0・・・「memory of zero」
とある施設、そこに少年はいた。
彼にはかつて仲間という名の友達がいたという。
収容されていながらも、いつも明るく、いつも楽しく。
そんな日々が続いていたーーーーーーーーーあの日までは。
少年は災いになってしまった。
ただの禁忌レベルより若干上級なだけだったのに、本来1つの個体に1つのしか持てないはずの能力を複数個持てるようにする実験や、ドーピングのようなものといったものをその小さな体に施され続けた。
その結果、彼の体は耐えきれず暴走してしまった。
少年は壊し続けた。何もかも。目の前の形あるものすべてを。視界に入ったものを片っ端から。
施された実験は小さな体には大きすぎる負荷だったのだ。
そして破壊の限りを尽くした後、彼は幸か不幸か意識が戻った。
「あれ……俺は、なにを…していたんだ…?」
暴走というのは、過度な負荷により、意識を強制的に飛ばし、全身・そして脳のストレスを解くために本能のままに暴れまわる状態のことである。
「あぁ、そうだ、みんなは、みんなはどこへいったんだろ…?1人は寂しいよ…」
暴れ過ぎたのかヘトヘトになった体を引きずりながら、あらゆるものが崩れ落ち、壊れ、荒野のようになった場所を歩き続け数分。
そこにはなぜか血肉が一際多かった。そこはかつて施設があり、人が寝るときに使う寝室棟のあった場所だった。
そして、彼は見てはいけないもの、後にまでも引きずるトラウマになるものを見た。
すなわちーーーーーーー
施設の子どもたち全員と、大人たちの死骸、そして血の海となった水面に映る自分の…………
少し黒ずんだ血塗れの服。
そして彼はようやく、自分がどんな取り返しのつかないことをやらかしたのかを悟った。
「あ…ああ…そんな…
うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
それは喉が裂けんばかりの巨大な絶叫だった。行きすぎた力によってすべてを、大切なものとひっくるめて失ってしまった哀れな子の叫びだった。
彼は頭を抱えながら地面に額を付け、膝をつき嘆き続けた。どれだけ嘆いたとしても失ったものは戻ってこないというのに、どれだけ嘆いたとしても自分がやったということに変わりはないというのに。
やってない。俺はやってない。こんなことをした感覚がないんだ。なのになぜ…?
「違う!違う違う!俺じゃない!俺はこんなことするはずがない!仲間すら殺すなんて俺がするはずない!!」
ーーーーーー嘘つけよ。お前はやったんだよ、暴走中に仲間すら敵と見なして殺した。お前はれっきとした大量殺戮兵器になったんだーーーーーー
何かが心の中から囁いてくる。
「黙れェ!俺は、俺は人間だ!兵器なんかじゃない!」
ーーーーーー人間?違うね、お前達は元から人間じゃないよ。そしてその中でもお前は実験を受け続けこうなったーーーーーー
「………っっ!」
ーーーーーーお前は予想していたはずだ、こんな惨劇が起きることを。その上で受けた。それを認めないのなら、これはお前の愚かさで引き起こされたものだーーーーーー
「なら、なら!」
ーーーーーー自殺でもしてやる?だめだなぁ。それは許されない。お前は生きねばならないんだよ。罪を償うため、その力が本当に必要なものなのだと証明するために。そして、失った仲間の分…なーーーーーー
声はやがて消えていった。
彼には、苦しさが残った。
こんなに辛くても、悲しくても、後悔にまみれていても、生きなければならないという苦しさが。
そして、次第に自分はそれを振りまくものなのだと思えた。
そういえば施設の大人たちが言っていたことを思い出した。
こんなときにか…。
「この実験には我々の願いがこもっている。この世界を変えるための。」
「君は未来のための希望だ。」
「我々ではできなかったことを君なら成しえてくれると、そう信じて君に『これ』を託す。」
と。
「…なにが未来のための、だ。一緒にいた人達を不幸にも死なせて…。これじゃあまるで人の姿をした災いじゃないか。まあ、兵器じゃないだけマシかもね……」
だが当時の少年には分からない。
施設の大人たちが言っていたことの意味など。そのままの意味でさえも……
それから彼は塞ぎ込み、自分を「災い」と自称するように、かつ、嘲笑するようになった。
1番災いを恐れ、嫌うのは、いつだって災いそのものである。
これが今や多くの人が存在は知っているが所以を知らない、とある小さな厄災の始まりである。
この拙い文の作品…見てくれてありがとうございます!
ちなみに書き始めた経緯なんですが、リアルの友達に「お前も書けよ」って言われたんです(責任押し付け。ひど(笑))。
あと、あらすじの文とこの回関係なくね?とか思ったそこのあなた。
まだ0だ。1は次からだ!
ではここら辺にして……