40・・・「憎しみの力」
あれ…ちょっと長くなっちゃった(体感)。
あ、本編さん、どうぞ。
俺は、真っ白な空を見ていた。
背中が硬いものに触れている。つまり寝転がっているのだろう。なぜ?
俺は戦いをしたはずだ。目の前にいた蘭太と「魂を賭け」た戦いを始めていたはずだ。
そうだ。あいつは。あいつはどうなんだ。
ゆっくりと起き上がる。そして見たものは。
2本の足で揺るがなく立つ蘭太の姿。
なぜだ。
なぜ戦いをして。
なぜ俺が寝転がって、あいつは立っている?
まさか…
俺がやられた?
この俺が?兵器であるこの俺が?
ありえない。そんなのは…!
「ふざけんなァァァァァァ!!!」
怒号。ようやく何が起こったか理解したが状況を受け入れがたい者の。
「俺が返り討ち?お前が立ってて俺が倒れる?ありえねぇ!!あっちゃなんねぇんだよぉぉ!!」
叫び、感情に任せた身体能力で凄まじい速さと共に攻撃を繰り出す…が。
ブラッディアンは今回は理解した。
蘭太は…。
ブラッディアンをも上回る速さで斬撃を最低限の動きで避け、カウンターを的確に当て、ブラッディアンを吹っ飛ばす。
「がはっ!!」
避けた際の勢いを乗せた斬撃なため、威力は凄まじい。
それでも致命打にならないのは他ならぬ装甲のおかげである。
現実世界とは真逆の状況になっているブラッディアンへ、静かに蘭太は口を開く。
「どうしたの?勢いはどこへ行った?」
と。その言葉はまるでブラッディアンのプライドにできた傷に塩を塗り込むようだった。
「てめェェェェ!!!」
ーーーーーーーーーーーー
火鉈達のチーム用更衣室の前にて。
「さっさと着替えろ!入るぞ!」
「変態!嫌!入らないで下さい!」
「だったら早くしろ!…ああ畜生!誰だチーム別で更衣室共有にしやがった野郎は!」
火鉈は思いっきり舞を急かしていた。流石に病室で寝るときに使っていた寝服で出撃はまずいので着替えている。のだが、舞の着替えが思ったより時間がかかっている。10分ほどだろうか。
なぜ着替える必要があるのか。答えは簡単。対龍戦だからだ。普通のナリで満足に戦えるわけがない。
「着替えなんざ1、2分で済むだろ!?なんでそんなかかんだ!つか戦闘服だぞ!?」
戦闘服、といってはいるがぶっちゃけ動くのに不都合のないラフな服装のことである。
「貴方はジャージを上と下で足と腕通すだけで終わりますけど!私はそうはいきません!女性の着替えは時間がかかります!急かされているのでもっと伸びます!」
「なぁぁぁんで!!???」
「ていうかそんなに早く着替えたいなら病室のベッドの上なりトイレなりで着替えて下さい!誰も貴方の下着姿なんて見たがりません!○○○も!」
「それならお前だって見られて困るほどの下着姿どころかお○○いもねぇだろが!あとさりげなく隠語混ぜんな○○ガキ!文字隠し食らってんだろ!つか俺の着替えそン中にあんだよ!!」
「はぁぁぁぁ!!???私Cはありますから!?てかセクハラ!死ね!貴方も文字隠し受けてます!」
「うっせー!『死ね』てなんだゴラ!仮にもリーダーに向かって言うことかぁ!??」
ぎゃーぎゃーうるさい。そりゃもううるさい。いつのまにか剛牙と彼方も合流していたが気づかなかったほどだ。彼方と剛牙は苦笑いをしていた。「うわあ…(引き)」という様子。
喚きあいのせいでさらに遅延を喰らっている。結局2人の着替えに25分かかった。(舞が23分、火鉈が2分)
数分後。
「あーごほん、剛牙、今分かってる状況を教えてくれ」
「了解です。現在突如現れた龍族がハーフフェアリーも含む生物を見境なく襲ってます。すでに死者も出ています」
「一方的…にか?」
「抵抗はできていますけどほぼほぼそうです。対抗処置として戦闘機などの機械兵器を投入してはいるらしい…ですけど一度も攻撃すら出来ずに終わってます」
ハーフフェアリーは変身時の耐久力こそ高く戦闘能力もあるが、いかんせん飛べる個体がそうそういない。
そこで、ほぼ廃れた軍事兵器の内、空を担当する物達は残されているのだ。
この、例えば戦闘機に変身した状態で乗ることで、たとえ撃破されたとしても落ちるだけで済む。着地の際の衝撃で気絶する者は多数いるが死ぬよりは幾分ましだ。
「…どういうことだ?サボってんのか?」
「違います。攻撃する前に索敵範囲外からの何者かからの長距離狙撃で破壊、炎上させられているんです」
「なんで長距離狙撃だってわかってんだ?」
「撃墜された戦闘機の乗組員に話を聞いてきました」
聞いた内容を伝える。
「エンジン部を的確に狙撃、爆破させられてるってか…?かなり厄介だな。いや、乗組員を撃ち抜かれないだけ優しい方か…」
「さらにタチの悪いことに直接変身者が行こうにも倒されるようなんです」
「…となると、俺らでもキチィな」
「どうします?」
「あいつ…蘭太と合流だ。禁忌の俺らでキチィなら厄災のあいつに頼るしかねえだろ」
そこでふと火鉈は舞の表情が暗くなるのを見た。
「2人は先に行っててくれ。……舞」
剛牙と彼方を先に行かせ、火鉈は舞に言う。
「いつだって俺らのやる事は変わらない。やれる事をやるだけだ。うじうじするな。まっすぐ前を見ろ。…行くぞ」
「…はい」
こういう時はリーダーなんだから…ずるいな…。
そう舞は思って、走り出した火鉈の背を追う。
ーーーーーーーーーーーー
ズシャン!という斬撃音と共にブラッディアンは飛ぶ。
「ぐあっ!」
もう何回目だろうか。斬り掛かっては弾かれるようにカウンターを受け、斬り掛かってはカウンターを受け…。
ブラッディアンはいつしか素で怒りをあらわにしていた。
「なんでだァァァァァァ!!!!
ドォン!と床を殴りつける。
「なんでこの俺がこんなにも無様に…!この俺がァ!!俺は最強!無敵!負けるわけがねぇんだよォォ!!」
「…ブラッディアン」
狂乱するブラッディアンに静かに蘭太は語りかける。
「なんで俺がこの世界でお前に戦いを挑んだか、なんで俺が絶対自分よりスペックの上なお前に非変身状態で戦おうとしてたのか…分かる?」
「知るかァ!知る価値もねぇ!」
再び斬りかかるが、結果は同じ。
「精神世界だからだよ…!」
蘭太は絞り出すように、唸るように自身で答えを言う。
「精神世界は!魂が露出された世界!当人の想いの強さがそのまま強さへ還元される世界だ!」
実はもう一つあるが、ここで言うと計画がおじゃんになるので黙っておくことにする。
「俺は!記憶が戻って決めた!愛する者のために戦うって!自分の大切な誰かのためにこの力を使うってそう決めた!お前にはそういうのが見当たらないんだよ!全部自分のために、自己中心的な力の使い方をしている!だからここじゃ俺に負けてるんだ!お前はないのかよ!?『誰かのために戦う』って心が!!」
「『誰かのために戦う』という心…だと?」
ブラッディアンの脳裏に記憶が走る。彼の、憎しみの記憶が。
心の抜けた表情でブラッディアンは声を漏らす。
「ふふふ…あはは…あったさ…。でもさ…なくなったんだよなぁ…」
ふらふらと、立つ、そして上げた目の赤色が一際強く光り、憎悪の感情を惜しみなく出す。
「俺はぁ!裏切られたんだよォォ!!」
姿が搔き消える。
動きは見えた、が。避ける事が出来ず、代わりに剣でブロック。
だが、先程の何倍にもブラッディアンは強化されていた。蘭太は防いだにもかかわらずぶっ飛んだ。
「がっ!」
「人間に作られ!人間のために同士をも削って戦った俺たち戦闘用妖精を!人間共は
スクラップしようとしやがった!!」
そう。これがブラッディアンが人間嫌いな理由だ。人間の事を平気でゴミ呼ばわりする理由だ。
一気に形勢逆転し、蘭太に追撃を仕掛けながらブラッディアンは叫ぶ。
「その時失望したよ!俺らはこんな奴らのために命を削ってたのかって!こんなことになるなら人間を滅ぼせばよかったんだって!」
戦闘用妖精は全部で10体いた。彼らは限りなくハーフフェアリーに似せて作られた。故に感情を持ち、擬似的にではあるが涙などといったものも出すことができる。
その内の半数を先の戦争で失い、その都度意思のある彼らは涙した。
だが彼らは互いを励ましあった。希望を捨てなかった。「人間が勝利すれば自分たちの貢献は無駄にならない。いつか幸せな未来が来る。仲間の死は無駄にならない」と。
だが…。そうやってなんとか戦い抜いた彼らに対する終戦後の人間の対応は残酷なものだった。
すなわち。「用済みである故廃棄処分とする」
言い換えてやれば、
「あ、戦争で頑張って戦ってくれてお疲れ様でーす。そんでもう君たち要らないんで消えてくださいね」
である。
「クソ人間共は俺らのことを道具としか見ていなかった!その時なんで俺らが酷な戦闘を繰り返させられてたのかようやく理解した!」
ブラッディアンは戦闘用妖精の1号。最も豊かな感情を持っていた。ちなみに番号を経るに連れて戦闘以外の余分な感情は削られてしまっている。
故に唯一戦闘用妖精の中で抵抗した。なんとか自身のスクラップは免れたが、他の戦闘用妖精は皆死んでいた。今でも覚えている。死んだ仲間の名前、記憶。皆人間のように屈託なく笑っていた。兵器なのに。戦いしかなかったのに。めげずに明日への希望を持っていた。
「俺ら例え兵器でも心を持っている!感情を持っている!それを踏みにじった人間を俺は許さねぇ!!」
ブラッディアンは涙を流していた。あの時と、200年程前と同じように。
あれから誓った。人間を殺すと。こんな害でしかない種族は滅ぼすと。
そして誓いのとおりに殺した。殺しまくった。湧き水のように湧く奴らをぶっ殺しまくった。だが人間はどうしてから絶滅しない。
その内疲れてしまった。そんな時立ち寄った施設で、たまたま施設長とやらに気に入られ、同行させられた。ぶっ殺そうとはしたがどれもうまくいかなかった。
そうこうして出会ったのが蘭太だった。
初めは興味本位だった。殺すなと言われたため、実験がてら記憶を抜き、施設へ連れ帰った。
そしたら意外にも驚いた。
回収される際にはあった目のハイライトがまるで絶望しているかのようになくなっていたのだ。
…これは面白い。俺に似ている。
ブラッディアンは見守ることにした。自分はどんなふうに見えるのか。それを見てみたかった。だが。
蘭太はブラッディアンの予想と違って、施設の人らの「希望」になっていた。
施設の人達は気付いていたのだ。いつか、そう遠くない未来に何か強大なものが侵攻してくると。そしてそれは自分達の手ではどうしようもないものだと。
だから龍人という、元世界ではイレギュラーな存在の蘭太に、力を与えた。
だけれども、そんな様子がどこか気に入らなかった。まるで…。
「お前も俺と同じだと思った!いや施設にぶち込んでからは同じだったさ!あそこの奴らはお前に『力』をねじ込みまくって『兵器』にしようとしてたんだからな!!」
自分達のようだった。
強大な力を持ち、人間の願うがままに動かされ、最後はスクラップされるのでは?
そんな懸念があった。皮肉にも龍「人」の蘭太に。いや…自分達のような者を増やしたくないという心があったのかもしれない。
「俺は兵器じゃない!」
「ああそうさ!兵器じゃないさ!だが兵器にさせられかけた!だから俺様が止めてやった!使えそうなお前を死なせないためにな!」
あの時。蘭太が暴走したのはまさしくブラッディアンのせいだった。
「容量拡張実験」の時、ブラッディアンは蘭太に仕組んだものがあった。
それは「精神世界の拡張」。
元々精神世界は4人も存在できるほどの容量はない。それを広げたのだ。理由は簡単、蘭太の容量を超えさせて暴走させるため。
そうして蘭太は暴走した。建物1つ分をぶっ壊した。人も殺した。最後は力尽きて倒れたが。
「だが!!」
薙ぎ払う。感情によって力が増幅されているため、剣で防いだにもかかわらず蘭太は飛ばされる。
「がはっ!」
倒れた蘭太の剣を蹴り飛ばし、首を掴んでオーラを纏って光り出した剣を構える。感情によるエネルギーが溜められているのだ。
「蘭太!」
「来る…な…!」
駆け寄ろうとするルルを蘭太は声を絞り出して止める。そんな蘭太にブラッディアンは少し溜息をついた。
「経緯はどうあれ俺はお前の体を手に入れた!そしてお前は俺の期待に反した。…だからさ、お疲れ様だ。死ね」
そのまま蘭太を、斬った。
そこからはルルにはスローモーションに見えた。
ブラッディアンが手を離し、蘭太の体が落ち。
ドサッと。
蘭太は倒れた。
「ぁ…ぃや…いや……」
ルルは頭を抱えた。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
精神世界に、少女の悲鳴が響き渡った。
どうも、どらっごですよ。
5000字オーバーまじぱない(語彙力)ですね。
自分初めてですよ(笑)
ではでは、また。




