23・・・「範囲外」
第3章、始まります。
では行きます。
「ああ、今日も忙しい!!」
蘭太はぼやきながら迫る敵を蹴り飛ばす。
いきなりだが、現在戦闘中である。
旧博多支部から帰ってきてまだ3、4日くらいしかしていないが、突如任務が課せられた。
すなわち、
『外国から来たとみられる変身能力者が我々の管轄地域を荒らしている。撃退してくれ』
まあ大丈夫だろうということで引き受けて蘭太達は現地へ赴いたところ戦闘になってしまった。
まあ単純に倒す事は出来るのだが(現にすでに10人いるうち5人は倒している)、別な問題があった。
「お前ら、どこから来た!?何のためにここで暴れた!?」
と尋ねても返ってくる返事が理解出来ないのだ。言語が違うのである。
正直混乱する。
「何を言ってるのか意味が分からん!!」
「蘭太!とりあえずぶっ潰せ!そのあと何かで通訳するから!」
「分かった!」
とりあえず倒せばなんとかなるだろうという脳筋思考に切り替え、再度敵に向き合おうとした時、後ろから衝撃を受けた。
斬撃のようなそれである。
振り返ると、能力で生成したであろう剣を持った男が立っていた。
「痛っ!」
そう蘭太は言うが、血は流れていない。
装甲が守っているおかげで武装による攻撃を火花を散らすくらいで抑えている。
しかし衝撃はやや伝わってしまうが。
だがそんなことより驚いたのは、敵が武器を使っているということ。
「ちょい!?武器ってズルくないすかぁ!?」
叫んで蘭太は距離をとる。近くに火鉈がいた。
「まじ?じゃあこっちも使うぞ!」
そういって火鉈は自身の炎で鉈のような武器を作り出し、敵に向かっていく。
変身能力者は基本自身で初期にイメージして生成した武装を武器として扱うことが出来る。
「うおー目には目を歯には歯を戦法だー…」
『よそ見しない!敵来てるから!』
ルルの声が聞こえ振り返ると先ほどの敵が迫って来ていた。
応じる直前で蘭太はふと思い出す。
あの時ーー、火鉈達と始めて出会った時のこと。蘭太は光の能力者にロッドのようなもので始末されかけた。
そこを思い出して思った、長い物は良い、と。そして剣の類を使って見たいと昔から思っていた。
それを総合した結果至ったイメージは、
『刀だ!』
蘭太は侍の抜刀直前の様な構えを取り、刀をイメージする。するとイメージ通り刀が生成された。氷で形成されたそれに雷が纏っている。
それを敵めがけ振り抜く。
ガキィィィン!!
と音を立てて敵が弾き飛ばされた。
「What!?」
驚いた様子だった。これだけは理解できた。
「おお!いけるぞ!俺も武器デビュー!」
蘭太は戦闘中にもかかわらず子どものようにはしゃいでいた。まあ子どもなのだが。
だがそれに反してルルと雷花は不安げだった。
変身能力者の武器は基本自身の能力のエネルギーを一定の形に固定したものである。当然エネルギーが強ければ強いほど固定にも力が要るが、それは能力者からはどうしようもない。
だから2人は「武器が壊れないか」が心配だった。
そして、不安は的中した。
何回か敵の武器と拮抗したり敵に攻撃が当たったところでガラスが割れるように蘭太の刀が壊れた。
『『あっ、やっぱり』』
「うそーん」
一瞬蘭太の動きが止まった。そこを突くように敵が迫るが、
「ちっくしょうこのやろぉぉぉぉぉ!!!」
絶叫した蘭太が背に生えている翼で敵の武器を鷲掴みにしてへし折り、がら空きの胴体にパンチを入れ吹き飛ばす。蘭太の右目が仄かに赤く光っていた。
そこから蘭太はひたすら残りの敵を全員ボコボコにして変身解除させた。
…………………
「うーん、なんで刀壊れたのかな?」
戦後処理を火鉈達にしてもらっている間、蘭太はぼやいた。
『理由は明らか。生成する武器じゃもう私達の力に耐えきれないの』
そう。生成されることで出来る武器は許容範囲内の能力者が使うにはとても便利な物だがその範囲外の者が使おうとするとすぐに壊れ、使い物にならなくなってしまう。
そして蘭太が範囲外になったのはルルと雷花と二重共鳴をして強化されているからだ。
『ごめんなさい私のせいで…』
「いや、謝ることじゃないね。でもどうするかな…生成物の武器が使えないとなると…」
「増沢さんに聞いてみたらいいんじゃねえか?」
いつのまにか戦後処理を済ませた火鉈が言った。どうやら蘭太の言葉を聞いていたようだった。
ひとまずそれをすることにして、蘭太は頷いた。
「うん、そうしてみる」
ーーーーーーーーーーーー
「本当に武器を使いたいというなら作るしかないね、メイキングで」
増沢はそう言った。
つまり、使うなら能力で生成された物ではなく能力を付与して利用する媒体としての物を武器として扱えばいい、と。
「作りたいです。武器」
「とその前に、私は思うんだけど、君は武器必要なさそうだけど?君の変身時に現れる翼は別に腕として使えるからそれで敵の武器を封じればいいと思うんだ」
それに対し、蘭太は首を横に振る。
「翼を武器に対して使うこともできます。ですが何度も打ち合うことになると翼が傷ついて本来の使用用途に使えなくなるんです。ですから必要なんです。敵の武器に対するモノが」
武器を使うことに対する単純な憧れもあったが、武装を使えないことで周りに置いていかれるのではないかという焦りの心も本当はあった。
「うん、まあ君の問題だしね、厄災級のことは私はよくわからないし。じゃあ…」
メイキング、とさっき言っていたので材料集めから始まるのだろう、と蘭太達は思っていたのだが、
「一通り素材に使える金属類は揃ってるから、試してみようか」
揃ってるのかー。
しかしその分の労力は削減されたわけだ。良いこととしよう。
数分後。
蘭太含め、実験室にいた皆は焦りを覚えていた。
実験の仕方は、変身した蘭太が実際にサンプルの金属を手に取りエネルギーを送り込んで耐えられるかを試すというものだ。
耐えられる時間が5分以上というのが満足に使える目安時間である。が、
「おかしくねぇか??1分どころか5秒、長くて10秒ぐらいしかもたないってどういうこったよ…?」
剛牙の驚きに皆が「それな」と思っていた。サンプルは数十個あったのだが、そのうち5分の4はすでに試し、全て壊れた。残るはあとわずかしかない。
そして、最後の1つになった。
「頼むお願いします壊れないでください…」
蘭太は祈り、エネルギーを送り込む。
果たして、これまでのサンプルと同じようにものの数秒で壊れた。
「えーー…」
「まーじかー」
ぽかーんとしていた蘭太は、何かに取り憑かれたように増沢へ突撃し、揺さぶって涙目で喚いた。
「ま゛す゛さ゛わ゛さ゛ん゛!!他は!?他の金属類は!?あるでしょ!?ありますよね!?」
「ちょっちょちょ待て!落ち着け蘭太くん!もうこれでこの世界の金属類は全て試したんだ!この世界にはもう他に金属類はない!」
「………」
先ほどと打って変わりしょぼーんと落ち込む蘭太に、増沢は続ける。
「しかし、普通ならここで諦めろと言うのだが、実はまだ金属類はあるんだ」
蘭太が期待の視線を向けるのに対し、他の人は懐疑的なそれを向けた。
「ありましたっけ?」
「ああ、ある。ここじゃない『龍界』にな。そこへ取りに行けば可能性はなくはない」
この世界ではあまり龍を見かけない。その理由は龍族の住む場所が世界単位で異なるからだ。
龍族のその力の強さとそれをうまく使いこなせず荒れ狂う個体の多さ(もちろん使いこなせるものもいる)から、「隣の者」からもこの世界からも追放されてしまった種族だ。
追放された彼らは創造龍という龍が創り出した、この世界に似た別の世界、「龍界」に移り住み、こちら側に戻って来る日を待っている。そんな話がある。
故に、
「しょ、正気ですか総長!?」
増沢の側にいた秘書の御上が声を上げた。
「あそこは龍族が闊歩する魔境のようなところですよ!いくら彼でも命の保証ができません!」
「そうだな、できない。ましてや補助として誰かを付けたところで逆に足手まといになるだろう。だから命の保証はしない。行くなら1人で行ってもらうよ」
蘭太がぴくっと震える。
火鉈が我慢ならないと言うように言った。
「増沢さん!それはおかしい!俺達もついていかせてください!」
「だめだ。邪魔になる。それにお前達が死なないという保証もできない」
「くっ…」
「大丈夫です。俺、行きます」
驚いて火鉈は蘭太を見るが、蘭太は真剣な表情だった。
「……、わかった。行くからには必ず戻ってこい。では、龍界へ行くゲートの位置だが……」
どうも、どらっごです。
昨日は七夕なので番外編(何かとやらかしましたが(汗))をぶち込んだわけですが、それは別として本編の続きをねじ込んでおきますね。
さて、3章はどれほどの長さになるのか…?
適度な長さ(基準は筆者の感覚)でやりたいと思います。
ではでは、また。




