4・・・「想い」
『まもなくー4話、4話が到着します。危険(?)ですので黄色い線の内側にてお待ち下さい』
さて、行きます。
戦闘が始まってから10分が経過していた。
「がはっっ!!」
殴打撃を受けて飛ばされた蘭太が堤防の壁に激突する。その蘭太の口からは血が流れている。
そしてそのままずり落ち、足と腕をだらりとしたまま座る形になった。
「蘭太っ!こっちも変身しよう?!このままじゃ死んじゃう……!」
隠れているルルが焦るように話しかけてきた。
焦って当然だ。
現在蘭太は死に近付きつつある。
いくら変身者の装甲を突破できる攻撃があると言ってもそれはあくまで微々たるものであり、生身の者と変身者の差は埋められない。
そしてその差とはダメージの蓄積量である。
ライト達は装甲のお陰でダメージを緩和しているが、蘭太は偶発的に当たる攻撃でも一切緩和出来ずに直にダメージを受けている。
そんな状態で10分も戦っていれば蘭太が劣勢になるのは当たり前だ。むしろ10分も持っていることが素晴らしいほどだ。
せめて蘭太も変身をすればこんなことにはならなかったはずなのに。
だがどうしてか変身できない。
だが、ルルに答えた蘭太の言葉は普通ならありえないものだった。
「なんで?思わぬ機械じゃないか?せっかく災いが死ねるんだ。そんなことする意味が分からない」
「…え」
ああ、なんということだろう。蘭太が変身できない理由は蘭太自身にあった。
ルルが生きようとしているのに対し、蘭太は死のうとしているのだ。これでは全く理念が一致せず、変身することができない。
「それに俺が死んでも体は別なんだからお前が消えるわけじゃない。それにさ…」
「もうわからないんだ、自分の存在意義が、自分の生きる意味が…」
「嘘…嘘よ、そんなこと言わないでよ蘭太……」
本などの娯楽ですら蘭太にとっては気休め程度にもならなかった。
ルルは自分の心が抉られるようだった。ずっと一緒にいたはずなのに蘭太とはこんなにも考え方が違ったのか、と。 自分ではだめなのか、と。
確かに蘭太は自らの能力によって引き起こされた過去の記憶から萎縮し、自分を「災い」と呼ぶまでに落ちてしまっている。だから辛いのも分からなくもない。
でもここまでだとは思っていなかった。今までの彼の行動は全て死ぬためだったのか?だったら自分は何のために蘭太と生きている?
「さてと、手こずらせてくれたが…結局最後まで変身せず…か。こりゃダメだな、殺す」
近くに来ていたライトがロッド状の武器を生成し、蘭太の首に向けて振り抜くーーーー
『でも、私はそれでも蘭太と生きたいよ……。』
それでもルルは蘭太が死ぬことを認めたくなかった。
だから祈った。「何でもいい、蘭太を死なせないで下さい…」と。涙ながらに。
そこに、まるでルルの想いが届いたかのように炎の塊が蘭太とライトの間に激突し、炎とともにライトがぶっ飛ばされた。
炎の塊が解けた中から現れたのは、共鳴変身した火の能力者、影宮火鉈だった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
数分前。
「なんか静かですねぇ、街の中は生活音以外では静かですし…」
「ちょっとやめてよ…誰かARにやられて犠牲になりそうじゃない…」
どこかでありそうなフラグ発言をした舞に対し、彼方が制止をかける。
火鉈たちが巡回任務を始めてから数分が経っていた。現状街に異常なし。
「おーい、確かに今まで特な事は起こってないけど気をぬくんじゃないぞー」
だんだん任務から脱線しかけていた舞と彼方を剛牙が注意した時。
ドゴォォォォォォォ……ン……
遠くで重く低い衝撃音が響いた。
「ハッ!?みんな、行くぞ!」
何かが起こっている。そんな嫌な予感を胸に火鉈達は駆け出した。
その先には橋があり、下にあった光景は……
「なにあれ?!男の子と、8人の光の能力者?戦ってるの??!」
見た途端雷花が驚きの声を上げた。おそらくほかの3人も同様のことを思っていただろう。だが火鉈だけは(正確には火鉈とフレイム)は別の疑問を抱いていた。
すなわち、どうして生身で戦っている?と。それ以前になぜ変身しない?
少年は血を流しているのが見える。見るからにリンチ状態。
少なくとも変身して戦えばあそこまでにも至らなかったというのに。
このまま変身せずに放置しておけばあいつは死ぬ。早く助けなければ…!
だが、風に流れて聞こえた眼下の少年と妖精の会話によって、火鉈の焦りは怒りへと変化した。
「……れに俺が死んでも体は別なんだからお前が消えるわけじゃない。それにさ…」
「もうわからないんだ、自分の存在意義が、自分の生きる意味が…」
「嘘…嘘よ、そんなこと言わないでよ蘭太……」
その会話で人側は男だが妖精側は女という変わった組み合わせということはわかったが今はどうでもいい。
『てめぇふざけんなよ…。ペアの想いを無視してるじゃねぇかゴラァ……』
「……フレイム」
「わかった」
橋のガードレールに足をかけ、
「お前らには光の能力者どもを任せる!共鳴変身!!」
火鉈はフレイムと同化し、紅蓮の炎を纏って少年と男の間に乱入。
男の方を炎を纏った脚で蹴り飛ばした。
なお蹴り飛ばした時には変身が完了していた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
乱入した火鉈はゆっくりと蘭太に話しかける。
「よう、はじめまして。大丈夫か?」
挨拶と状態確認を同時にしたが、蘭太から帰ってきた言葉は…。
「いらない…」
「あ?」
「助けなんて、要らない!!」
拒絶の答えだった。しかし今の火鉈にはそんなことはどうでもよかった。なぜなら尋ねずにはいられない問いがあったからだ。
「あっそ、じゃあ聞こうか?なんでペアの子はそんなに泣いてんだ?」
「………?……ッ!」
蘭太は一瞬きょとんとし、見た。
いつのまにか自分の胸元の服に顔を埋めて声を上げながら泣いていたルルの姿を。
そして顔が青ざめる。なんてことをしたんだというふうに。
「そんなお前に一発入れてやるよ…!」
近づいた火鉈は右脛より下の部分の装甲だけ消して、
ズガッッ!!
と蘭太の左頬を蹴り抜いた。
「がふあっ!」
「このクソバカヤローが!!!」
怒声が響いた。心からの。それだけは絶対しちゃならんだろ!といった悲鳴に近い声が。
「大事なペアの子泣かせて?その子置き去りにして?自分だけ死んで逃げようとかふざけんなよ!?死にたい奴は大体『生きる意味とか希望がない』とか言いやがるが!お前にはすぐ側に生きる意味あんだろ?!お前が生きることを1番望んでる奴が隣にいるだろ!なのになんで死にたがる?!どうしようもないバカだな!?」
それからしばらくまくし立てまくるが、感情的なのが落ち着いてきたのか、だんだん火鉈の怒声も静かになり、
「お前が死にたいって思うのは好きにしろ。けどな、ペアの子の意思を無下にするのだけは絶対ダメだ…必ず後悔する。…それに、俺らは生憎フェアリーガーディアンズの肩書きがあるんでな。お前が拒んでも会ったからには助けるぞ」
そう締めくくり、右脛の装甲を戻し火鉈は仲間とライト達との戦いに混じっていった。
しばらくして……。
「ねぇ、蘭太。気、変わった?」
未だ目に涙を浮かべるルルが蘭太に弱々しそうに問いかけるが、当の本人は蹴られた左頬をさすって難しい顔をしていた。そして、
「はー…、ほんと最悪だ」
あれでも届かなかったのか…、とルルは絶望しかけたが、続いた言葉がそれを止めた。
「1番近くにいるルルの気持ちさえ、分かれてなかったなんてな…」
「蘭太…?」
「あーあ、もうバカみたいだよ、いやバカか。サイテーだよ、俺…。なぁ、ルル…。やり直せるかな?力を使ってもいいのかな」
届いていた。反省していた。そしてやり直そうとしていた。そのことがルルには嬉しかった。
「うん、やり直せる。正しく使えればいいんだよ?」
「『正しく』…。そうだな…。そうすればこの力に恐れず済む…か!」
ーーーーーへえ、『正しく』、か。なあ『正しい』ってなんだァ?答えてみろよーーーーー
どこからともなく唐突に蘭太とルルの脳に声が響いたが、彼らは驚かないどころか、速攻で、
「「そんなの、自分の信じる正義にきまってる」」
と答えた。
ーーーーーは?ああ…ふふふ、あっははは!!そうか、面白い答えだなぁ!!いいぜ、見せてみろよ、その正義ってやらをよ!!ーーーーー
脳に響く声は聞こえなくなった。
蘭太は立ち上がる。
ルルと片手同士を合わせる。
と、
「あ、そうだ、ひとつだけ約束。もし俺がまた道を踏み外しそうになったら、ルルが引き戻してくれるか?」
それは、蘭太がはじめてルルの心を頼った質問だった。
「もちろん。じゃあ私が踏み外しそうになったら蘭太が引き戻してね?」
「ああ」
二人は静かに声を合わせ、言った。
「「共鳴、変身」」
ヒョォォォォフッフッフイィィィィエええええエィィィ!!!!
すみません後書きだからって調子乗りました、ごめんなさい、といきなり謝りから入ります、どらっごです。
あれー?おかしいなー。戦闘シーンのはずなのにほとんど会話になっちゃった(´・ω・`)
あとですね、登場人物もそうなんですけど人って出来事ないと心情変わらないじゃないですか、でもねー出来事を考えるのほんと辛いんですよー。
じゃあ何で書いてんだ?って思ったそこのあなた。その疑問、答えます。
書き始めた当初はそんなこと思ってなかったんです!!(泣)
いけるいけるー(笑)って思ってました!(泣)
でも完結させるし?!やりきってやりますよ!!?
以上ど素人筆者どらっごでした。
ではでは、また。