19・・・「返される一部の記憶(後)」
自称「記憶編」一区切りです。
ちょっと走った気がしますが多分大丈夫。
そして文章力ホントに欲しいなぁって思います。
では行きます。
次に目が覚めたとき、ぼくはY字を作るように両腕を別々、両足は一括、お腹と首をそれぞれで縛られていた。
うっすらと開いた目で前を見ると、大人達と赤髪で赤眼の青年、金髪で金眼の少女がいた。後者の2人は会ったことが一度もない。
「お、やっとお目覚めか、小さな厄災くん」
起きたことに気がついたのか、赤髪の青年が言った。
「ギリギリだったぜ?あともうちょっと遅れてたらお前は完全に暴走して殺処分しなきゃなんねぇとこだったしな」
「やめておけ」
揚々と喋っていた青年を大人が止めた。
そして大人はぼくに対して話し始めた。
「縛って申し訳ない。だが仕方ないんだ、許してくれ。…ところで君の様態についてだが、非常に危険な状態だ。どうやら我々が能力を与えすぎたようで君の中の遺伝子が活発化、最悪人間側の遺伝子を破壊して君は龍化してしまう」
「ちょっとまって、ください…」
全く意味がわからなかった。ぼくは元人間のハーフフェアリーのはずだ。なのに龍化だとか遺伝子だとか、わけがわからなかった。
それを尋ねると、大人はしまったというような表情をする。
だが赤髪の青年は違った。
「あ?そんなこと教えてなかったのか?こりゃびっくりだぜ。まさかとは思うがそれを知ったらこいつが今度こそ本当に壊れるとでも思ってんのか?だったらこいつはそんな程度だったってだけだろ」
大人達は黙り込む。
「ハァ…どうせいつか知ることだ、今教えてといた方が幾分マシだろが。おい蘭太の坊や」
そう言って青年はぼくの顔を見て、
「お前はただの人間じゃねぇ。龍族と人族が交配して誕生した、『龍人』だ」
バクンッと心臓が跳ねた。
「具体的には水龍の父親と人間の母親との間の子だ。ここにお前を運んできたのは親とは違うやつだったがな」
「……なんで」
「なんで知ってるか?その龍が話してたからに決まってる。ここに預けたときに言ってたぜ」
ぼくは目を見開く。
「どしたよ?自分が人間じゃないって知って絶望したか?」
「…だから…?」
だがその見開きは絶望のそれではない。
「だからぼくは特別扱いを受けていたの?」
知らなくてはいけないという心によるものだった。
「それは知らねえ。この大人どもと俺は普段は別々だからな。で?どうなんだ大人達よ?」
「…そうだ。龍人というのはそうそういない。特別なものだ。だから我々は蘭太君を隔離した。そこの戦闘用妖精と二重妖精と同じように」
赤髪の青年を見て「戦闘用妖精」、金髪の少女を見て「二重妖精」と、大人は言った。
「…あの、二重妖精ってなんですか」
気になったので尋ねただけだったが赤髪の青年か露骨に残念そうな表情をする。まるで「俺のことはスルーかよ」というような様子である。
だがそれすらも完全スルーされ、大人は答える。
「うん、まず彼女のことを説明しよう。彼女も本当は人間ではない。その男もね。彼女はもともと二重人格を持つ妖精なんだ」
妖精と聞いて少女を見るが、妖精にあるはずの羽がなかった。
「もしかして…捥がれたんですか…?」
「そんな物騒なことじゃないよ」
尋ねた途端に少女から訂正をくらった。
即座に大人の話が再開される。
「オホン、そしてだが、別々の個体が1つに混ざって1個体を形成している時を除き、生き物っていうのは1つの個体に複数の意識が存在するときというのは非常に不安定な状態なんだ。彼女も例外ではなくここに来た時にはとても情緒不安定だった」
けど、と大人は続ける。
「具体的に言うと、2つの人格のうち片方が『人間になりたい』と主張してもう片方と対立していたんだ。だから我々は当時で言えば最新の技術にあった人体生成技術を用いて人の体を用意し、そこに片方の人格を移植したことで擬似的にハーフフェアリーとして生まれ変わらせたんだ。そういう経緯をもつから彼女は二重妖精と言われている。ちなみに人間でいう死を彼女が迎えると人側の体は消滅して元の二重人格の妖精に戻ってしまうけどね」
と、ここまで話したところで大人はまた一呼吸置いて今度はぼくをじっと見た。
「な、なんですか…?」
「さて、横道へずれてしまったが、本題へ戻ろう。君のことだ。さっきも言った通り君は危険な状態だ。精神容量がその歳の割にもういっぱいいっぱいで暴発しかけている。そこで何かを抜かなければならないのだが生憎我々が付与した能力を抜くことはできない。だから辛いが君の記憶を抜くことになった」
「!?」
今回で1番驚いただろう。そして声が出なかった。
「驚かれるのも無理はない。我々も驚いた。だがこうするしかないんだ。君の命か記憶かどちらを選ぶかと聞かれれば我々は即決で命を優先するほどに君は大切なんだ。わかってくれ…」
だが別の大人が口を開く。
「ですが、どうしますか?彼の記憶は膨大です。人間に移植しようものならばされた側が今度は暴発します…。とても保存はできません」
と、そこで唐突に青年がぼくに近づき、左手の親指の腹を切った。
「うっ!?なにす…んだ…!」
そして滴る血をすくってそれを舐めた。
「ん、ごくん…へっお前美味い血してるな?気に入った」
は?と思った。血に美味しいも何もあってたまるか。それに唐突すぎて訳がわからない。
(というかぼくは何なんだ!変人にしか好かれないのか!)
だが続く言葉で、青年が記憶のことで検討をしていたことが分かった気がした。
「人間じゃなきゃいいんだろ?だったら俺様が預かってやるよ。あ、女、お前も貰っとけよ?」
「え!?なんで私が!?」
「ハァ?お前こいつにゃバレてないだろうがこいつのこと陰で見てたの俺様知ってっからな?!」
「こいつ」という度にぼくを指差しながら青年は少女に喋った。そしてどうやら少女は図星だったらしい。
なんだかとても危機的状況とは思えないなとぼくはぼんやり思っていた。
「わかりました。私たちで請け負います」
「了解した。すまないな…」
ザーッというノイズと共に視界が暗くなった。
次に目覚めた時もやっぱりぼくはY字で縛られたままだった。だが違ったのは大人達や青年はおらず、金髪の少女だけがいたことだった。
「…あの」
ぼくは少女に話しかけた。少女はこちらを向く。
「ぼくの記憶はどうなっちゃうんですか?ぼくは…別人になるんですか?」
「ううん、君は君のまま。大丈夫、君が命を落とすまでには返すからね」
そして少女は立ち上がり、ぼくに近づいて頭を撫でた。
「大丈夫。君がこのことを覚えてなくても私たちは覚えている。君の記憶は生きている。ただ場所を変えるだけ。主の命を守るために」
そして少女は付け加えた。
「あ、そうそう、君の記憶を抜いた所の補填として大人達やあの赤髪の男が言ってたけど、『赤髪の過去の殺戮の記憶を君に合うようにいじったものを入れる』んだって。理由は『ここから我々の管理の行き届かないところへ行くのでその時に【強すぎる力はこんなことも引き起こす】ということを記憶に刻むことでむやみやたらと力を使わないようにさせる』ってことらしいよ」
翌日、ぼくは記憶を抜いたあとにこの施設を出て1人のハーフフェアリーとしてしばらくを生きること、宿などの生活環境は施設側が用意することなどを聞いて、記憶移植を受けた。
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「これが…俺に返すもの…か」
「一部だけどね」
真っ暗な空間に蘭太とルル、そして雷花がいた。
先程までこんな奇妙な空間で蘭太は一人称視点で記憶を見ていた。
「びっくりだよ。殺戮なんてしてなかったんだって…」
蘭太は涙を浮かべていた。かなり印象に残っていたのだ。あの、今となっては嘘の記憶が、自分の中で「memory of zero」と勝手に名付けて忘れないようにしていたものが。
でも、嘘の記憶だからといって軽んじていいわけではない。教訓として受け止めることが大事だ。
もう一つ、新たな事実が分かったが、こちらはそんなに驚かなかった。
すなわち、「自分が人ではなく龍人だ」ということ。
これについては自分でも疑っていた。
変だと思っていたのだ。なぜ自分は生身でも禁忌能力者と渡り合えたのか、なぜ自分は雄叫びを上げるときに龍のような声が混ざるのか。
その答えが出たことで蘭太はむしろすっきりしていた。
そして蘭太は思う。
こんな所で怒り狂っている場合ではない。
怒りを、超えるんだ。
自分の怒りを超えられるならば、全てなんて超えられる。限界すらも。
視界が光に包まれ白く染まる。ノイズはなかった。
はいどうも、どらっごです。
雷花を退場させるわけにはいかんのだ…!という筆者の強い思いにより雷花は生きる…きっと!!というか生きるという前提で話を進めている!(「知るか!」と言われそう!)
…さて、赤髪の男は一体誰なんですかね?
記憶が確かなら2章のどこかにちらっと出てきてた気がしますよ。もしあったらピンとくるかもしれませんね。
まあ彼はこの章のメインではないので置いときましょう。
ではでは、また。




