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15・・・「荒ぶる厄災」

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃん!(おふざけ)


これぐらいにして、行きます。



「グルルルゥゥァア!!」


蘭太の怒りで増幅された力をもって振るわれた拳がスチールを捉える。

吹っ飛んだスチールはまた壁にぶつかるが、流石の耐久力である。まだ立てるほどの体力が残っている。

だが段々と地上での平面戦は厳しくなってきた。スチールより圧倒的に機動力の高い蘭太はそのスピードを生かしほぼ常に死角を取って攻撃してくる。その上激しい戦いによって瓦礫が積み上がっているためスチールにとっては非常に動きづらいのだ。


「だぁもう!こいつすばしっけぇ!!チキショー!止まるってこと知らねぇのか!?」


スチールははたから見れば右往左往している人のようだった。あっちへ向いては攻撃を受け、こっちを向いても攻撃を受けるといった状況が続いているからだ。

なんとかスチールも攻撃はしているが当たりはしていない。

しかしそれも蘭太の翼の爪部分がスチールの腕を抑えつけ拘束したことで終わりを告げた。

ここでスチールはずっと不思議に思っていたことを尋ねる。


「お前、なんで翼を腕みたいに使えてんだ?いくら翼を持つ厄災(ドラゴン)級でもそんな風に使えはしないぜ?!」


「…知るか。それにもうお前は死ぬ」


この時の蘭太は怒りで冷静さを欠いていた。

蘭太の手がスチールの胸の部分に触れ、右目が強く光る。


『おいおい、生体干渉能力を使おうってのか?自分を見失ってんな…』


だがスチールは慌てなかった。

もしこれでスチールを殺せていたら蘭太は自分を呪い続けることになっていただろう。


「爆ぜろ」


と蘭太が殺気の篭る囁き声で言う。

ところがスチールの身には何も起こらなかった。

困惑したのか拘束の力が緩んだことにスチールは気づき、蘭太を突き飛ばす。


「ぐっ!」


「残念だったな。知らないみたいだから教えといてやる。生体干渉能力は万能じゃない。同じ厄災級には効かねぇんだよ」


そう。これを知っていたからスチールは慌てなかったのだ。

生体干渉能力は厄災級の権限による能力である。そして同等の権限を持つ厄災級同士では対立し打ち消し合ってしまうという制限をもつ。

だから先ほど蘭太の生体干渉能力が発動したにもかかわらずスチールには何も変化がなかったし、取り乱すこともなかった。


「ざけんな…なら…お前の変身を解いてやるッ…!」


尽きぬ怒気を滾らせ蘭太は更なる攻撃を仕掛けようとするが、


「おおっと、ここじゃやりにくい。俺ぁ空へ行かしてもらうぜッ!!」


突き飛ばしたことで距離を取れていたスチールはいつのまにか空いていた天井の穴から飛んでいく。


「オメ待てゴラァ!!」


追いかけるべく蘭太も同じ穴に飛んでいく。



ーーーーーーーーーーーー



禁忌側。


「畜生めぇ!あいつらムチャクチャすぎんだろ!戦いにくい!」


「それ同意です!」


火鉈の愚痴に舞が答える。


先程までは火鉈と雷花しかろくに動けなかったがグラビティが興味で拘束を解いたため今は19人全てが動ける。

だがあくまで拘束が解けただけである。戦況は全く良くなっていない。


それどころか現在新たな障害ができている。

蘭太とスチールの戦いの影響である。彼らのぶつかり合いにより製鉄所跡の構造物がどんどん壊れていて、それが頻繁に飛んでくる。

もちろん頭部などは装甲に覆われているため直撃しても死にはしないが動きを止められてしまう。戦場においては手痛い。


しかし、これはあくまで()()()()()()である。


「『戦いにくい』?やはり禁忌に俺の能力はそんなに対処しづらいか」


「ああもちろんテメーのが1番だが…呑気には言われたくねぇな…」


ここで火鉈はさっきから思っていた文句をくわっとぶちまける。


「飛んでくる()()()避けさせてるテメーにゃなぁ?!!」


ちなみにグラビティは一切動いていない。動く必要がないからだ。

彼は飛んでくる瓦礫を覆う空気の圧力に干渉している。空気の圧力でグラビティ主観の外側を向いているベクトルを増幅する事で当たらないようにしているのだ。


そしてタチの悪いのはそんな所業をしておきながら


『こんなの出来て普通だろ?』


という表情をしていることである。あとたまに瓦礫を頑張って避ける火鉈達を見て鼻で笑っている。


「ぬぅぅぅ…テメーマジでもっかい殴ってやる…!」


火鉈達は攻撃を再開する。



ーーーーーーーーーーーー



スチールより軽いため高く飛び上がった蘭太がなぐように放った高圧水流がスチールには避けられたが延長線上にあった海へ直撃し、真上へ向けて爆発するように水が吹き上がる。

対するスチールは空気中の鉄分を結晶化して作った砂鉄のようなものをガトリング砲のように蘭太に浴びせようとするが、これも避けられる。上に放ったため直接の被害はないだろう。その応酬が何度か続く。

その応酬に痺れを切らしたかスチールが蘭太へ接近し、鉄の装甲に覆われた腕を振るう。


対する蘭太は翼で受け止める。


「あ"!?ソレ受け止めんのにも使えんのか?!オメどんな神経してんだよ!」


「知るかぁ!」


空いているスチールの胴体に拳を打ち込もうとするが余った手で抑えられる。しかし蘭太にはまだ腕が残っているのでそれを使って今度こそ殴り飛ばす。


ちなみに蘭太は怒ってはいるが暴走状態ではない(暴走については0話参照)。故に言葉は通じるが説得は厳しいだろう。


「ごっふぁ!」


落ちはしないがスチールは後退させられる。


それを横目で見送り蘭太はちらりと上を見る。そこには少し黒くなった雨雲があった。そしてそれに向かって飛んでいく。


「ハッ!そういうことか!おもしれぇ受けて立ってやらぁ!」


スチールは1度製鉄所跡の床に降り立ち鉄を引っ張り出して片足につけ、ドリル状にし再度空へあがる。


「こいよ….!」


蘭太は雨雲の周りを猛スピードで旋回し、雨雲の一部を切り取りその水分に干渉して1つにまとめていく。

まとめられた水分は先端の尖る棒のような形をとりスチールへ向け突進する蘭太の足と繋がる。その水は凄まじい勢いで前後を循環し、先端に高圧水流を再現している。


斜め上からの蘭太、斜め下からのスチールの突進蹴りがぶつかる。


「「オラぁぁぁぁぁ!!」」


5秒ほどだろうか、拮抗状態が続いたのは。

スチールの足につくドリルが削れてきていた。絶え間なく続く高圧水流に耐えきれなくなっていたのだ。

そしてついにスチールのドリルが壊れ、蘭太の蹴りがスチールを捉えた。その勢いのまま製鉄所跡の屋根を突き破り地面へとぶつかる。

着地と同時に水蒸気爆発が炸裂。今度こそ完全に製鉄所跡の屋根が全て吹き飛び、炸裂して残った水が水流のなって地面を流れて行った。


少し距離を置いたところから、


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


という悲鳴が聞こえたのはきっと気のせいである。



蘭太の高圧水流を用いた蹴りを受けてなお変身解除へ至らないスチールはまだ立ち上がり、より一層その左目を光らせていた。


「いいじゃねぇか…!こんなにも劣勢になったのはいつ以来だ!?」


「しらねぇよ…!」


蘭太の口からは鬱陶しさを含む声が漏れた。

実は蘭太は非常にストレスを負っていた。この戦いはケルベロスを殺ったスチールに後を追わせるか罪を認識してもらうかを目的として始めたものである。だが一向にスチールは変身解除する兆候を見せないどころか「もっと」だとか「俺を満たせ」だとか言い出し、正直逆効果になっていた。

そしてそのストレスが…、


「お前ふざけてんなよ…!快楽で生物を殺しやがって…!」


ついに、


「お前は絶対にぶちのめしてやる!」


スチールへ向けて走り出したところで頂点に至った。


「がっ!?」


突然蘭太の心臓が異常なほどの早鐘を打つ。そして頭痛が響き、胸と頭を抑えながら蘭太がよろめく。

スチールが訝しむような表情をする。


『なん、だ…これ…!意識が…いしきが…』


頭痛と心臓の異常な速さの拍動はまるで蘭太の意識を体から弾き出そうとしているようだった。


『と…ぉ…のく……』


蘭太の動きが止まる。目を閉じ、頭と腕がだらりと垂れ下がったまま立った状態で。


「こいつ…まさか…?」


スチールに焦りが生じる。まずいことが起こると本能が訴える。


それを証明するように、再び頭が持ち上がり開かれた蘭太の両目に光が…無くなっていた。右は水色、左は赤と色はあるが輝きがなかった。それは不気味で、恐れを抱かせるほどに。


「暴走…!!」


スチールが焦った表情で呟いた。






どうも、どらっごです。


蘭太君とスチールの蹴りがぶつかるシーン、ライダーキックをイメージしながら書きました。皆さんも是非想像しながら読んで見てください。


あと、なんか書きながら思ったんですが殺しをした相手を同じく殺しをした蘭太君が始末しようとしてるなー、ちょっと不思議だなーっと思ったんですよ。でも大丈夫。殺した時の状況が違うので☆(ヤバイやつ発言してるっぽいですが筆者はとてもとても健全です。多分。)


ではでは、また。

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