17・・・「暴走の果てに」
うぉぉぉぉ!次話への都合上少し長く(これでも収まるよう努めました)なってしまいました!
では、行きます!
形勢が一瞬で逆転した。
先ほどまで猛威を振るっていた蘭太は今ではスチールにスーパーボールのように弄ばれてしまっている。
「おらどうした!?筋力にモノ言わせてただけか?もっとシャキッとしろやぁ!?」
煽る。煽る。声は届かないのにスチールは煽り続ける。
蘭太ももちろん攻撃はしているが、攻撃力をほとんど奪われてしまった今全く火力が出ない。その上スチールは同じだけ強化されている。
「何が起こってるの…?まるで力を盗られたかのように…」
「わかっているじゃないか、雷の。」
呟いた雷花の近くにいたグラビティが答える。
言葉に詰まった雷花の代わりに舞が尋ねる。
「あいつは何者?」
「欲望の厄災。欲しいもの好きなだけ盗れるっつーちっとイかれた能力をもった野郎だ。といっても条件つきだがな」
欲望の厄災。
それが厄災である理由はその権限能力にある。
端的に言ってしまえば欲しいものを欲しい部分欲しいだけ奪えるというものだ。もちろん欲望の感情が一定ラインを超えねば発揮できないが。
暴走した蘭太の力は負の感情によって生み出されたものである。つまり力と負の感情は一体であり、普通に奪うだけならば力とともに膨大な負の感情に心を飲み込まれ奪った側も暴走する羽目になる。
しかしこの能力では、一体のはずの力と負の感情を切り離し、力という欲しい部分のみを奪うことができてしまうのだ。
「じゃあ、あなたもあいつみたいに何かあるってことね?」
ちょっと考えても考えなくとも出てくる次の質問に対してもグラビティは答える。
「あるにはある。だが俺は今その条件を満たせない」
「なんで?」
「俺自身この状況を楽しんでいるからだ。『飽き』ることが今はない」
「あんた…!」
「だってそうだろう?さっきまで猛威を振るっていた『怒りの厄災』が今では逆の立場になっている。ここから状況が変わるのか、変わるのならばどう変わるのか、それが気になって仕方がない」
グラビティは飽きの厄災である。物事に飽きねばその真価は発揮できない。
しかし今の彼にはそんなことはどうでもよかった。それを表すように彼の口には笑みが浮かんでいた。
「追加で教えておいてやろう。『怒りの厄災』がその真価を発揮するのは怒りの感情を乗り越えた時ってはなしだ。詳しくは知らんが今までにそこまで至った者はいないって聞いてるがな」
「あいつも先代達と同じように暴走で果てるんだろうが」と続けられ、雷花は青ざめた表情をする。
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所在不明地。とある部屋にて。
「やっぱ深くは知らないんだなー『飽きの』。これ俺しか知らねーヤツ??へへっ」
座った椅子をぎぃこぎぃこ揺らしながら広げた手に浮かべた直径30cm程の球体に映る様子を見ている男が1人でいた。その左の黒目部分は金色に光っていた。
時折椅子ごとくるりと回ったりしている。
その男は球体を見ながらぶつぶつ言っていた。
「しっかしたまたま見つけたから見てるんだが、こりゃひでぇ。ってマ?『怒りの』って『欲望の』より弱かったか?ンなはずは…お?」
コンコン、と扉がノックされる。
「どぞー」
「失礼します」
と、部下と思しき者が入ってくる。迎えるのは本を読みながら扉側に椅子ごと回って向いた1人の男だった。両方の黒目部分は黒色である。
「ボス、『アノコ』が『欲望』と『飽き』の厄災と交戦しているという情報が少し前に入ってきました」
ボスと呼ばれた男は思う。『知ってる』と。もちろん言いはしないが。
だが続く言葉で少し目を見開く。
「そしてその座標に限りなく近い所に例の二重妖精の反応がありました。以上です。失礼しました」
きぃぱたんと扉が閉められる。
しばらくして、
「…ふむ。二重妖精か。『アノコ』が殺されることはない、な」
とだけ呟いた。
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未だ蘭太は暴走していた。だが段々とふらついているのがわかるようになってきた。
蘭太はスチールに比べると大分防御力は低い。スチールには長時間耐えられるものも蘭太にはとても厳しいのだ。
そしてついに終わりの時がくる。
「俺より結構柔けぇのに割とタフなんだな?手こずらせやがって」
よろめきながらも目の前の敵を倒そうとする蘭太の体に地面から鉄の腕のような物が伸びて全身を拘束する。
モノを司る能力者は基本そのモノに触れねば干渉できないが、触れる部位は関係ない。
そして今スチールが立っている地面は元々製鉄所跡の床であり、金属製であるが故にこのような遠隔操作じみたことが出来ている。
本来の蘭太ならばこんな拘束など少し時間があれば破壊できるだろうが、今は成すすべなく動きを縛られる。
そして蘭太の前後に円柱のような鉄塊が生成され、
「これで、ジ・エンドだ」
という声とともに鳴らされた指パッチンで鉄塊が猛スピードで蘭太に挟むように激突した。
それが解かれた後、蘭太は崩れるように横方向へ倒れ、光に包まれて変身解除された。
「げふっがはッ…!」
意識の戻った蘭太とルルはむせこんでいた。蘭太に至っては血を吐いている。
そこへスチールが近づき、蘭太へかざした手に細かい鉄を生成し溜め込む。一気に放出して当たった部位を削る危険なものだ。生身で受けてしまえば例え体の一部でも致命的になる。
それを見ていた禁忌能力者のうち、雷花は絶望的な表情をし、すでに変身解除させられた体を進めようとする。しかし舞に止められた。
「雷花さん!だめ、危険です!」
「嫌!あの子は死なせちゃダメなの!返すものがあるの!」
「え、何を…言っているんですか…?」
困惑して止める力が緩んでしまったところで雷花は強引に抜け出し、再変身をして蘭太の方へ向かった。
目を見開く蘭太に向けスチールは、
「よぉ、楽しかったぜお前との戦い。けどもう終わりだ。死ね」
と言って必殺の嵐を炸裂させる。
その時空気中を電気が走り、蘭太の脳裏に何かが流れてきた。
『ぼくの記憶、どうなっちゃうの?ぼくは別人になるの?』
『ううん、私たちが預かるの。大丈夫。あなたが命を落とす前には返すからね』
全く見たことのないものだった。
そこには自分の声と同じ音の声に応え、自分の頭を撫でる、金髪で両方の黒目部分も金色に輝く少女がいた。
その姿にはどこか既視感があった。
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「ありゃ。ついに来たか。返される時が。今の『アノコ』には受け入れ、耐えきれるんかね?」
先ほどまでぶつぶつ言っていた男は何かを案じるような表情をしていた。だがそれもすぐにしまいこまれ、試すような表情になる。
「『王』は見よう。至るのは暴発か進化かを、な」
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「……ぁ…あ、ああ…」
蘭太の喉からは掠れ声しか出なかった。
今蘭太は影に覆われている。スチールの鉄の嵐を背に受けて蘭太を庇った、雷花によって。
満身創痍の体を無理やり動かし、再び変身解除され倒れ込んでくる雷花を抱き込み支える。
「おい、雷花!雷花!しっかりしろ!おい!」
涙交じりの声で蘭太は叫ぶ。
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蘭太と雷花の様子を見ていたスチールは再度鉄の嵐を生成しようとするが、
「テメエエェェェェェクソッタレガぁぁぁぁぁ!!!」
暴走一歩手前の怒りを滾らせた火鉈の爆炎を纏った拳を受けた。
「ぐっ!チッ!禁忌のくせに目障りなんだよ!」
毒づき火鉈に鉄の嵐のターゲットを変えて打ち込もうとするが動かなくなる。
「あ?グラビティ!?」
「スチール。殺りすぎだ。俺が0なのにお前だけ殺しをするのは気にいらん。これ以上殺したらお前を潰す」
ついにグラビティからも抑制を受け、とても蘭太を追撃をする暇などなかった。
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「…あ。蘭太くん、よかった、生きてた…」
「何も良くない!あんたがこんなになってるのに良いわけないだろ!」
「私はほっとしてるよ…?だってちゃんと約束守って、預かったものを返せるんだもん…」
「…え?ますます意味がわからない…!俺はあんたにあげたものなんてない…!」
「あるよ。あなたは忘れさせられているから分からないだけ」
雷花が蘭太の頭を挟むように手を添え、蘭太の額と自分の額を触れさせる。
「え…、何、これ?」
「そういえば、覚えてる?旧博多支部にいた時に何か変わった夢を見たこと」
囁くように雷花は言う。
覚えていた。
寝ている時に今まで一度も見たことない光景が流れてきて、起きると雷花がそばで自分の腕を掴んで寝ていて、そのあとルルにお仕置きを食らうあのショッキングな出来事はそうそう忘れられない。
「でもなんでそのことを知ってるの?」
「ふふ、なんででしょう…?でももしかしたら返すことでわかるかもね…?」
雷花の体が光る。それと同時に蘭太の意識は朦朧とする。
どこかへ吸い込まれていくように、再び蘭太の意識は体を離れていく。
どうも、どらっごです。文章作るのって難しいなって最近また思ってます。
うむむ、雷花さんの扱いちょっと酷かったかな…?主要キャラの1人なのに…。
でも、やっとグラビティ君が禁忌達に使ってる空気圧で「禁忌能力者の人間には十分な力量」みたいな感じでわざわざ長ったらしく書いてた意味が分かると思います!
それすなわち…
いえ、ここでは書きませんよ。後の回で書きますので(おそらく次話です)。
(二重妖精って誰のことを指すかはうっすらと分かる…はず!)
後半で書かれてる「ショッキングな出来事」のことについては9話をご覧ください。といっても確かそんなに長くなかったはずですので興味本意で見ていってくださいませ。
ではでは、また。




