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48・・・「迷いながらも戦わざるを得ない」


火鉈達は臨時で設置された召集所にいた。そこには地方からも能力者が集められていた。

そして今まさに国王による演説が進行中である。


【我々は龍族による攻撃を受けた!彼らは平和な暮らしを築いてきた我々を破壊しようと目論む外道種である!我々にこの世界から追放された歴史を持ちながらも我々を侵略しようとする愚鈍極まりない行為・思考を我々の鉄槌によって改めさせる必要がある!】


裏の話、この国王は「傲慢の王」の手に落ちてしまった存在であるが、国民は愚か犠牲になった臣官以外の国家公務員も知らない。


国王の演説はエスカレートする。最初こそすれ懐疑的な者も多かったが、感情に訴える演説にすでに心を奪われ、今では合いの手ならぬ合いの声を上げるまである。

話を聞く限り、突如発生した食糧問題はかろうじて被害が小さかった地方から集めることで対処するらしい。


「やーべぇな…まるで扇動演説じゃねぇか」


火鉈ら毒づくが、彼も乗せられそうである。それをかろうじて抑えられている理由は…。

隣で俯き、目を伏せて悲しげな表情をする蘭太がいるからだ。彼は召集の放送がかけられてからずっとこんな様子だ。思えばあれから一言も声を発しておらずずっと俯いている。

そんな蘭太が気になっていた。


そしてしばらく経った後演説が終わり、解散。次は編隊について説明されるらしい。


「……ん…ぉわった?」


ようやく蘭太が声を発したが、それはあまりに弱々しかった。

演説は終わったが次は…、と教えようとした時蘭太に影がかかる。


「まだだ。次は編隊についてらしいぜ、『怒りの厄災』」


そこにいたのは見間違えようもなく「欲望の厄災」スチールだった。


「スチール!?何シレっときてやがる!」


「あなんだオメ?俺はこいつに言ったんであってお前らと話してはねえぞ?…って、あ、おい!」


相変わらず沈んだ表情のままの蘭太は最低限の礼だけ残して歩き去って行ってしまった。


「アノコ、どうしちまったんだ…?」


「わかんねぇ。けど最近ずっとあんな感じさ…」


「病んじまったのか?」


「かもしれない…」


「もっとわかってやれよ…。仲間なんだろ?」


その後。

予定通り編隊説明が行われた。

・集まった人数は15000人で、それらを一括りに「旧日本軍」とする。

・飛行が可能な者は空中で戦闘。

・飛行が不可能な者については地上の龍を相手取る。

・後方支援兵器として「散弾砲」を用意する。


などなどが伝えられた。

まあ要は「飛べる者は飛んで戦え。それ以外はサポな」という感じである。

急ごしらえ軍過ぎて若干アバウトなところも見受けられる。

ちなみに「散弾砲」というのは対飛行生物兵器で、空中に向け発砲・空中で炸裂させることで、翼膜などを破壊し落とすというもの。基本空を飛ぶことの出来ないハーフフェアリーが飛行生物と戦い、かつ今回のように戦闘機の類を持ってこれない場合には大体必須物である。


「以上で説明を終了する。進軍は3時間後である。解散!」


声と共に人々がぞろぞろ出て行く。時折「龍族め…駆逐してやる!」や「バカな奴らは根絶やしだ!」といった過激発言も聞こえる。


「さて。蘭太、俺たちも行くか…ん?」


立ち上がった火鉈の服を蘭太が掴んだ。


「ねぇ、火鉈は…どんな時でも仲間を信じれる?」


「なんだよ急に…?まあ、時によるな」


「そう」


「?」


火鉈は不安で不思議に思ったが、聞かないほうがいい気がした。



ーーーーーーーーーーーー



「減っちゃった…ね」


拠点の建物からカルナは、生きている共存派の龍族を見下ろす。

イクスティクスと対峙したときに何者かに気絶させられた後、ここで目を覚ました。後に聞いた話では後から駆けつけたウロボロスが回収してくれたらしい。

目覚めた後のカルナは少し気分は回復していたが、イクスティクスが元世界に「抜け殻の龍」を送り込んだという報告を受けたときにまた気絶した。ついに彼女は禁忌を犯してしまったのだ。

再び起きた彼女はとても回復はしていなかった。


「ボクは…どうすればいいんだろ…分からなくなってきたよ…」


正直本当に分からない。

イクスティクスはカルナのためと宣いながらカルナの望まない虐殺を繰り返している。

そして今度は元世界にまで魔の手を伸ばした。

イクスティクスを止められなかったのだ。自分には。そんな自分の無力さをことごとく憎く感じる。


「ボクは…」


いても意味がない。そう思うようにすらなってきた。

すっ…と懐から護身用のダガーを取り出す。

それを首に当てようとして…止められた。


「何するの。ウロボロス」


「死ぬな。逃げるな。貴女には生きてもらわねばならない。貴女が生きているから生き残っている龍族達も生きる希望を持っていられる」


「拷問でもされてるのかな…?」


「違う」


乱入したウロボロスは力が緩んだ瞬間を突き、カルナからダガーを奪った。


「なっ!?返してよ!」


「ダメだ。今の貴女に武具の類は持たせられない。貴女が死ねば『創造』が失われ全ての世界が滅ぶことはご留意のはず。…貴女が生きることは使命なのです」


「……ぅ」


「苦しいだろうが今は我慢して下さい。諦めなければいつかイクスティクスとも和解できる時は来ます」


くれぐれも二度と自殺を図らないように、と言い残しウロボロスは部屋を出て行った。

その後しばらく部屋からはすすり泣く声が聞こえた。



ーーーーーーーーーーーー



支度を整えて3時間後。

蘭太達を含んだ旧日本軍は他国と時間を合わせた上で進軍し、今まさにゲートを通っているところだった。

以前通ったそれよりも今回のゲートは非常に大きく、一軍が丸ごと通れるほどだ。


『始まってしまうのか…本当に…』


蘭太は心で呟く。ずっと不安が拭えない蘭太は若干鬱気味になっていた。

そんな彼の心の呟きを聞けてしまう者が3人いる。


『まっさかあのアクネルってやつの予言通りになるとはな…結局馬鹿話で終わったなアホwっつって笑い者にしてやりたかったのに…!』


『本当にここまで発展するなんてね…。でもこうなった以上私達は私達に出来る事をするしかないと思うわ』


『俺たちに…出来る事…』


『蘭太、あなたは何のために力を使うんだっけ?』


『そりゃ大事な人と平和に暮らせる世界に生きるため…だけど』


『今それだけはっきりしてたら大丈夫じゃない?蘭太が余程捻れた方向に行こうとしなければ私達は蘭太に付いてくよ!』


『蘭太、お前の正義はお前の信念にあることを忘れるな。それで大体大丈夫だ』


『うん…。ありがとう。みんな』


『うんうん!さて!蘭太の心が大丈夫になったぽいので!ここで一つ目標を!』


『…ぇえ?うーん…【犠牲者最小限・最速終結』…かな』


『うげっ、これこいつ無茶するコースじゃん』


『そうだね、頼りにしてるよ?再生能力』


『蘭太君の身体の怪我くらい秒で全部治しなさいな。じゃないと絶対死んじゃうから、そうなったら貴方本当に許さないわよ』


『責任重大じゃねぇか…はぁ…おいおいそんな目で見んな!やるから!死なれちゃ困るからやりますって!』


変わらず3人は明るくいてくれる。それだけで蘭太には心強かった。

もうじきゲートから出る。戦場は近い。

その時。


『そういえば、門番さんがいない…』


龍界(あっち)もなかなか余裕がないのかもしんねぇな』


以前来た時には出口に鎮座していた門番龍が見当たらなかったことに不安を覚える。争いが激化しているのかもしれない。


ゲートから出た先は前に来た時よりも荒廃が進んでいた。

空の色は紫で以前と変わっていないが、地形の起伏が激しくなっている。おそらく戦いで地面がえぐられたのだ。

軍隊の人々もどこか動揺を隠せないでいた。さすがの彼らも龍界が元世界を模倣したパラレルワールドだということは認知している。それ故の動揺だった。

それは火鉈達も同じである。


「ここ…ほんとに並行世界なのか…?」


「そうだよ。荒れ果てた終末のような世界(ここ)が、龍族達の住む龍界」


かつては元世界と同じく空は青く緑が多かったが、龍族同士の戦いで荒廃した世界。それが今の龍界である。それも長きに渡る戦いではなく、ほんの数年でこんなザマだ。

そして、ハーフフェアリーはそんな龍族と戦争をしようとしている。もし戦火が元世界にまで及べば瞬時に第2の龍界の誕生となるのは確定に近い。

それが今蘭太が最も恐れていることである。

というのもあり…。


「火鉈。先に言っておきたいことがある」


「なんだ?言ってみな」


「俺はこれからこの戦争を最速で終わらせれるように動く。その上で今後行動するよ」


「OK。お前を信じる」


「ありがとう」


「龍族発見!戦闘用意!!」


蘭太が礼を言った直後、前方から大声がし、一気に慌ただしくなる。既に飛び立った者もいた。


「ちっ、いきなり戦闘かよ!ろくに地形もわかってねえし!戦い(やり)ながら見るしかねえってか!?ああもう!変身!」


紅蓮の炎に身を包み、装甲を纏った火鉈は「また後でな!」と言い残し走っていった。


『さて、俺達もいくか…どうした?蘭太、ルル・イーリア?』


見送った後、ブラッディアンが戦闘への参加を促すが2人は怪訝な表情をしていた。

何かが聞こえた気がしたのだ。空の方角から小さく悲鳴のような音が。

嫌な予感はするがきっと空耳だろう。そう無理矢理思いこむことにした。


『ううん…多分気のせい、大丈夫。行こう』


左手で右手首を掴み、体を右に捻って。


「三重共鳴、変身」


三色の円から現れたそれぞれの属性エネルギーで構築された龍が蘭太と融合し、装甲を創り出す。

そして蘭太は飛び、戦場に突入していった。



あッどうも、どらっごです。


早くも5章突入です。

…なんか展開早くね?()と思ったそこのあなた。ごめんなさい。筆者がまずそれを思いました。

いや…軍隊指揮系(?)って苦手なんですよね…。ならばと「うるせー!しーらーーねー!」の精神でさくさくっと進めたら字数ガタリナイという状況に陥ってしまったわけですねハイ()


と、とりあえずこれからあんまり走りすぎないよう努めますので最後までお付き合い願いますっ!


ではではまた!

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