42・・・「再会」
旧北米大陸、とある館。
「ブクリスー。『王』から連絡ー。『龍族が侵攻してる。可能ならば加勢願う』ってー」
黙々と本を読む男性に若干チャラ目の女性が話しかける。
ブクリスと呼ばれた男性(見た目は20代後半、眼鏡をかけているが伊達のようだ)は視線だけを女性に向け答える。
「場所は?」
「旧日本よ」
「なら関係ない」
そして本へ視線を戻す。
「あんたほんと本にしか興味ないわね。一直線すぎて災いよ、もう」
「その災いの効果は素晴らしいよ。一度食い溜めれば丸一日飲まず食わずで本に集中できる」
「特殊能力の使い間違いかしら」
「失礼を言うな。平和な世界における平和な使い方だ」
「その平和が今崩れ去ろうとしてるんですけど…」
「旧日本がどうなろうと構わない。僕が動くのは少なくとも旧北米大陸に侵攻の手が伸びたときだ。直に来そうな気もするけどね…おや」
ちょうど本の最後のページをめくったところだった。
「結局それどんな内容なの?」
「何のことはない。ただの小説さ。ただ…ちょっと変わった『敵の攻撃を無力化できる人』のお話だ。さて、読んだことだし食すとしよう」
ピキィンという高い音を奏でながらブクリスの右目が金色に輝く。
すると手に持つ本が光に包まれ球体になり、そのまま口に入っていった。
ごくんと飲み込んだブクリスは手に本を具現化する。A4サイズの紙が何重にも重なり、辞書に匹敵するほどの巨大さを持っている。
これは次の読む本…ではない。今まで彼が溜め込んできた本達の数々だ。
見開き1ページに取り込んだ物達の情報が書き込まれている。
そして今まさに新たなページが追加された。
それを確認すると本を消し、ブクリスは更なる本を取りに本棚へ行く。
「んあぁぁ暇ぁぁぁ!!!」
そこで女性が駄々っ子のようにじたばたし出した。
「ならば君も本を読みたまえリーチャ。読書は時間を忘れさせてくれるぞ」
「そぉいうことじゃなぁぁいのぉぉぉおお!」
「はあ、ならば好きにしたまえ」
ブクリスは歩を進めた。
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「ん…あ…」
「あ、起きたよ、蘭太」
目覚めたブラッディアンに真っ先に反応したルルが蘭太に言う。蘭太達は既に変身を解除している。
「俺…てっきり消滅したもんだと思ってた」
蘭太はちょっと意外そうな顔をしたが、すぐに笑みを戻した。
「お前そんな柔じゃないでしょ。…それで…どうかな?力を貸してくれないかな…?」
「……」
ブラッディアンは黙り込んだ。
「…少し時間をくれないか?若干整理が追いつかなくてさ…。体は返すから」
事実、心はまだ固まっていなかった。何より完全に自身の想定外なことが多過ぎた。
「分かった。待ってるよ」
蘭太が立つと、体は光に包まれる。肉体へ戻るのだ。
なおルルと雷花はどうやら精神世界と肉体の外を自由に出入り出来るようになっているようで、光には包まれていない。
しばらくすると蘭太の姿が消える。
「あのさ、ブラッディアン…」
気まずそうにルルが口を開く。
「なんだ?」
「あの…、蘭太を助けてくれてありがとう。あなたがいなかったら蘭太は死んでた」
きっとじゃなくても動物級の件のことだろう。既に忘れていた。
だが、ブラッディアンはふっと笑った。
「ふ、いつ以来だろうな、感謝されるなんて。…どういたしまして」
そして彼は精神世界の奥へ進んでいった。1人で心の整理をしたいのだろう。
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「んぉ…」
蘭太は目を覚ます。
目の前を大きな川が流れていた。上には大きな橋…のはずが壊れていた。最悪倒壊は免れている。
「ここは…あ、あそこか。火鉈達と会ったところだ」
そう。あの日ライトなる光の能力者達と非変身状態で戦い、あわよくば死のうと目論んでいたところを火鉈に綺麗に蹴飛ばされたまさにその場所。
あれから…どれぐらい経ったっけ。
「よう。なんだ?思い出にでもふけってんのか?」
「うぉわぁ!!」
突然だった。思いっきり飛び上がった。
すぐ隣にいつのまにか青年がいたのだ。
改めて、誰だろう?と青年を見る。
いや待て。見覚えがある。確か…昔…龍界で…。
「ッッ!??」
息が詰まりそうだった。
「ンあ?何だよゲテモノみたいな反応しやがって…久しぶりの再会だってのにぃ」
この人は…この男は。
「兄……さん?」
掠れ声しかでなかった。
その男は蘭太=デュ・ネイルの兄、デュ・アークに酷似していた。
果たしてその男はにんまりと。
「お。嬉しいねぇ覚えていてくれたのか。そうだよ。けどちょっと違うな…」
そしておもむろに片手で棍棒のような狙撃銃を構え、振り下ろす。
「!?」
咄嗟に避けた蘭太に男は感嘆する。
「ほう?よく避けたな」
「いきなり何すんだ!」
「何って叩き潰す以外あるか?」
いやそういや話途中だっけな、とぼやく男。
「仕方ない。大抵のやつは名乗る前に死んでるから必要なかったんだけど紹介しよう。俺は…」
「デュ・アーク」
「であってそうじゃない。今の俺は死滅龍イクスティクスの直属側近駆逐派騎士、アクネルだ」
「駆逐…派?」
駆逐派。
龍界で創造龍カルナが言っていた。
端的に言えば殺す派。何らかの目的のために主に魂が存在しない体だけの龍、「抜け殻の龍」を用いてひたすら殺戮を行う。らしい。
その駆逐派にまさか人間がいたとは。いや、それよりも問題なことがあった。
「兄さん…なんで…?」
わなわなと蘭太の体が震える。
「なんでイクスティクスを倒しに行ったはずのアンタが逆にイクスティクスに付いてるんだ!!!」
そうだ。本来ありえない。
兄はイクスティクスを倒すために村を出て行って、帰らぬ人となった。
もし生きていたとしても、今目の前の出来事がありえたとすれば裏切ったとしか思えない。
何を?自分を、村のみんなを、だ。
「さぁ?なんでだろうな?倒してみたらわかるんじゃないか?…ほら、来いよ。戦おうぜ?逆に俺はそのためににここにいるようなもんだからな」
「く…」
迷った。今変身すべきなのか。だが、中にいる2人も気持ちは同じだったらしい。ゴーサインが出た。
キッとアクネルを睨む。
「絶対アンタから吐かせてやる!二重共鳴、変身!」
水流と電撃が走り、青と金色の装甲を身に纏う。
「ほう。それがお前の身につけた力か。確かハーフフェアリーの『共鳴変身』の類だっけ?装甲ねぇ。ずるいもんだ」
1発の弾丸を狙撃銃に装填。すると。
「Loading armor!」
狙撃銃からそんな音声が鳴る。
銃口を前に向けて、
「鎧は双方付けた方がいいもんな。龍化装甲、変身」
引き金を引く。同時に狙撃銃からは「release!」と鳴った。
エネルギー体として放出された装甲達がアクネルの周りを飛び回り、実体化した上でそれぞれの位置に着くと彼に合体した。
「さあ、これで対等。フェアプレーは大切だろ?」
アクネルはボルトハンドルを倒して狙撃銃を大鎌に変形させ肩に担ぐ。
しゃらんと鞘から剣を抜いた蘭太は中段に構えてアクネルから目を離さない。
しばらく風と水の流れる音が聞こえる。
「分かってるな。無闇矢鱈と突っ込めば返り討ちに遭うだけって。でも相手が悪い。俺は痺れを切らすのが早い上、俺のバルディアムはこんな使い方が…できるッッ!!」
言うや否や鎌を投げ飛ばす。
大きく回転しながら迫る鎌は蘭太に難なく弾かれる。
『何?ただの投擲?』
大きく言った割にはしょぼい。ルルは不思議そうに呟いた。
「違う…!まだある!」
「ビンゴ!そうだよ!」
アクネルが指先を鎌の飛んで行った方向へ向けた後、中指だけをクイッと畳む。
すると、大鎌がまるで意思を持ったかのように進行方向を真逆にし、再び蘭太に迫る。
「何!?」
また鎌を弾くが、再び戻ってくる。
ただ戻ってくるのではない。回転しながら直線、または弧を描いて飛んでくる。つまりは不規則に舞うように飛び回る。
「ほらほら!捌いてみせろ!」
アクネルは右腕のみを動かしている。手首や腕、指を駆使して大鎌を操作しているようだ。
ということは。
『今の兄さんは…無防備!雷花!』
『任せて!』
念話で呼びかけ、雷花の力を出す。
すると金色の装甲が光を帯び、蘭太に電光石火の如き速さを与える。
その力を使い、蘭太は大鎌の攻撃範囲から抜け出し、アクネルの目の前へ。
「んッ!??」
『ルル!!」
『オーライだよ!』
左足から高圧水流を放出させ、斬りつけるように蹴る。
「ぐぉっっ!!」
ザザーーッと後ずさりさせられたアクネルは指を動かしバルディアムを回収。
「…やるじゃねぇか。2つの属性を活用した攻撃か。」
こんなもんか。
とアクネルは呟いたが幸か不幸か蘭太の耳には届かなかった。
「でも、お前は俺には勝てない」
攻撃をモロに受けても、アクネルはどこか自信ありげだった。
なぜなら。
「お前はまだ足りない。その上、お前、情けかけてるだろう?」
「…何のことかな」
「下手なとぼけはやめときな。兄が弟のこと分からないわけないだろう?ましてや、親よりも長い時間一緒にいたんだしな」
割と図星だった。と言っても当然と言えば当然。戦っているとは言え兄弟なのだ。どうしても躊躇ってしまう。
「健気なもんだよなぁ。『兄だから』って理由で無意識にでも手加減してしまうなんて」
アクネルは意地悪そうににやにやしている。
「何が…おかしい」
「いや?ただ、村のことを駆逐派にチクった奴が目の前の兄貴だって分かったとしても同じ態度とれんのかなって思ってさ?」
……え?
今、なんて?
村のことを…?
「何ぼけっとしてんだよ?謎に思ってたことが晴れてスッキリしたろ?あの時俺は事前に観察して、ちょうどお前が村にいない時を突いてあげたんだよ。にしてもあんなことをしても弟から慕われてるなんて嬉しい限りだけどなぁ」
けらけらとアクネルは笑う。
嘘だ。嘘だ、嘘だ嘘だ。
確かに不思議には思っていた。なぜデュ族の村がピンポイントで襲撃を受けたのか、なぜ自分は偶然にも襲撃を免れたのか。
だが兄の言うことが本当ならば、あれは偶然なんかじゃなかった。故意に引き起こされたものだった。
そしてそれならば、兄はもう自分の知っている優しい人なんかじゃなくなっていた。
奴は、村のみんなを殺した、屑野郎だ。
「グルルルゥゥゥゥ……!!」
蘭太の口から龍の呻きのような吐息が漏れる。するとどんどん金色に光っていた右の黒目が赤くなり、一際強く光る。
「グオオォオォアアアアア!!!!」
怒りの咆哮。川の水がうねり、街全体に音が響いた。
メリークリスマス!
皆さん今年のクリスマスはどう過ごされますか?筆者はぼっちですよ。いわゆるクリぼっちですねハイ…。
どうも、どらっごです。
薄々察しになられていたと思いますが、こりゃ年内に4章終わりませんわ!\デデドンッ/
そして、クリスマス番外ぶちこんでやろうかな!と思った時にはもう間に合いませんでした(白目)
なので後書き始めの一言で済まさせていただきます!
ではでは、また!




