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厄災(ドラゴン)と人×妖精(ハーフフェアリー)  作者: どらっご
第4章「過去、兵器、そして争い」
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44・・・「散ることは許されない」


「うう…暇である…あいつはまだなのか…」


龍界。駆逐派拠点に構えた城の一室で退屈が我慢できずごろごろ転がっているのは意外にもイクスティクス。

今の彼女を見るものはいない。だがそれは相手をしてくれる者もいないということ。

そして現状唯一の相手である者も元世界へ行ってしまった。送る時には考えてもいなかったが、やはり1人は寂しいものだ。


「暇である…暇である…暇・で・あ・るぅ!」


側から見ればいい年した女がガキのように駄々をこねている。だが、悠久の時を生きる死滅龍の今は「いい年」なのかは分からないところ。


その時、外から龍の声が聞こえた。

窓を開けてみると、龍が飛翔している。ぱっと見龍族が飛んでいるようにだけ見える。

イクスティクスは龍力サーチをかける。

果たして反応は…ない。


「抜け殻か」


抜け殻の龍は魂を持たない。故に魂から発せられる「龍力」というものを持たないのだ。

だから抜け殻の龍か否かは龍力サーチをかければ判別できる。

イクスティクスならサーチせずとも分かるだろと思うかもしれないが、あまりにも多すぎていちいち覚えていられない。


「彼奴らも暇そうにしている…」


『ならもっと送り込みゃいいじゃねぇか。元世界の各所にな』


急に男の声が内より響く。同時に体内に何かがいるような違和感が居座る。


「結構送り込んだ筈だ」


『足りるわけねぇだろ。バカか?それにお前の送り込んだ所は向こうで言う小さな島国の【旧日本】。狭すぎるにも程がある』


「送り込みすぎは禁物だ…向こうの世界が滅びる可能性もッくぅ!?」


突然体が苦しくなる。喉が詰まり呼吸が困難になり、倒れ込む。


「かは…ううっ……」


『俺に逆らうつもりか?』


「そん…なことは…ありません…」


苦しさが和らぐ。失ったものを取り戻すように大きく空気を取り込む。


「はあ…はぁ…」


『俺はいつでもお前を殺すことが出来る。そう契約したからな。せいぜいお前は死なないために俺の言うことを聞け。いいな?』


「…はい」


声が消え、違和感も消失する。残されたイクスティクスは言われた通り、城を出てゲートを複数作り、前回以上の量の抜け殻達を送り込んだ。


「…今はこれでいい」


振り返ったイクスティクスの表情は決して晴れやかなものではなかった。



ーーーーーーーーーーーー



荒療治が始まった。

反動を完全に無視した剛撃を潜り抜け、アクネルはまずネイルの腕を掴んで足を蹴るがネイルはビクともしない。


『さすがに蹴り程度では効かないか…』


そこに返しとばかりにネイルが頭突きをかます。腕を互いに抑えあっているため避けられない。仕方なく受ける。

鈍い音が響き、衝撃が伝わってくる。若干クラっとした


これで攻撃手段は尽きてはいない。ネイルの翼がまるで腕のように広げられた。


「やっぱ持ってるのな!龍族の翼は!」


自らも小さく畳んでいた翼を広げて迎え撃つ。

この龍族の翼は、一部の龍人だけがもつ第2の腕である。

龍族の中には既に自らの翼を腕のように扱う種も存在する。そういうもの達が人間と関わり、交配した時に生まれるのがこれである。

なぜならば何がそう判断したのかは分からない(強いて言うなら「進化」が)が、分けた方が格段に便利だからだそうだ。

この翼はある程度縮小させることは出来るが消すことは出来ない。よって蘭太は施設から出て学校に通い出した時、その翼のせいでいじめを受けていたが当時の彼は世界に絶望をしていたため大したことと受け止められず彼の記憶にすら残っていない。


そして今度こそすべての攻撃手段を封じたが、ぐぐぐっと圧を加えてくる。

この前では埒があかない。アクネルはわざと力を抜き、後方へ倒れ込む。

圧を加え続けていたネイルが前のめりになったところで思い切り横へ投げつける。


かなりの速度で堤防と衝突したネイルだが、何事もなかったかのように立った。今の彼には意識がなく、それ故に痛覚も存在しないからだ。

そのネイルに弾丸が襲いかかる。追撃のためアクネルが放ったものだ。

対しネイルは弾丸を手で握りつぶし、消滅させる。そして、あろうことか剣を投擲してきた。当然ながら弾かれる。

代わりに腕に蒸気を蓄え始める。おそらくアレをするために剣が邪魔だったのだろう。

ここからが正念場である。


間合いを詰めたネイルが頭部目掛け繰り出した攻撃をアクネルは武器で防がず頭をひねって躱し、距離をとって鎌を投擲。肩程まで蒸気が溜まっていたネイルの左腕に当てる。

すると、まるで爆弾のようにネイルの左側が大爆発を起こす。止んだ後、また腕に蒸気が溜まる。


「そう簡単に充填できると思うなッ!!」


指でバルディアムを操作。再び当てると今度は先ほどよりは弱い爆発を起こす。


今のネイルは溜まれば溜まるほど威力の上がる起爆性水蒸気を腕に纏っている状態だ。あんなのをまともに食らえばただじゃ済まない。余裕でワンパンコースだ。

さっきのようになんらかの刺激を加えられると起爆するのだが、厄介なのは起爆ラインが分からないのと、使用者の任意でも起爆可能ということ。意識のない今の彼が任意で爆発させることはおそらくないと思いたい。

言わば今のネイルは動く爆弾である。


だが、兄弟であり同じ技を使えるアクネルは対策を知っている。そして危険性も知っている。


対策は至って単純。どうにかして適宜自分に被害が及ばないように溜まった蒸気を炸裂させ、貯蓄が少ないうちに攻撃する。逆にこれしかない。


ついに、舞うバルディアムを掴んで動きを封じたネイルがこちらに視線を向け、駆けてくる。その勢いを殺さぬままバルディアムを投げつける。


「ッ!」


まずは避ける。次に右拳を打ち出すネイルの攻撃を避けて左側に回り込んで体を抑えた後、右腕を殴る。

右腕との間にネイルの体を置くように隠れると、轟音と共に爆発と爆風が吹き荒れる。

好機。と思ったのだが、油断していないようでしていたようだ。まだ左腕があった。

擦り付けるように左腕を押し付けられ、起爆。アクネルは吹っ飛ばされるが、しっかり2本の足で立ち、バルディアムを自身の方へ飛ばして回収。


『実際やるとなると厳しいものがあるな…』


実はアクネル、起爆性水蒸気を纏う相手との模擬戦はしたことはあるが、実戦かつ力のコントロールを失った相手との戦いをしたことがない。まああるほうがおかしいのだが。


『今となっちゃすこぉし後悔してるが…目的達成までは…』


今のやり方でも攻略はできなくはない。だが今は何より短期決戦を求められている。アレは長く続けていてはいけないものだ。

やむなく作戦を変更する。

バルディアムを狙撃銃形態にし、懐から弾丸を取り出して装填。


loading cube!


「本当はしたくなかったな…。笑ってくれ。こんな卑怯なやり方をする兄をな。けど、時間がない」


release!


撃ち出されたエネルギーが透明な箱を作り出し、ネイルを閉じ込める。

もう一弾、弾を取り出し、装填。


loading burst!release!


そのキューブ目掛け放ったエネルギーは内部に入るとネイルを巻き込んで激しく弾ける。

アクネルはこの攻撃を過去には結構使用していた。なぜなら今このように放っておくだけで相手に継続ダメージを与えられるから。だがある時を境にめっきり使用しなくなった。


しばらく弾け続けた弾丸が消え、キューブを消滅した後、光に包まれたネイルが残る。

装甲が消え、青と黄色妖精がはじき出され、膝をつき、倒れる。その時にネイルは口から大量の血を吐いた。よく見ると両腕が血に濡れている。

起爆性水蒸気の何が危険か。それは使用者の体に莫大な反動が返ってくることである。そしてその反動をモロに受けるのが蒸気を纏う腕。過去には使いすぎで腕が壊死し、やむなく切除しなければならなくなった事例もある。今回はなんとか間に合ったようだ。


「蘭太!!」


情報提供者が駆け寄ろうとするが、アクネルは邪魔するように彼らとネイルとの間にリリースウォールを撃ち込む。


「何しやがる!」


「俺はまだこいつに用がある。下がってろ」


視線をネイルに戻し、歩み寄ると声をかける。


「おい、立て」


「ぅ…」


「立て」


震える程度にしか動けないネイルの頭を掴み、無理矢理こちらに向ける。


「くぁっ…」


「お前こんな程度でくたばんのか?最悪だな。お前を残して死んでった村の人達が浮かばれない。背負ってる物を考えたらこんなとこで倒れてられるか?普通」


「だ…ま、れ…!」


拳を繰り出すが速度もなく、ぽすっという音もない。

アクネルが手を離すとネイルは再び地に伏せる。

ネイルの横に動くと脇腹を蹴って仰向けにさせる。


「ごはっ!」


「呼吸しやすいように仰向けにしてやったぞ。感謝しろ」


けほ、けほ、とむせる弟の体を改めて見ると、そこかしこに暴走とやらの反動の跡が残っている。


しばらく経ったがネイルは立つ気配がない。立てないのか。あるいは諦めたのか。


「ぁぁ…ぅぐ…」


いや、立とうとはしている。腕を支えに。だがそのたびに激痛が走るのだろう。支えにしては崩れ落ちてを繰り返している。


『腕を支えに立とうとする、か』


手を握っては開いてを繰り返し、両腕を切り落とされてもなお敵に食らいついていたいつかの記憶を思い出した。


『けどお前には腕を失くしても立つくらいの気力は持って貰わなきゃな』


悪いな、と呟き。

アクネルは大鎌形態のバルディアムでネイルの右腕を切り落とす。


「うッぐガぁぁぁぁぁ!!!」


悲鳴が轟き、血の池が出来る。だがこれで力尽きるようではまずイクスティクスには勝てない。


少し距離を置いて、狙撃銃形態のバルディアムをネイルへ向ける。


「残念。すごく残念。見損なったぞネイル。お前はそうやって逃げるんだな。そばにいる2人を、お前のことを心配してるあの4人を置いて逝ってしまうんだな」


銃口に光が集う。

その光を霞んだ視界で見る蘭太は倒れたルルと雷花を見る。


2人をを置いて…逝くのか?

確かにこのまま逝けば楽に…

否。

逝けない。楽になれる訳がない。

こんな所で逝けるわけがない!


「ッく…くおおおおお!!!」


残った腕で地面を叩き、反動を利用して回転。さっきまでいたところをエネルギー弾が穿つ。暴走の反動でボロボロになり、微細な傷がいくつも出来た腕からは血が飛び散る。


「…ん?」


「い…たぃ…ィ痛い!!」


思ったままを吐き出す。


「痛いけど…死んじゃいそうだけど…!逝けるわけがない…置いて逝ける訳が…ない!」


全身が燃えるような激痛にも襲われながら蘭太は傷口を浄化作用で塞いで立ち上がる。その蘭太に試すようにアクネルは銃口を向ける。


「よく立ったな。ご褒美だ」


発砲。

躱そうと足に力を入れた途端、視界が歪む。

失血しすぎていたようだ。


『やば…』


かぁぁぁん!!と乾いた音と共にエネルギー弾が弾かれた。

そしてふらついた体を何者かに支えられる。

見ると、舞がいた。

前を見ると、アクネルと自分を塞ぐように3人がいた。「割り込むと思ったよ」とアクネルは言った気がする。


「そうです。やっぱり貴方は立っていないとらしくありません」


体制を整えられた後、舞は離れる。

実を言うとまだ支えてほしい。今にも崩れ落ちそうだが、意地で堪える。


ーーーーーなんで、立てるーーーーー


その時声が響いた。蘭太の中で。


ーーーーーお前は満身創痍だ。死にかけだぞ。いくらあの2人の為とか、禁忌のやつらのためと言ったとしても、そんな風に立てるわけがないーーーーー


『分かってないな…ブラッディアン』


もうすでに朦朧とした意識の中、なんとか蘭太は言葉を絞る。幸い精神でブラッディアンと会話するため言葉は滑らかに伝わるはずだ。


『自分のためとか…そういうのじゃ、ない。俺の想像に過ぎないけど…ルルと雷花はきっと俺が居なくなったら寂しく思うかもしれないし、思わないかもしれない…でも寂しく思われるのなら…それは阻止しないと…さ。それに…まだ俺は自分の力の意味を知ってない…そんなまま死ねない』


必死に死の手を振りほどき、蘭太は続ける。


『俺さ…夢を見つけたんだ…。大切な人と一緒に過ごせる、そんな平和な世界に生きたいな…って』


ーーーーーそんな力を持っておいてそんなちっさい夢なのか?ーーーーー


『ちっさい…?十分大きいと思うよ?少なくとも俺はそれでいいから』


体が限界を迎えた。

ふらっと傾き、舞に支えられた蘭太は目を瞑り、耳を澄ましても中々聞こえないほどの微弱な呼吸しかしていなかった。



ーーーーーーーーーーーー



蘭太とのコンタクトが途切れた。


「俺は…どうすればいいんだ…?」


どこまでも馬鹿だ。「愛人と平和に暮らしたい」なんて理由のためにあそこまで出来る訳が理解できない。


「なんであんな小さなことのために…」


「俺たちは全然小さくないと思うぜ?兄貴」


はっと振り返るとかつての仲間、同じ戦闘用妖精の残像がいた。


「お前ら…」


「兄貴。いつまでそんな暗いとこで縮こまってんだ?何を迷ってるんだ?」


「俺は…」


「蓮藤蘭太は立ってる。自分の信念と夢を貫くために。そして俺らは戦闘用妖精。人間に作られ、人間をサポートする存在だ」


「俺らはその人間に裏切られたんだぞ!?お前らはなんとも思わねぇのか!?」


「思ってるさ。悔しいって。でも兄貴は俺たちと違ってやり直しができる。もう一度何かを信じることだって出来る…!」


「……」


「あの子には信じる価値がある。だから兄貴もも生かしたんだろ?あの子を。だったら信じてやれよ!手を貸してやれよ!失ってからじゃ遅いんだ!!」


失って気づくこともあるかもしれない。

でもそれは大概後悔だ。「あの時ああしておけばよかった」「あの時伝えておけば良かった」「あの時もう一度会っておけばよかった」といった。


ブラッディアンはようやく理解した気がした。自分がなぜ精神世界で蘭太に完敗したのか、なぜ自分はこんなに縮こまっているのか。

それは、恐れているにすぎなかったからだ。自分が何かを失うことを。そして恐れすぎて自身の下らないプライドにすがりつき、失うことを恐れ何も背負うものを持たないようにしてずっと今のように縮こまっていたのだということを。


「…ふ」


馬鹿馬鹿しい。昔の気高い自分はどこへやら。いつのまにか自分は自称最強の弱者になっていたようだ。

ブラッディアンは立つ。


「アホみたいだ。最後の一押しをまさか先にいった兄弟にされるとはな」


彼の表情にはいつも通りの不敵な笑みが戻っていた。

その様子を見て満足したのか、仲間たちは姿を消していた。


「いいぜ、賭けてやる。お前に手を貸してやる!」


黒い空間が塗り替えられるように白くなった。

そしてブラッディアンの体が光に包まれ粒子となって消えていった。


どうも、どらっごです。


多分初めての1日に複数話投稿ですね。

ストック切れました!(爽やかな顔で)(ストックといっても今話と前話分しかない)


キリがつくとこまで書くんだ〜ってつらつらと書いてたらまぁびっくり長い!


さてさて、次はなんか楽しくなりそう(主観)なので生き生きと(文章力置き去り)描こうかなって思います!


ではでは、また!


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