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28・・・「元世界へ」


「ん…うぅ」


目が覚めた蘭太が見たのは自分の顔を覗き込むルル、雷花、カルナの顔だった。


「何…見てるのさ」


「「「あなたの寝顔」」」


コンマ1秒を争うほどの即答に少し絶句し、「変態?」と素朴な思いを抱いたが、


「で…失血した分の体力は戻った?」


どうやら心配されていたようだ。そういえば剣を操作するまで止めどなく血が溢れ出ていたっけ。

それにしてもなんだったのだろうか、あの不思議な映像、そして自分の傷を素早く治したあの現象は…。


「そろそろ説明時か」


唐突にウロボロスが口を開いた。

ルルが反応する。


「あ、やっと?気になるから早く教えてよ、あなた蘭太に何したの?」


「剣を打ち合わせてから程なく、俺は違和感に気づいた」


「『龍気ガー』とか言ってたわね?」


「ああ。少し再現が癪に触るがな。こいつ、蘭太には確かに龍気はあったが何かで抑制されているかのように非常に微弱だった。だから俺はそれを探るのを含めてこいつを貫いて、その後自分の龍気を送り込んだ」


そしたら、と続ける。


「送り込んだ先で不思議な空間にでて、その後に何故かヤツがいた。おそらくヤツが蘭太の龍気に関わっていると推測できる。実際ヤツと接触した後蘭太は龍気を扱えるようになった」


「ヤツ?」


蘭太が聞き返す。心当たりがあるのかないのか、ぼんやりした様子である。


「ああ。あの戦闘用妖精がな。名前は…」


その名を言った後、雷花は知っていたかのように頷き、カルナは目を見開き、蘭太は自身の口端の片方に指を添え、ルルはぽけーっとした。


「ちなみに送り込んだ龍気は全て回収済みだ」


ぐっとこちらに親指を立てて来るが、一同は「あ、うん」で済ませてしまう。


その時、



ーーーーーなんだァ?俺様の話でもしてんのか?あのトカゲ余計なこと言ってんのか?ーーーーー



蘭太の脳内に声が響く。直後蘭太の口端から血が細く流れた。


『うん。そろそろ出てきたらどうなんだ?』



ーーーーーまだだねぇ。お前はまだお前でやれるんだろ?俺様がお出ましするときはむしろ来ない方がいいかもな?ーーーーー



『どういうことだ?』



ーーーーーどういうことも何も、お前の命がどうしようもなく危うい状況になんねぇと俺もやる気がでねぇってこったよ。俺ぁお前に死なれたくねぇからな。んじゃーまたなーーーーー



それきり声は聞こえなくなった。なんか変な気分だ。


「蘭太、血…大丈夫?」


気がつくととルルが流れた血を洗ってくれていた。


「うん、中の奴が話しかけてきたんだ。その時はなんか決まって血が流れるみたいでさ…困ったものだよ…」


そこで、「あ」と思い出したように蘭太が声を出す。


「そうだ、帰らないと…。みんなが待ってる」


「え゛!?」


意外に太い声が響いた。音源はカルナである。


「どうしたの?なんかショックなことあった?」


「今、現在進行形でショックだよ!蘭太君もう行っちゃうの!?まだもう1日くらいボクと一緒にいようよ!ね!?」


何か慌てた様子である。何故かはよく分からない。


「と、とにかく龍界での要件は済んだんだ…それに帰るって言っても永遠の別れじゃないんだし…」


カルナはしゅんとする。が、


「うん、うん…そうだね、君にも待ってる人がいるんだ。帰らないとね。ゲートまで案内するよ」



ーーーーーーーーーーーー



「ヤローらまた現れやがったのか!しばいてやったのに懲りねぇ奴らだ!」


「愚痴ってもなんにもなんないわ!それに前は半数以上蘭太がやったんだし!とにかくもう一度黙らせるしかない!」


火鉈達は走っていた。旧東京の沿岸部に、具体的には港だ。この前倒した外国人のハーフフェアリー達がそこを荒らしているのだという。しかし何でまたこんなところで…。


「まさかとは思うがコンテナぶっ壊してんじゃねぇだろうな?」


「火鉈さん!フラグ発言やめてください!」


そして一同がたどり着いた時見たのは、コンテナの残骸とあちこちにぶちまけられた輸送物であった。そして所々に血が付いている上ぐったりと倒れた人の姿も見える。

瓦礫の上には例の外国人部隊がいた。


「…ヤロォ……!!」


火鉈は怒気を放ち躊躇うことなく変身して1人突撃した。


「あっ!ちょ火鉈!」


他の3人も変身して戦闘に加わる。


「テメェら焼き尽くしてやらぁぁぁ!!!」


爆炎が火山の噴火のように迸った。



ーーーーーーーーーーーー



「旧東京にて再びケイル達を動かしたところ、交戦に入ったとのことです」


秘書が男に言う。ケイル達というのは現在旧日本に送り込んでいる諸外国からの寄せ集め部隊のことだ。奴らは好戦的だったため確認程度に活動させたところ龍のような気配を感じたというのでまた同じようにさせているというわけである。


「やはりな。それで、前回の接触ではいた厄災(ドラゴン)級の者がいればあとはこの動物(クリーチャー)を連れて行くだけなんだが」


そこで座っていた椅子ごとくるりと回り1人の女性を見る。


「あなたはいると思いますか?真麗様」


視線の先にいたのは仰向けにごろりと寝ながら顔だけを男の方に向ける女。名を荒垣真麗(あらがきまれい)。左目の黒目部分は金色に輝いている。

男、いやこの女を見る者全てがこの女を見る度に全てを捧げてしまいたくなるほどの好意やあっち系な感情を抱いてしまう。


理由は彼女の容姿でも声でもない。現に彼女は寝転びながらも柔軟な素材を使用しているとは言えスーツを着て、頭と手くらいしか露出部分はない。


それでもなおそんな感情を抱くのは彼女の能力にある。


荒垣真麗。彼女は他でもない現在の「色気の厄災」なのだ。

「色気の厄災」の権限能力は少し変わっている。他の厄災級の権限能力が該当者の感情で発動するのに対しこれだけは「相手が自身に抱く」感情で発動するか否かが定まる。

つまり、男が真麗に好意なりあった系な感情を抱いた時点で既に権限能力の発動条件を満たしているのだ。

そしてその能力の内容だが、「条件を満たした者を服従させる」というもの。また自身が能力を使用している間常に服従させられた時点の感情を維持させるため「色気の厄災」側が解除するまで相手は「色気の厄災」の言いなりのままである。例え「仲間を殺せ」と言われても躊躇わないだろう。

しかし元からそんな感情を抱かない者には効果はない。そもそもの条件を満たさないからである。


「さあ…?でも今回はハズレな気がするわ」


淡々と真麗は答えた。ただ用事があるからこの男を支配していないだけで、この男には大して興味がない。


それよりも興味があるのは「怒りの厄災」初の「エクシーデット」。心を堕とそうとは思わないが一度は会ってみたいとは思っていた。だが突然として気配がロストした。死んだか、あるいは…。


「真麗様、現状の動物(クリーチャー)でも例の厄災級と渡り合えると思いますか?」


「多分ね。大丈夫よ」


とだけ言って真麗は立ち、部屋を出て自室へ向かった。

心に


『そんなわけないでしょ。厄災級を舐めすぎよ。…でも理性がない者に上手く対処できるかはわからない』


若干の不安はあった。何せ聞く限りでは「怒りの厄災」はまだ10代である。戦闘の経験はあまりないだろうと推測すると、今回送り込む動物(クリーチャー)級の魔物と化した変身不適合者はかなり危険である。


『奴らに同伴しよう』


そう密かに決めた真麗であった。



ーーーーーーーーーーーー



「ありがとうね、だいぶ助かったよ」


蘭太はカルナとウロボロスと握手した。

蘭太の背中にはゲートへ向かう間で作った鞘に収まった剣があった。ちなみに「デュアルブレイガン」と名付けることにした。


「またいつでも来てね?次もボクが直々に会いに来てあげる!」


「ありがとう、あでも代金がないや」


あっ、という表情をしてカルナは山に向かって手を伸ばすと遠くから「ガコッ」という音が微かに聞こえて直後石が飛来して来た。それを掴んで蘭太へ渡す。


「はい、ボクからのプレゼント!次来る時に使ってね!あ、その時は出来ればお仲間さんも連れてきてね!挨拶したい!」


にこにことするカルナに釣られて蘭太もにこりとする。

受け取った蘭太はルルと雷花とともにゲートの前に立ち、カルナ達に礼した後、ゲートの中に入っていった。しばらくするとゲートが再び最小化される。


すると突然カルナがふらついた。ウロボロスが咄嗟に支える。


「大丈夫か?やっぱり無理してたのか?」


「ううん…蘭太君といるとなんか楽だったんだ。水龍の龍気のおかげだったのかも…」


さっきまでの元気さは薄れ、カルナはふらふらしている。


「世界は平和になりすぎたの…かな…悪いことじゃないんだけど…でも、前より容態はマシになってきてるから…」


「とにかく城へ帰るぞ」


カルナを抱き上げ、ウロボロスは自分達の元いた領地へ帰っていった。




どうも、どらっごです。


人の名前考えるのつら…って思いつつふわーっとイメージしてると案外サクッと浮かぶもんですね(センスは知らない)!


まあまだ未登場の厄災級が後2人ほどいるんでね、仕方ないね?


と、特に述べておきたいこともないのでこの辺にして。


ではでは、また。


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