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20・・・「二重の共鳴」


目を開けると抱いていたはずの雷花の体は消えて代わりにスパークの体があった。ちなみに小さいままである。


「私の役目はこれでおしまいだね」


自分の願望であった人の体を失ったにもかかわらずスパークの体に意識が戻った彼女は微笑んでそう言った。

だが蘭太はじっと雷花を見て言う。


「これからどうするの?」


「帰るの。私たち『隣の者』が本来いるべきところに。そこでまた居場所を探すよ。じゃあね…さような…?」


雷花は去れなかった。なぜなら蘭太が雷花の体を掴んでいたからだ。


「どうしたの…?」


「…あの、なんでかなって思ったんだ。どうして返してもらった記憶の中の実験で唯一『容量拡張実験』だけが強調されてたのかなって…」


気になったことがあったのだ。なにかとても大切だろうと思うことが。


「それは、『貴方を1人にしないため』じゃないのかなって」


雷花の体が一瞬震えた。


「大人達はただ俺を外に出したわけじゃない。その後のことも考えて実験を施したんだろう。そして雷花が俺に記憶を返すときにこんな状況になるかもしれないと想定もした。妖精に戻った後の雷花が故郷から離れ過ぎてもう居場所がないことも分かっていた。だからこその『容量拡張実験』なんだと思う」


ぽつ、ぽつと蘭太は呟くように言う。


「つまりどういうこと…?」


「俺が貴方を受け入れる。俺が貴方の居場所になる」


「正気なの!?」


雷花は叫ぶ。


「私たちを取り込んだらその体に2つの人格を追加するということになるのよ!?いくら君でも耐えられるわけがない!」


現実的な話、そうだ。ハーフフェアリーが1人1枠な理由はそこにある。

一見ハーフフェアリーは2つの人格を持っているようだが、それら2つで1つの意識体とされるため、実質的な負担はない。だがそこにもう一つ、もう一つと意識体を取り入れていくと2つ、3つとなり体が初期に拒絶反応を起こし、耐えられなくなる。


だが蘭太はむしろ笑みを浮かべる。


「大丈夫だろう、きっと」


その蘭太の左の黒目は真紅に輝いていた。だがよく見るとその目の瞳孔部分、そして尾を引く光の淵が金色に輝いていた。

明らかに暴走していた時やその前とは異なっていた。


「大丈夫。貴方を1人にはしない。それに、貴方の力も必要だし…」


そこで手を離す。そして空いた手で雷花にさしのべる。


「一緒に来てくれないか?」


「……ずるい…」


雷花は涙を浮かべていた。

彼女は二重妖精(デュアルフェアリー)という特異な性質を持っていたため故郷の中でもずっと迫害されていた。必要とされることがなかった。施設にいた時ですら特に必要とされずただ住んでいるような様子だった。

だから気になった。施設の中で互いを必要とし合っていた大人達と今目の前にいる少年が。

結局住む場所を提供してもらう代わりに幾つもの実験を受けるという立場にあった少年だが、その気になれば施設から脱出することもできた。常に監視されているわけではなかったからだ。けれどもそうしなかった。彼自身もその実験を必要としていたのだろう。だからぎりぎりまで、体が限界を迎えるまで受け続けた。

雷花は知りたかった。そうまでして何を求めたのか、と。

そして知った気がする。この少年は記憶を抜かれる前から「大切なものを失わないための力」を欲していたのだ。その力になりたいと、雷花は思ったのだ。


「…私は君にとって、必要?」


「もちろん」


即答。

雷花は差し出された手に触れようとする…が、


「蘭太めぇ、私を置いてそんなことを言うなんて…!」


ずっと静かにしていたルルが唸った。


「あ。ルルにはわざわざ言わなくてもいいかなって思った…」


蘭太はバツの悪そうな表情をした。


「別に忘れてたわけじゃないぞ!?ただ、もう今じゃ一体になってるわけだから…その、生きるのに大事だし…なんというか…その…」


もごもごと中々言葉にできない蘭太だった。だがルルにはぼんやりとわかった気がした。それで充分だった。


「いいよ、だいたいわかったから。さ、やろう」


「あ、うん」と呟いて蘭太は立ち上がる。右側にルル、左側に雷花がスタンバイして、それぞれの側の手に触れて蘭太と同化する。


「う、くっ…」


一瞬拒絶反応が来る。これをクリアできればこれからは拒絶反応なしに使えるだろうがクリアできねば崩壊する。

だが自身の怒りを乗り越えた蘭太には大したことはない。


『ハッ…舐めんな…今の俺は、()()()()()()()!!』


まるで根拠のなさそうなのに確固たる意志で蘭太は心の中で吠える。

すると拒絶反応が収まった。


『クリアだね!で、次は何て言う…?普通に【共鳴変身】じゃつまらないなぁ…』


ルルが中から言った。何か特別なものにしたいらしい。


「え…能力2つだから、ダブル?…ダブルチェンジ?」


『『ださい。ダメ』』


咄嗟に考えたが速攻で却下された。


「雷花サン、オネガイシマス」


『なんか初めてだけど思考放棄したのわかりやすいね、君。そうだね、同じ理由だけど能力2つで二重、デュアルってことで【二重共鳴変身】でいいんじゃないかな?ただ付け足しただけなんだけどね…』


「『採用』」


蘭太のとは逆にこちらは速攻で採用された。


ので3人は息を合わせて、


「『『二重共鳴、変身』』」


と言った。

蘭太の周りに水と雷の本流が回るように荒れ狂う。

蘭太の右目が左目と同じように、だが赤の部分は青く光る。

左の2色も強く光る。



ーーーーーーーーーーーー



「ハハッ、『お互いを頼り合う』ことで怒りを乗り越えたか!素晴らしいぞ!『エクシーデット(超えた者)』!!」


傲慢たる王は歓喜していた。今まで唯一真価を発揮することなく散って行った「怒りの厄災」がついにそれを見せることに。


「さぁ、見せてみろ!」



ーーーーーーーーーーーー


時は少し遡り。


「邪魔くせぇゴラァァ!!」


スチールが叫ぶ。

彼はやむなく火鉈と戦っていた。だが少しばかり時間を食わされている。なぜなら、


『コイツ熱すぎんだよ!鉄溶けてるっつの!てか殺さないように戦えとかめんどくせぇ!』


火鉈の感情によって爆発的に強化された豪炎がスチールの操る鉄を溶かしているのだ。

無論スチールが込める力を強めれば突破はできるが下手をすれば殺しかねないし、そうすると今度はグラビティと面倒なことになるのは目に見えている。


『つかあの【怒りの厄災】は今何してやがる!?この禁忌が邪魔でロクに見れねぇ!』


と、心の中で愚痴りまくっていると、


「とっとと灰になれクソヤロォがァァ!!」


「チッ!」


火鉈の爆炎が炸裂し、スチールは後退させられる。


「鬱陶しいんだよ!さっさと黙れ!」


追撃せんと迫る火鉈に対しスチールは左目を光らせる。


「テメーの爆炎よこせやァ!!」


すると火鉈の纏う炎が吸い込まれるようにスチールの右腕に集まる。


「何!?畜生が!返せぇ!」


「言われなくても返してやラァ!!」


そして至近距離に近づいた火鉈にスチールは奪った炎を纏いし拳を下から打ち込んだ。


「がぁぁああぁあぁぁぁ!」


炎は戻ったが火鉈は吹き飛ばされ、空中で変身解除される。


『畜生…このまま落ちたら死ぬ…仇も取れねぇのか…』


その時。

下の方で凄まじい音とともに水と雷が荒れ狂い始めた。


『蘭太か…元に戻ってるといいな。俺は見れねぇだろうが…』


彼は目を瞑る。

しかし、火鉈以外の者は認知した。火鉈の下にワームホールのようなものができ、彼がそこに吸い込まれ別の場所から出てきたときに水で出来たゼリー状のクッションに止められたということを。


助かったことよりも未知なる感覚を訝しむ火鉈に対し声がかけられる。


「ごめん、流石に男相手に抱いて止めようとは微塵も考えつかなかった」


これまでの水の能力者としての装甲に加え、左腕と左肩や右脚など、そして両腕に龍の翼の形をした雷結晶を纏った蘭太だった。

雷結晶というのは、文字通り雷のエネルギーを結晶化したものだ。


「……へっ…、じゃあなんで口に出てんだろうな…?」


「さあ?」


「あ、そうだ」と蘭太は続けた。


「火鉈、ありがとう。後は任せて」


蘭太は火鉈に、感謝のつもりなのだろう微笑を見せた。


「俺も混ぜろって言いたかったが…ああ、頼んだぜ」


蘭太は小さく頷くと、スチールに向き合った。


「スチール、『欲望の厄災』。…第2ラウンド、スタートだ」



どうも、どらっごです。


やっぱりですね、主人公に強化は必須ですよ。(自己論)

でもやたらめったらはしない(というかそんなにするための考えが思いつかない)のでゴテゴテにはならないはず。


そして「怒りの厄災」の真価、つまり権限能力なんですが、まあ本編でも書きますけど「待ちきれねぇ!」とかいう方は…活動報告にちょろっと書いてありますので、見てくださいな。



ではでは、また。

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