16・・・「荒れる暴走、欲望の感情」
気持ち長いかもしれません。でも大丈夫!きっと!
では行きます。
「暴走…!」
スチールが焦った口調で言う。少々遠くにいたグラビティも余裕のない表情である。
途端、蘭太の姿が搔き消えた。と思った時にはスチールの目の前にいて彼の装甲を掴み回りながら投げ捨てるように地面に叩きつける。
威力が強いためスチールは地面を跳ねるように転がったがクッションのようなもので止められた。
「いっててて…」
「スチール。これはどういうことだ」
グラビティが空気圧でスチールを止めたのだ。だが今の彼にも余裕そうな雰囲気はない。むしろ『なんてことをしてくれた』という様子である。
蘭太は追撃しようと来るが同じくグラビティの能力により止められる。
「見ての通り暴走しちまった。最悪なパターンだぜ…」
「ああ最悪だ。お前が煽りに煽ったからだな」
「もしかして…キレてる?」
「ああ」
「サーセン…。てな訳で治すの手伝ってくれないっすか?」
「サポートはする。頑張れ。あと殺す気でやらないと返り討ちに合うだろうから遊びはもう終わりだ」
「んなのわかってるよ…」
グラビティの空気圧が解ける。
「おっと…、じゃいくぜ、治療してやらぁ!」
とスチールが突っ込み蘭太との戦闘を再開する。
それを見ていたグラビティは
『怒りはやはり危険だな…最も暴走の可能性が高い…また殺さないといけないのかもな、前のやつみたいに…まあとりあえずはスチールに任せておくか』
と思っていた。ところに、
「でやぁぁぁぁ!!」
雷光を纏った雷花が攻撃を仕掛ける。
いつも通り空気圧で止めようとするが何故か雷花に対する効果が満足に出ない。
ちなみにグラビティは禁忌能力者の人間になら充分効く程にセーブして能力を使用している。それ以上にすると誤って潰しかねないからだ。
『何者だこいつ?』
仕方なく腕で受ける。だが雷花の攻撃が圧倒的に速くグラビティに何発か当たる。
「チッ、めんどくさい…!」
数発受けてなんとか両腕を掴んだところで雷花が吠える。
「あなた達、蘭太君を殺す気ってどういうこと!?」
「文字通りだ…。奴は前の、その前の『怒りの厄災』と同じように暴走した。怒りの暴走は最も収まるまでに時間がかかるし、2つ前の者は1大陸を滅ぼしたことがある。それを再発させないために前のと同じく今ここであいつを始末する…!」
「前のとか意味わかんない!蘭太君は蘭太君!あなた達の勝手な都合で死なせてたまるもんか!」
「貴様は厄災級の暴走による蹂躙を見ていないからそんなことが言える!故郷を奪われたことがないからそんなことが言える!」
そこで空いていた足で雷花のがら空きの脇腹を蹴り飛ばす。
「ぐぅっ!」
「2代前の『怒りの厄災』の暴走は旧南米大陸を溶岩の海へと変えた…そこにあった街も人も動物も植物皆全てを呑み込んでな…!」
グラビティは旧南米出身であった。
人々に距離を置かれながらも出身地のことは好きだった。
だが厄災が起こった。当時の怒りの厄災・溶岩の能力者がなんらかの理由で暴走し、何者も寄せ付けない一方的な破壊活動を行った。そいつに呼応するように地面からは絶えずマグマが噴き出し、流れ、大陸にあったものを壊していった。グラビティの故郷含め。
当時その場にいたグラビティも抵抗すべく戦ったが挑んだ8回の戦闘のうち7回が能力も満足に使えず瀕死になるほどの返り討ちに終わった。そして最後の8回目で一瞬の隙を突き空気圧のベクトルを最大限に増幅し外側から潰したことで被害は旧南米大陸の壊滅にとどまった。
現在旧南米大陸は火山岩のなどの採掘場として活用はされているがとても人が住めるような環境ではない。
「だから殺す。今分かったがあいつは危険だ」
「そんなこと…させない!」
そこに他の禁忌能力者も加わった。
一方蘭太とスチール側。
「がぁっ!」
完全にスチールが劣勢だった。
なぜなら攻撃が効かないのだ。いや具体的には攻撃は当たるが何も反応がなく淡々とこちらを攻撃してくるのだ。
「意識を飛ばすってそういうことか…!感覚もねえのかよ!」
そう。暴走状態の能力者は感覚を受容する意識がない。故に意思疎通はまず不可能だし、攻撃に一切の手加減をしない。
その証拠に一撃一撃が繰り出されるたびに容赦なく水蒸気爆発が立て続けに発生し、製鉄所跡は完全に瓦礫の山になり、一部は吹き飛んだり流れていっている。
そんな攻撃を受けてもまだ変身解除に至らないスチールも凄いが彼は誇る余裕はない。
と、そこに蘭太が無言で拳を振るう。
「おっと!もうだいたい軌道は読めた!」
一瞬空いた隙を突き後ろに回って腕を抑える。
「よし…!止めッ!?」
しかし蘭太の翼がスチールを鷲掴みにして前方向の地面へ投げつけ、倒れたスチールのすぐそばの地面へ拳を打ち付けて爆発を起こし吹き飛ばす。
「ぐぁぁぁぁ!!」
ドサッと再び地面に叩きつけられたスチールへ追撃しようと蘭太は歩き出すが…
何かに押さえつけられるように動きが止まる。
雷花達と戦っていたグラビティによるものだ。
止むを得ず再び雷花以外を抑え付け、なんとか雷花をさばきながらグラビティは言う。
「死ね…!!」
そして現状フルパワーの空気圧が蘭太を襲う。
「ああっ!!」
と雷花の小さな悲鳴が聞こえた。
さすがの蘭太もだんだん圧に押されるように縮こまっていく…が
「グゴォォォォォァァ…」
龍のそれのような呻き声を喉から漏らし、
「ゴガァァァァァァア!!!!」
咆哮とともに圧力の拘束をぶち破る。
これにはグラビティも驚かざるを得ない。
『なんだアイツ!?2代前のやつとレベルが違う!!』
隙を突いてやったはずだ。なのに破られた…!?
気がつくと蘭太はグラビティを見ていた。そしてグラビティに攻撃を仕掛ける。
「よくも蘭太君を!」
そこに雷花も来る。だが今のグラビティには蘭太の他に相手をする余裕は無いに等しかったので禁忌能力者を縛る拘束を解き、
「邪魔だ女!」
と言って自身の能力で増強された拳を1発雷花の腹に打ち込み、その力を流させないため飛ばないように逆方向からも空気圧をかける。
「ごほっ!」と声を上げ雷花は少し後ずさり倒れて光に包まれ変身解除させられた。
「雷花さん!」
と舞が駆け寄ったのを見つつグラビティは蘭太の方を見る。
そこに蘭太の水蒸気を纏う攻撃が来た。
受け止めたグラビティとの間でまたも水蒸気爆発が起こった。
爆煙の中から衝撃のぶつかり合う音が響く。
そして爆煙が晴れると同時にグラビティが投げられるようにスチールの方へ飛んでいき、轟音とともに倒れる。
「げっほっ!ごっは!」
2人の厄災級能力者が倒れている様子を一切表情を変えず蘭太は見つめ、そちらに歩き出したところで、
「蘭太!もうやめろ!」
我慢できないというふうに剛牙が蘭太にタックルするようにしがみついた。
だがそれに対する蘭太の反応は鬱陶しそうに払いのけるだけだった。それだけで剛牙は吹き飛び瓦礫の山にぶつかり同じく光に包まれ変身解除させられた。
「ぐぅあっ…!」
「剛牙!無茶すんな!」
火鉈達が駆け寄る。
そんな禁忌能力者達の様子を見ながらスチールは思う。
『異常だな…厄災級2人をあしらい、禁忌を軽くワンパンか…凄えな…』
感心していた。そして、
『やっぱ、欲しいよなァ!?』
強く欲した。故に彼の感情が炸裂し、スチールの左目が先ほどにまでないレベルの輝きを放つ。
蘭太はこちらに近づいてきている。
そんな中スチールはグラビティに言う。
「へっ…グラビティ、あとは俺に任せろ」
ちらりとグラビティはスチールを見るが、納得したように頷き、下がる。
そして蘭太の直線上にスチールは立ち、
「来いよ、ガキが…!」
あろうことか煽った。それが聞こえたかのように蘭太は攻撃を仕掛けるが、スチールは難なく避け、一瞬隙の空いた蘭太の背中に触れて一言、
「スティール」
と言った。
だが特になにも起こらない。
蘭太の次の攻撃が、さっきまでの破壊っぷりが嘘のように「ぽすっ」とスチールに軽く受け止められていること以外は。
「!?」
少し遠くで剛牙の処置をしていた火鉈は驚く。他の禁忌能力者も同様だ。
皆総じて「なにが起こった?」という顔をしている。
そんなことは気にも止めずスチールは意識のない蘭太に
「どうしたよ?急に貧弱になったなぁ?」
と言いながら蹴り飛ばす。ものすごい勢いで蘭太は瓦礫にぶち当たる。蘭太の口からは血が流れていた。
「まあ当然か?俺が奪っちまったもんな、お前の物理パワーを」
能力奪取。
これがスチールの、「欲望の厄災」の能力だ。
もともとこれはスチールの鉄の能力による「鉄を含むものを引き寄せ奪う」というものだった。それがスチールが「欲望の厄災」になったことで強化され、「『欲望』の感情が一定以上に達したとき、魂や心を除く望むもの全てを奪う」ものになったのだ。
ちなみに奪ったものを同時に維持できるのは7つまでであるが、これでも脅威になる。
そしてここに今最強の鉄の防御力と「怒りの厄災」による現状最強の物理攻撃力を兼ね備えた能力者が誕生した。
「さぁて、いけねぇガキは処理してやんねぇとなあ…!」
ひえええェェェ!(甲高い声)
そろそろひと段落つくと思ったのにまだもう少し続きます!字数かかりますねぇ!
どもども、どらっごです。
リアルの友達に、
「スチールくん厄災級の割に弱くね?硬いだけの禁忌じゃんHAHAHA」(特に後半、やや表現極端です(笑))
って言われました。
そんなことないの!ちゃんと強いです!じゃなきゃ厄災級じゃないんです!活動報告を見れたら見てください!
次話はスチールくんがんばらせます!
筆者もがんばります!
ではでは、また!




