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厄災(ドラゴン)と人×妖精(ハーフフェアリー)  作者: どらっご
第4章「過去、兵器、そして争い」
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47・・・「報復」


「壊れ…てる…」


いつもの場所、FG旧東京本部に戻ってきた蘭太達は唖然としていた。

本部のビルは途中からへし折れ、まるで廃墟のようになっていた。


「あ、みんな無事だったか!」


声のする方を向くと増沢が手を振っていた。

話によればこの建物は龍の突進を受けたのだという。


「とんでもない破壊力だったよ。それに彼らは目につくものから口に放り込もうとしていた。彼らは隔離されすぎて知性を失ってしまったのかな?」


「違います」


推測を述べる増沢を蘭太は即否定する。


「どういうことだい?」


「アレらは『抜け殻の龍』という異常な状態の龍です。多分普通の龍族はあんなじゃないです」


「ちょ、ちょっとまて」


火鉈が割り込む。


「さっきも言ってた…その『抜け殻の龍』ってなんだ?奴らは脱皮した後の皮も動かせるのか?」


火鉈の問いに蘭太は首を横に振る。


「違う。『抜け殻の龍』って言うのは簡単に言うと()()()()()空っぽの体だけな龍のこと。理性も思考も感覚もなく、ただ体に備わった本能だけで動く。…ってこないだ龍界に行った先で出会った方に教えてもらった」


「魂が…抜けた?」


「そう」


「マジかよ…外道じゃねぇか…命を弄んでやがる…!」


火鉈は頭を抱える。まるで死体兵器じゃねえか、と彼は思っていた。ある意味的を射ている。


「待てよ…魂が無いって、あの砂のように溶けていった現象と何か関係があるのか…?どうなんだ蘭太?」


「バリバリある。教えてもらった話じゃ、魂っていう自己概念のない『抜け殻の龍』は体に傷…大きければ大きいほど効果は大きいけど…を負っても体の修復が出来ずに崩壊してしまうんだと。だから『抜け殻の龍』は本来の龍よりは圧倒的に弱いことは確実」


その「抜け殻の龍」によって引き起こされた惨状を見渡し、一同は一気にどーん…と肩を落とす。


「と…、とりあえずこんなとこで立ち話もなんだ、仮設本部へ行こう」


増沢に促され、蘭太達は進む。



ーーーーーーーーーーーー



旧北米大陸。


「リーチャ。話が違うじゃないか?」


「いや知らない知らない!あたしは旧日本に出たって話しか聞いてないもん!」


館の前で男女が会話している。館の前には大きな広場があり、今ではだだっ広いだけだがさっきまでは龍族で埋め尽くされていた。


「『抜け殻の龍』がこんなところにも出るとは…これは下手をすると、いや必ず報復が起こる」


「どうして?襲ってきたのは骸同然の龍だってのに」


「今回来た龍族が()()()()()()()()()()()()()()人の方が圧倒的に多いからだよ。その人達はきっと『龍族全体が我々を侵略してきた』とでも思っていることだろう。ああ…残念な事だ。本来の歴史と異なる内容を教育で植え付けられている人々が絶望的に多い」


知らないとということは恐ろしいものだ、とブクリスは溜息をつく。

ハーフフェアリーの歴史は約200年前に終結した先の大戦に遡る。

そこではハーフフェアリーはかの龍族をも圧倒し、彼らを「龍界」へ追いやったと書かれているが事実はだいぶ異なる。

まず「龍族は龍界へ追いやられた」という部分からして異なるのだ。100歩譲って「追いやった」ことが正しいとしてもそうさせたのはハーフフェアリーでは断じてない。そもそもハーフフェアリーにそんな力はない。所詮は人間が強化されたに過ぎない種なのだから。

ならば何者がさせたのか。戦闘用妖精だ。

彼らによってハーフフェアリーは勝利し、彼らによって龍族は龍界へ「移動」した。

なぜか?戦闘用妖精が暴虐の限りを尽くし、龍殺しをも始めたからである。他の生命体が戦闘用妖精の目を掻い潜ってビクビクせざるを得ない時に、龍族では創造龍が大胆にももう一つ世界を作り、龍族を退避させたのだ。その時に他の生き物も混ざって移動したため、龍界はまるでパラレルワールドになった。

さて。結局何が言いたいのかというと。

誤った歴史によって、ハーフフェアリーは龍族より強いと考える愚か者が立場関係なく世界に蔓延っているということだ。

そして今回攻めてきた龍が、最も脆く弱い「抜け殻の龍」などと分かるはずもなく。


「龍族相手に人間の報復が効くと勝手に勘違いする老人どもが今頃わんさか湧いているさ」


そこに一人の従者が現れる。最近動き始めたある存在を監視するべく旧日本へ時折送り込んでいるのだ。


「ご苦労。『超えた者(エクシーデット)』の状態は」


「は。其の者は目視したところ装甲が三色に分かれておりました。おそらく三属性を持っているかと」


「3だと!?」


先程の達観した様子からがらりと一変、ブクリスが目を見開く。


「まずい。非常にまずい。こんな短期間で僕達で制御が効かない領域に近づいている…!あ、ご苦労だった。下がっていいぞ」


ブクリスは動揺を隠せないが、ひとまず従者を帰らせた。

暫く後に。


「リーチャ」


「何?」


「『超えた者』を抹殺する」


「いいけど…『王』の目を掻い潜る必要があるわ」


「怒りの厄災」が「超えた者」となった次の日、全厄災級能力者に王からの通達が出された。すなわち「『超えた者』への命への干渉を禁ずる」と。

だからまず、王の目が行き届いているこちらの世界で抹殺を図ることはできない。

ならば……。



ーーーーーーーーーーーー



「ところで…」


むすっとしたルルが左目が赤く発光している蘭太を覗き込む。その顔ですら可愛らしいのだから美人というのはずるいものだ。


「ブラッディアンはいつまで蘭太の中に居座ってるつもりなの??」


「あ」


「あ、じゃないもー!!私がどれだけ我慢してると思って!?」


「あー分かった分かった!やる!今やりますから!」


と、蘭太の体から赤い粒子が出る。

それは少し離れたところで人の形をとり、肉体を形成していく。

果たして出来上がったその姿は、髪色と目が赤いということ以外は蘭太と全く同じ物だった。


「これでよくね?」


「なんで蘭太と同じ体…?」


「いや仕方ねえんだよ。蘭太のDNA塩基配列を元に体を構築したんだからさ。別に元の体を作ることも出来なくはないが…、設計図がないぶんゼロからしないといけない。だるいだろ?…そんで、お前さんはどうしたら機嫌を直してくれんだ…?」


ブラッディアンが自分の体を作った後もルルのふくれ顔は続いていた。


「何か要望聞いてくれるの?」


「それでいいんなら…」


うーん、とルルは蘭太の肩に座って考え出す。そして時折首に体をくっつける。同化していないときにルルが考え事をするときはいつもこうである。彼女曰く「考えが迷走しだしたときに蘭太の脈を感じてるとなんだか落ち着いて考えを纏めれる気がする」とのこと。

そしてしばらくした後。ルルは蘭太の肩から飛び立ち、雷花となにやら相談をして。


「決めた!」


どうやら纏まったようだ。


「私達2人を人サイズにして!雷花さんからはOK頂き済み!」


「……マ?」


「ま!」


ブラッディアンが呆けた表情をする。だがどこか「先を越された」という様子だ。

結果彼は承諾した。


「あー、OK。足りない容量も増えるし良しとしよう。元には戻せないけど良いか?」


「「問題なし!」」


両手をルルと雷花に被せ、光を浴びせる。

光に包まれた2人はぐんぐん大きくなり、光が収まる頃には人間の女性と大差ない身長にまでなっていた。


「わぁーー!」


「すごい…本当に出来るんだ…」


「まあ俺にかかればざっとこんなもんだ」


2人はとでも嬉しそうだった。その2人を見た後、蘭太は気になったことをブラッディアンに尋ねる。


「ブラッディアン。『足りない容量』って何?」


「ああ、聞かれると思った。と言っても文字通りだ。お前は以前からハーフフェアリー史前代未聞の二重共鳴が出来るようになってるだろ?プラスで『怒りの厄災』も持ってる。それは当初想定・用意されていた容量を大幅に圧迫してたんだよ。まあ当たり前っちゃ当たり前なんだが。まず前例がない上いくら拡張したとはいえ一つの体でそんなにも抱えてんだ」


だから暴走への臨界も早くなっていたわけよ、と彼は続ける。


「その上今度は俺と共鳴して、記憶もあらかた復活。今は良いがこのままいけばお前は容量オーバー。変身するだけで暴走なんていう、本末転倒なことになる」


「う……」


「だが、ちゃんと解決策があるわけだ。俺とルルと雷花の3人にお前と同規模の体を作り、感情その他諸々の負荷処理を4分割する。近いうちにやろうかと思ってたんだがまさか先に頼まれるとは正直驚いた。といってもこれ最初で最後の切り札だがな」


そもそもなぜ蘭太達が蘭太の体のみで今までの処理をしてきたかというと、感情などの処理には人間サイズの脳が要るのだ。残念ながらルルや雷花の妖精サイズの小さな体ではとても処理などできない。ましてや体を持たなかったブラッディアンは論外。

しかし、この対策で暴走の危険は避けられたわけではない。


「容量は単純計算で4倍になったが気をつけろ。『怒りの厄災』のせいかお前は憤怒に駆られればいい一気にボルテージは上がっていく仕様らしい。何かしら対策はとるがこれは心得ときな」


「分かった。ありがとう。その時は頼りにしてる」


「あー、まあ演算でどうにかするわ。任せとけ」



……………その夜。


皆がすやすやと寝息を立てている中、仮設施設のそとに佇む雷花がいた。


「おぅ、こんな夜に外にいちゃ風邪引くぜ?」


気づいたブラッディアンが来た。夜の空気を読んで静かめの声である。


「ねえブラッディアン…」


「なんだぁ改まって」


「蘭太君は大丈夫なのかな…?」


「いきなりどうしたよ?」


「ん…、ふと思っちゃったの。いろんな人からの希望っていう重圧の中で戦って…その上お兄さんが敵になっていたときて…。彼は無理してないのかなって…」


「してるだろうな」


「どうしてそんなに軽いの?」


「そりゃ、重く考えたところで無駄だからさ。俺だって無駄に200年以上生きて来たわけじゃねぇぜ?」


「無駄って…」


「だったらなんだ?引き返させるか?あいつは拒むだろうし、何よりあいつに託した者たちの顔が浮かばれないが」


「そんな事はしないわよ…」


「そうだろ?だったら無理してでも進まなきゃならん。そのための力だ。俺らは」


「私はあまり彼の役に立ててる気はしないわ…」


「アホ。思いっきり役立ってるわ。そんくらい気付け。能力は然りだが、何よりお前にしかない…うーん、なんつーか俺が言うのもアレなんだが…『包み込む力』?包容力っていうのが合っているのかは分からんがそこらへんだ、うん。体を作って蘭太を客観的に見て分かったが、あいつはお前を姉さんを見るような目で見ている」


「え…姉…?」


「語彙力が足りねえから上手く言えないが…あー!そんなもんだ!だがな、これだけは言えるぞ。お前があいつらを支えている。メンタル面で!」


「心を支えてる…?」


「そう」


うんうん、と頷いた直後ブラッディアンは真剣な表情をとる。


「……これからの戦いはもっと厳しくなる。悔しいがあのアクネルってやつの捨て台詞が現実になる予感がする。そうなれば…考えたくはないが俺らの中で死ぬやつも出るかもしれん…。その時には頼むぜ、雷花さん」


ぽん、と肩を叩き、ブラッディアンは喋って疲れたのか欠伸をして建物へ戻っていった。

しばらくぼーっとしていた後、雷花は自分の頬をぺちっと叩く。


「うん、私も頑張るよ…!」


覚悟はあるはず。彼らと一緒に「大切な人と共に生きていける平和な未来」を掴み取る。

そのために彼らを支える。それが自分のする事だ。



…………翌日。



「おぉいみんな!見てくれ!大変なことになった!」


増沢がFG旧東京本部のメンバーを全員集め、映像を見せる…が、生憎後ろ側にいた蘭太達にはよく見えないので代わりに耳をすませると…。


【我が国は各国の要請に応じ、諸外国と肩を並べ龍界への報復行為を行うことを決定した。ついては国民の諸君に徴兵を起用する。対象は禁忌能力者、危険能力者、そして、厄災級能力者であるーーーーー】


……は?

その放送は龍界へ戦争をけしかけるものであった。

そして地味に召集がかけられていた。


「戦…争」


放送や周囲の声でうるさいはずなのに、重く、静かに呟いた蘭太の一言がなぜか鮮明に聞こえた。



どうも、どらっごです。


多分これで4章は終わりかな…と思います。早い。いや早いですね!?

次の章は多分というか絶対戦闘場面が増えるのでいっぱい妄想膨らまして頑張りたいと思います!

(多少の流血場面も文字による緩和でぐろさは抑えられるから大丈夫…うん)


あと、ブラッディアンについて。

彼の能力は大まかに「血肉」関連の能力と、自立兵器ということによるすごい(語彙力)演算能力です。

今話の肉体生成とルルちゃん雷花さんの身体伸長はその能力の応用ですね。


…とりあえず、次話から2人は手のひらサイズではなく人並みサイズということだけ覚えていただければな、と思います。


ではでは、また。

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