38・・・「作られた龍人」
村が燃えていた。
死体が転がって、一部の生きている者はは連れていかれた。
そんな状況が全く飲み込めなくてぼくは立ち尽くす。
そんなぼくに軽そうなノリで声をかける者がいた。
「よぅガキ。お前ここの奴か?それなら話は早い。ちょっと死んでくれや」
じゃらっと金属音が響き、見ると。
男がぼくに大剣を振り下ろすところだった。その大剣は血で赤く濡れていた。
こいつか。
滑るようにバックステップをして避けると同時にぼくは確信を持つ。
村の人たちをを殺したのは…。
「おまえかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
吠える。周りの空気中の水分が感情に呼応して凝縮、爆発を引き起こし、ぼくはその男へ攻撃をしかける。
………
時は少し遡る。
ぼくは相変わらず池へ通っていた。少女のことが気になって。
そしてぼくが行くと決まって彼女は姿を見せてくれる。
「毎日毎日飽きないね。そんなに私が気になる?それならいっそお持ち帰りしてくれてもいいんだよ?」
「いや、そうはできないんだよね…残念ながら…。家そういうのにはなんか厳しいみたいで、でもなんでかここに通うことは許してくれるってなんか謎」
2人でくすくす笑う。
そう、ぼくは一応親に許可を得た上でここに通っている。
どう話したかというのはまあ言えないのだが。
そうしてぼくらはずっと談笑していた。空に見えていた異変に全く気付かずに。
数時間後。
凄まじい爆発音と共に地面が揺れ、鳥たちがけたたましく鳴きまくり飛び立った。
「え、なっ何!?」
咄嗟に音の聞こえる方へ向く。その方向は。
「ねぇ…あの方向、あなたがいつも来る方角じゃ…?」
「ッ…!」
「ちょっとネイルくん!?」
「村見てくる!君はここにいて!」
悪い胸騒ぎが一向に収まらない。ぼくは慌てて村へと戻った。
…………。
「お、おいおぉい!気性の荒いガキだねこいつぁ!」
ぼくの攻撃はことごとく躱されていた。というか届かなかった。何せ体が小さい。リーチがそもそも短いのだ。
だがぼくはそんなことをも考えられないほど怒り狂っていた。
「うるせぇ!殺す!ぶち殺す!お前の命を絶ってやる!!」
「ふは。そいつは無理な話だな!」
ドッと腹に蹴りを受ける。切られなかっただけ幸運なのか。
蹴られた勢いでぼくは吹っ飛び倒れる。
「げふっ!」
「そもそも俺命なんてねーし?『無』の存在を殺すってまずどーやんだよ?はは。『無』いものを『無』いものにするとかそれ状態変わってないうえむしろ強化されてなくね?」
「『無』の…存在?」
「ああ知らなくていいわ、どうせお前もう死ぬし。ただちょっと謎になる言葉言ってお前がどんな顔すんのか好奇心があっただけだ」
ゆっくりと近づき、立ち上がったぼくの首を掴み持ち上げる。
「うぐっ!」
「ほんじゃーなー。今回は運が悪かったってことで来世でまあせいぜい幸せになれや」
ぐぐぐっと首が締められる。
「…ぁ…っ!」
だが抵抗はやめない。むしろ好機だ。
ぼくは至近距離にいる男との間に拳をかざし、渾身の水蒸気爆発を引き起こした。
「げはぁ!」
当然自分へのダメージも半端ではない。思い切り吹き飛ばされ背後にあったボロボロの建物に背中を叩きつけられた。体に激痛が走る。水蒸気爆発を起こした手は相当な負荷がかかって血まみれになっていたが手の形は保っていた。
「ごっふぁ!てんめぇこん畜生が!よくもやってくれたなクソガキぃ!!」
男はキレていた。こんなやつ余裕で殺れるわ楽勝楽勝ぷーくすくす、みたいに思っていたのかもしれない。
そんな男に背後の空から声がかけられる。
「ふぁー何手こずってんだ旦那ー」
そいつは赤い装甲をまとっていた。
ものすごーく軽いノリでかけられた声に男は思い切り顔をしかめた。
「うっせぇこの野郎!俺に対してタメ口かボケェ!こんなガキすぐにでもぶち殺してやらぁ!」
そして何故か男らは口論を始めた。ぎゃーぎゃーとうるさい。
その間にぼくは立てるようになっていた。体中がジンジンする上、手から血が止まらないが、目の前の相手を攻撃するには今がチャンスだ。
だが。
「ネイルくん!大丈夫なの!?」
池の所に残れと忠告していたはずの少女がいつのまにかここに来ていた。心配されるのも無理はない。ぼくは現にボロボロだ。
しかしその透き通る声は男らの耳にも捕らえられた。
「あ?…は?」
一言目は何事かという雰囲気。
二言目は背後で起こっていたことに対する驚き。
男は今度こそキレた。
「あ゛あ゛あ゛!!??てめぇらなにイチャついとんじゃゴラァァ!!もう決めたぶち殺すリア充滅べ!超新星爆発しちまえ!!」
余裕があるとかならば「リア充?いえぼくたちそんな関係じゃないです」的な反応はできたかもしれない。
だがその時のぼくが男に抱く感情は憎悪以外の何者でもなかった。
ぼくは唸る。
「がたがたうるさいんだよこの野郎…!」
流れる血をも水蒸気の一部にして拳を作る。相変わらず激痛が走るが精神が極限状態なのか心なしか和らいだ感覚である。ふらふらしつつも一歩進む。
「ネイルくん!無茶だよ!体が壊れ…」
「黙れ!」
少女を振りほどきながら叫ぶ。
その時ぼくは初めて少女に怒声を浴びせてしまった。少女は唖然とした表情になり、ぼくが離れた後、目に涙を浮かべその場に座り込んでしまった。
「殺してやる…!殺してやる!!でやぁぁぁ!!!」
駆ける。一直線に。男へ向けて。
文字通り命を削る、渾身以上の殴撃を打ち込むため。
「2度も食らうと思うか?」
男は手をかざした。それだけだった。
それだけでぼくの拳で荒ぶっていた水蒸気達が霧散し、消えた。
けれども勢いは殺せず、いや殺さずに拳を打ち込んだのだが、効果はない。それどころか。
「がっ…!ああ……!」
水蒸気爆発を起こすという前提で振った拳の勢いのせいでぼくの右拳の骨が砕け、皮膚が裂けに裂けた。
ダバダバッと血が先ほどよりも大量に流れる。痛みが凄くて、直接的影響はないはずなのに歩くことすらままならない。
「ああっ…!くぅ……!」
「文字通り自滅だな?だがその執念、嫌いじゃない。褒美に殺しはしないでおいてやるよ。…おいCode:blood。気まぐれだ。お前に選択させてやる。ただし『殺し』は禁じる」
「ほんと気まぐれっすね。あいよ、了解しました」
男はぼくに背を向け歩き出す。
「待て…この野郎…!」
まだ左がある。この左拳であの野郎の顔面をぶっ飛ばしてやる…!意識が朦朧としつつも、手を伸ばす。
「あいストップ」
だが現実は非情だ。ぼくの伸ばした左腕は青年に掴まれ、内部の骨が砕ける音がした。
「うぐあぁぁっっ!!」
甲高く悲鳴をあげる。
掴んで、触れただけで…?
疑問符と激痛に苛まれぼくはもう立つことすら出来なくなり倒れた。
「さてと。選ばせてやるって言われたけどどうしたもんかなー?連れてくかー?んー、だとすると記憶弄る?あいや取ってみるか。何気に初の試み…よし、そうしよう!」
こいつは…何をするつもり…なんだ?
理解が追いつかないままぼくの意識は体から弾かれるように飛んだ。
次に目覚めた時にはもう、施設のようなところにいた。
「あれ…ここは…」
なにがあったのかを思い出そう。そうすれば何故ぼくがここにいるのかわかるはず。
なのに…なのに。
「………ッ!?」
分からない。ぼくの名前は何だっけ?ぼくはどこで生まれどこで育ったっけ?ぼくはなんなんだっけ??
分からない。分からない。なのに感じるこの違和感。なにかがすっぽり抜け落ちた空虚感。
そんな若干パニック状態へ陥ったぼくのところへ1人の大人が来た。
「あら。目覚めたのね。蘭太くん」
……蘭太?誰のことだろうか。
「ああ、君名前ないでしょう?だから施設長さんが与えてくれたのよ。蓮藤蘭太って」
そう、なのか。うん、きっとそうなんだ。
不安なぼくは安直にもその言葉をなんの迷いもなく飲み込んでしまった。
ぼくは、「蓮藤蘭太」なのだ、と。
その大人は続けてぼくに話をした。
曰く。
君はここへ龍に送り届けられた、と。
ぼくは龍に運ばれるという感覚を知らないが、知らないだけだろう、そうなんだろう、とこの話も違和感はあったが飲み込んだ。
そしてこの日からぼくは何か失っているような気がわずかにしながらも施設での生活を始めた。
数々の人体実験を受け、その代わりぼくの知りたいことを教えてくれた。
「人の心ってどこにあるの?」
……「精神世界」って言う中の世界にあるよ。
「『精神世界』って何?」
……各々の生物の中に存在する、魂が魂のまま存在する世界のことだよ。
「もしそこで死んじゃったらどうなるの?」
……精神世界で死ぬ、厳密には消滅したのなら、体は元気なのに死んでいるという不可解な現象が起こるよ。
「もし想いを本気でぶつけたいときがあったら現実世界と精神世界どっちがいいの?」
……リスクを顧みないのなら、ありのままの魂でぶつかり合える精神世界の方が圧倒的にいいね。でも魂同士でぶつかり合うことで相手に殺されて消滅してしまうことがあるかもしれない。現にそのせいでハーフフェアリーには変死者もたまにいたりするね。
「精神世界じゃ何か強さを左右するものとかはあるの?」
……あるよ。「当人の想いの強さ」。これだね。その人の想いが強ければ強いほど、精神世界での身体スペックに影響するっていう話だよ。
そんなこんなでぼくは施設での生活を送った。
満たされていたはずだった。
施設の中ならどこへでも行けたし、欲しいものは貰えたし。
でも。何かなかった。
施設で青髪の、どこか見覚えがあったような気がしなくもない暴走していた少女と出会い、引き取るという形で契約・取り込みをして一緒に過ごすようになって。
そうだ。
なかったもの。
満たされているようで満たされないその原因は。
「『愛』が、ない」
確かに欲しいものはなんでもくれた。知りたいことはなんでも教えてくれた。
ぼくのことを「希望」だと、どこか聞き覚えのあるワードをよく言ってくれた。
でも大人達はどこか無機質だった。
なんだろう。彼らは自らには絶望している者の目をしていたのだろうか。
その仮説に至ったその日からぼくは施設でも日常で急速にストレスを溜めるようになった。これが自分の容量も圧迫したのだろう。
人体実験により付与され続けた力がぼくの精神の限界に達し、ぼくは人生初の「暴走」状態へ陥った。
そして暴走を強制的に止められ、ぼくは臨界に達していたことが発覚し、手術をした後施設を発つことになる。
その手術の前日。
「よう。久しぶ…いやお前はすっぽり忘れてるからはじめましてだな」
赤い青年とぼくは会話をしていた。
その中で。
「せめてもの礼儀ってことで言って来いって言われたからやっとくんだけど、どうせ記憶に残らないから意味なくね?って思ったんだよなーこれ」
「やってよ」
「ふぁー塩対応…辛いなー…。まぁちゃっちゃとしとこ。俺の名は…」
そこからしばらく自己紹介とマシンガントークが続く。
最後らへんではぼくは意識が飛びかけていた。
ここで本からの記憶は途絶える。
きっとこの他もう持っている。というか繋げられた。雷花から返してもらったあの記憶と。
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「俺は…」
「私は…」
粒子の流れが終わり、目を覚ました2人は目を見開いていた。
「意外だろ?2度も記憶改変を受けてたなんてさ」
そんな2人に本心からではなさそうだがからかうように喋りかける声が1つ。
「ブラッディアン…!」
にやっと口角を上げて足を組んで椅子に座る、ブラッディアンがいた。
体を安全な所へ置いてから精神世界へ来たのだ。
蓮藤蘭太の精神世界には、
蘭太、ルル、雷花、ブラッディアン
の4人が揃っていた。
どうも、どらっごです。
カリカリ(実際にはそんな音しません。アナログじゃないので)のんびり書いてたはずなんですけどいつの間にか4000字とかオーバーしちゃってたので載せますね(笑)
でも今回はちょっと早かったというだけで基本のペースは遅くなるのは確定です。(何回も言わんでもええわなんて思うかもしれませんすみません)
ではでは、また。




