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14・・・「厄災×禁忌」


スチールに続き、グラビティも共鳴変身した。

だがグラビティはレベルが違った。変身しただけで身がすくむような殺意が溢れ出ているのだ。殺す気は無いはずなのに。


「さあ、誰から来る?ちょうどいい機会だぞ?お前らは命の保証がある中で厄災(ドラゴン)級との戦いを体験できるんだからな」


と言いながらグラビティは少し前のことを思い出していた。


ーーーーーーーーーーーーー


ドゴォォォォンという音が響いた。


「お?ここん中でやり合ってるな…?てことは…?俺らの出番だな!」


「スチール」


グラビティは子供のようにスキップしながら戦場へ行こうとしたスチールを呼び止める。


「ん?なんだ?」


「禁忌どもを殺すのはありか?」


スチールは「隣の者」達を拘束している主犯だ。ケルベロス達に1番憎まれている。故に反抗し、隙あらば殺そうとする奴もいる。

この理由と、スイッチが入ることによりスチールは何かは殺めるだろう。だが、


「いや、なしだな。本当に『怒りの厄災』なら殺しすぎると暴走する。マジで俺らに手がつけらんねえ状況になる」


それに…、とスチールは続ける。


「殺すのOKならすぐに終わっちまうじゃねぇかお前の場合。それじゃつまんねぇよ」


ある意味ごもっともなことだった。


「チッ、ことごとく面倒ごとを押し付けやがって…楽しくなかったら覚えとけよ…?」


「……だ、だーいじょうぶ大丈夫」


少しスチールの顔が青ざめた。実はこの2人、グラビティの方が順位は上である。グラビティはあくまで暇だったのでスチールの企画に()()()()()()()()()()立場なのだ。

その上でスチールがグラビティにタメ口全開で指示や話をしている理由は企画主というのもあるがグラビティが厄災級内での立場のことをあまり気にかけていないからだ。


「ほんじゃ、行きますか」



ーーーーーーーーーーーーー



「……誰もこないのか?」


思い出すのに1分はかかっているはずなのだが一向に誰もかかってこない。グラビティは少し退屈な気分だった。

聞こえるのはスチールと『怒りの厄災』の叫び声とぶつかることにより起こる爆音のみ。


「……つまんねぇな…」


だんだんいらいらしてきた。スチール達は激しく戦っているのにこっちはただ立っているだけである。非常に退屈である。


「チッ…ならばこちらかr?」


こちらから行くぞ、そう言おうとした時に炎の禁忌能力者が業火を纏いタックルを仕掛けてきた。

ここでグラビティは自身の能力で止めることを考えたが、気まぐれで受けてみることにした。


ドガァァァン!!という音とともにグラビティの身体が後ろへずらされる。

態勢が少し崩れたため立て直すと炎の禁忌能力者が追い打ちをかけるとこだった。


『こいつ…禁忌のくせにやるな…普通の禁忌とは違うのか』


だが2度も無抵抗に受けるのもアレなので今度は能力を使う。

すると炎の禁忌能力者は固まったように動かなくなる。気圧に干渉し体を抑えつけているのだ。


「お前、なかなかやるな」


動けない禁忌能力者にそう話しかけると、


「やっぱアンタだったか…あの時の男は!!」


悔しさと憎しみの混じる声がかけられた。

そこで気づく。


『ん、この顔…既視感がある…』



ここで説明を入れておこう。炎の禁忌能力者こと影宮火鉈には故郷がない。いや、なくなったのだ。一夜にして。


彼はもともと旧群馬のとある町に住んでいた。


小学生の時のある日、火鉈は学校の修学旅行で旧群馬を離れていた。

そして帰ってきたとき、いつも通りの景色が…なかった。

全てがペシャンコになっていた。まるで立方体の図形が正方形に変わったかのように。人々がどうなったかはよくわからない。


だが潰れた町に唯一立体で残る影があった。そいつは黒い装甲を纏った男で、そいつが町に何かしたのは間違いなかったので、復讐すべく当時の火鉈はすでに会得していた共鳴変身をして男に攻撃を仕掛けたが見えない壁があるかのように全く男に届かなかった。


なお、ハーフフェアリーが変身能力を使えるようになるのは個人差はあれ基本10代からである。


町をやった相手に1人で攻撃を仕掛ける勇気は素晴らしいが、()()1()()()()()()相手である。ようやく変身できるようになった火鉈に勝てる可能性はなかった。

案の定敗北してしまったがその男は何を思ったか火鉈を気絶させるに留め、殺しはしなかった。

次に目覚めた時にはなぜか今のFG旧東京本部にいて、彼らとの話し合いの末所属することになり今に至る。


FGという大きな組織のメンバーとして活動していればいつかあの男と会えるかもしれない、と考えて。


そしてその男は今目の前にいるグラビティと朧げな記憶でも分かるほど一致していた。



「ああ、お前はあの時の子どもか」


「そうだ、また会えて嬉しいです、よッ!!」


業火を迸らせ火鉈は気圧の拘束から抜け出そうとするが出られない。


ここで、火鉈の動きに触発されたのか他の禁忌能力者も動き遠距離攻撃を仕掛けるが全て()()()()()()()()()()()()()()ずれて着弾する。


お返しとばかりにグラビティが横になぐように腕を振ると火鉈を除く禁忌能力者が壁に磁石のようにくっついた。


「なッ!?なにをした?!」


「ん?ただあいつらにとっての重力みたいなものを壁に向けさせただけだが?」


「あっ、そうか」と続けてグラビティは気だるそうに話し始めた。


「自分のことは自分で説明しなきゃいけないんだった。全くあのスチールめ。えーっとだな、俺は圧力や引力のベクトルを操作する概念能力者だ」


概念能力者。それは時間、空間といったモノとして存在しないものを自身の能力とする者のことである。

モノを司る能力者と違い彼らはその能力を忌み嫌われている。能力の対象に実体がない上、かなりの脅威になるものばかりだからだ。

故に彼らは普通の能力者と距離を置くためある方法をとる。

それはオーラ。だんだんと無意識に発せられるようになる、殺気である。

これによりグラビティは昔から極端に人に避けられ続け、厄災級だったこともあり『飽きの厄災』となった。


「そして、先に言っておくと俺の生体干渉能力は『体内からの圧力を暴走させて破裂させる』と言ったものだ」


生物は常に1気圧の重さがのしかかっている。それでも平気なのは体内から同じだけ押し返しているからだ。例えるならば同じ力で板を押し合っているようなものである。その片方、体内側から押し返す圧力のベクトルの値を極端に増やすというのがグラビティの生体干渉能力である。


「そんなの出鱈目だろ!」


「ああそうだな、だから使わないでおいてやるよ。その上で、お前らは俺を楽しませれるのか?」


グラビティは生体干渉能力を使わなくても禁忌能力者20人を軽くさばいている。まともに戦える気がしない。


『けどよ…、せっかく会えたんだ…!1発だけでも殴らなきゃ損だろぉ!』


火鉈から先ほどを上回る炎がさらに迸る。

それはグラビティの圧力の拘束を突破しかけていた。


「ん…!?突破するか…!ただの禁忌には超えられぬこの拘束を…!」


グラビティは少し動揺していた。いくら手加減とはいえ禁忌レベルの人間には手も足も出ないほど(具体的には本気の5分の1程)の力は使っていた。それを超えるということは、まさか…?


『超えられる!』


そう確信した火鉈は、


「今の俺には!テメェ()()()殴れる気しかねぇぇぇぇ!!」


という叫びとともに拘束を突破しグラビティを殴り飛ばした。


爆炎の拳を受けたグラビティは少し転がり、立ち上がろうとしたところで一筋の雷光からの追い打ちを受けた。


その雷光の正体は雷花だった。

だが何故だろう。どうしてここにいられるのだろうか。


「雷花!?壁にくっつけられてたはずじゃ?」


「え?でも割と簡単に脱出できたよ?」


「は?」


「え?」


自分が現状のフルパワーを出してようやく突破出来た拘束を抜け出したはずなのに火鉈よりケロッとしている雷花は何かおかしくないか?と火鉈は思っていた。


そうこうしていると今度こそグラビティは立ち上がり、金色に輝く左の黒目部分をさらに光らせた。口に笑みを浮かべて。


「フフフッ…!悪くない。俺の拘束を突破可能な禁忌というのは」


「オホン、どうだ?楽しいか?好評なら仲間の拘束を解いてもらおうか」


雷花のことは置いておき、グラビティを煽るつもりで火鉈は言ったが、思ったよりあっさりとグラビティは拘束を解いた。


「いいだろう。20人で俺をもっと楽しませろ。そして俺の渇きを潤せるよう頑張れ」


「上等ッ!!」


そしてようやくグラビティと火鉈達との戦いの火蓋が切って落とされた。



どうも、どらっごです。


蘭太くんとスチールの戦いだけ書くと火鉈達が放ったらかしにされて悲しいことになるので書かなくてはと思って書いたところ1話分使っちゃいました(笑)


ちなみにグラビティさん。

手加減してます、遊んでます。決して劣勢なんかじゃありません!

何故か?

厄災級だからです。


ではでは、また。



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