念ながらブラッディアンと雷花には例の悲鳴とやらは聞こえていない。


『ブラッディアン!もしかしたら蘭太君と入れ替わったら何か分かるかも!』


『現状それしかなさそうだな…蘭太!入れ替われるか!?』


「た…ぶん」


『おけ!チェンジ!』


そして蘭太の意識と入れ替わり、ブラッディアンは表面に出たのだが。


「ゔっ!!?」


思わず頭を抑える。

想像以上に酷いことになっていた。

様々な声が絶え間なく耳に入り、頭に響くのだ。


【いやだ】【死にたくない】【殺さないで】【攻撃しないでくれ】【お願い】【なんで】【酷い】【痛い】【やだ】【助けて】【カルナ様】【生きたい】【人間め】【非道】【卑怯者】【言葉が通じない】【声が届かない】【死にたくない】【どうして】【何もしてないのに】【殺さないで】【落ちたくない】【許さない】


【殺してやる!】


「ッ!?」


振り返ると大口を開け噛み砕かんとする飛龍がすぐ目の前に迫っていた。


「くそッ!!」


咄嗟に抜刀。斬りつけようとした時。


『やめてくれぇぇ!!』


入れ替わっていた少年の悲痛な声が響いて体がガクンッ!と止まり、ブラッディアンの意識が精神世界へと強制的に弾き返された。 その勢いで精神世界の床に思い切り尻餅をついた。


『いって!』


そのまま蘭太は大口で挟まれるが、()()()()()の方が今度は他の龍族に攻撃され、口を離していった。


「ぐ…うう…」


【大丈夫ですか!?水神龍の末裔様!】


「う…ん」


いかにも蘭太を守るように乱入した龍族は蘭太にそう言った。ちなみにブラッディアンと雷花はルルからの伝言で内容を知った。

驚いたことにこいつらは蘭太がデュ族の者であることを知っているらしい。それ故に彼らは積極的に蘭太を攻撃せず、むしろ助けるように動いていた。ということは。


『畜生…いきなり最悪だ…』


『分かった?』


『これで分からんほうがどうかしてやがる!こいつら()()()()()()()、カルナと同じ共存派だ!だから蘭太も攻撃したがらない、そうだろ?』


『ビン、ゴ…味方と戦ってるようなもんさ…』


そう。今人側が攻撃している相手は「共存派」の龍達だったのだ。魂を抜かれ、死体同然で物言わぬ抜け殻の龍と正反対で、魂も意思も持つ通常の龍で、そのうちの貴重な、他種族との共存を図っている彼らを今人側は殺そうとしているのだ。

では、魂をもち他種族との共存を図らない龍達はなんなのか。答えは単純で、駆逐派である。だから自然と共存派は不利な状況にあるのだ。


その時。


〈空中戦闘員!直ちに退避せよ!これより散弾砲を発射する!〉


予め渡されていた無線から声がした。同時に蘭太の顔が青ざめた。


「おい!引くぞ!巻き込まれる!」


近くにいたスチールが呆然とする蘭太を叩いて呼びかける。彼もこの異常事態に勘付いてはいたため満足に戦えてはいないし、予め渡されていた無線機に喋っては怒鳴りつけている。


「スチール!アレを辞めさせる方法ないの!?こいつらは抜け殻じゃない!」


「あ!?」


半ギレ顔でスチールは辺りを見回す。抜け殻とは思えない統率された動きは、明らか思考を持つ者の動きである。多少の龍族に対する知識をもつスチールにも容易に抜け殻の龍でないことは分かっていた。スチールは無線をミュートにして叫ぶ。


「んなこたァ分かってんだ!さっきから何度も地上の奴らに言ってる!なのにヤロー共効く耳持たねぇ!奴らは龍族そのものに憎悪を抱いたんだから相手が龍族ならなんだっていいんだとよ!とんだクソ上層部だド畜生!」


確かにそうだ。だが止めねばここにいる生きている龍達が死んでしまう。


命か、命令か。


決断に1秒も要らなかった。


「スチール。恨まないでほしいけど、ここに残っていてほしい」


蘭太はスチールから離れると、反転して散弾砲に向かって飛んで行った。


「なっ!?バカ野郎!!」


連れ戻そうとスチールも動くが、氷の壁に阻まれる。蘭太が「来るな」と意思表示するべく張ったのだ。

加えてかなり頑丈に出来ており、スチールが殴りつけてもビクともしなかった。


「こンのボケがぁぁ!!」


スチールの怒声を背に受け流しながら蘭太は散弾砲の直線上に止まる。散弾砲は全部で3つあった。


〈っ!?厄災級!そこは炸裂座標だ!今すぐ離れろ!〉


〈発射まで10…9…〉


〈離れろ!命令違反だぞ!〉


「ごめん…むり」


怒声が響く無線を取り外し、捨てる。

意思を持つようにデュアルブレイガンが勝手に抜刀、バレットモードへ変形し、氷でライフルを造形する。


「命令が知るか…!その大量破壊兵器を…ぶっ壊す!」


それを散弾砲の発射口(砲撃火器の避けられない脆弱部)に向け、高圧水流をレーザー砲のように発砲。


高圧水流が空気を切り裂き、甲高い音を立てながら一台の散弾砲を貫通し、水蒸気爆発を起こして本体を誘爆する。

そしてもう一台。いかにも発射間近のように発射口が光っていたが構わない。撃ち抜く。

これも爆発が発生し、機能を停止。

最後に一台。照準を定め、高圧水流を撃ち出したのと散弾砲が発射されたのは同時だった。


その散弾が狙っていたのは龍達…ではなく蘭太だった。

彼らは蘭太を裏切り者と見なし、消去を図ったのだ。

強力な散弾の塊に高圧水流は分散させられながらも進んで行ったが、攻撃は通ったのかは水流レーザーを撃った本人には分からなかった。

散弾は蘭太に直撃、炸裂。蘭太は炸裂した破片が飛び散らないよう自身を氷で覆ってしまった。


覆う氷が溶解すると、蘭太はそのまま谷底へ落ちていった。小さくなったところで一際強く光る。強制変身解除。


その思わぬ退場と同時に、様子を見ていた飛龍達が激昂。態度を一変させ兵達を蹂躙し始めた。

スチールは落ちていった少年を追いかけようとしたが、言い残された言葉を思い出し、踏みとどまった。たまに龍が襲いかかってくるが、持ち前の防御力のお陰でガン無視が効いていた。


『ここに残っていてほしい』


つまり、付いてくるなということだ。奴が何を考えどうしたいのかはわからないが、来るなと言われても付いていく程の義理もない。


「デカいモンを失っちまったな…早々に…くそったれ」


スチールは、ただ「怒りの厄災」が死んでいないことを願うだけにした。

そうすることしか彼には出来なかった。


その後、奇怪な現象が発覚した。

散弾砲の暴発、龍族の蹂躙により軍隊は大打撃を受けたのに死者は1%に満たなかったのだ。

その様はまるで龍族がわざと人殺しを避けているようであり、一部の人間に不気味さを感じさせたことだろう。



どうも、どらっごです。


この筆者は何度主人公を危機に陥れれば気がすむのか?

なんだかふと思いましたね(他人事)。

でもまあ大丈夫ですよ。心強い仲間がいますから。孤独じゃないですから。


さてさて、今回はこれぐらいにしておきましょう。ではまた。


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