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砂糖づけ姉弟

二人で見上げるクリスマスツリー

作者: 海獅子

ほぼ、一年ぶりの読み切り作品です。

今回、引っ越しの準備で忙しい上、スランプ気味でナカナカ上手く出来なかったのですが。

どうか、ご覧ください。


 点滅するイルミネーションが幻想的な、クリスマスイブの繁華街。


 そんな繁華街の、華やいだ通りを僕が歩いていると。




 「ねえ、ちょっと待って・・・」




 通りを歩く僕の後ろから、呼び止める声が聞こえた。




 「ん? どうしたの姉さん」


 「ケンちゃん、歩くのが少し早いよ〜」


 「ああ、ごめん、ごめん」




 僕の後ろで、女の子がそう言って抗議する。


 女の子は、茶色のコートと臙脂(えんじ)のスカートに黒いストッキング、それから()げ茶のブーツ。

ウエーブが掛かった長い髪をコートに入れた上に、首にはクリーム色のマフラーを巻き。

整った、可愛い系の綺麗な顔を少し膨らませて、不機嫌そうにしていた。



 この不機嫌そうにしていた女の子は、僕の姉である。


 今、駅前広場にある、巨大クリスマスツリーを二人で見に行く所だ。


 普段は歩幅を合わせて歩いているけど。

時々、注意が()れると、つい、いつもの自分のペースで歩く事がある。


 華やかな風景に気を取られている内に、そうなってしまったらしい。




 「えいっ!」


 「えっ!」




 姉さんの様子を見た僕は慌てて歩幅の合わせ、隣に寄り添うと。

突然、姉さんが僕の左腕に飛び付き、自分の腕を絡ませる。




 「ね、姉さん!」


 「へへへっ〜」




 腕を絡ませながら体を密着させ、頭を僕の肩に乗せた。


 姉さんの身長は頭一つ低いから、丁度、僕の肩に乗っかる形になる。


 また、僕の肘あたりに柔らかい感触を感じた。




 「ちっ、ちょっと〜」


 「こうすれば、一緒に歩けるでしょ♪」




 僕の反応を無視するかの様に、一転してイタズラっぽい笑顔になる姉さん。




 「もお〜」




 文句を言いつつも肩に掛かる重み、腕に感じる柔らかい感触、鼻先に(ただよ)う甘い匂いに。

僕は、まんざら悪い気はしなかった。


 若干、歩きにくくなったが。

それらを感じながら、僕と姉さんは駅前へと向かう。




 **********




 僕と姉さんは、近所でも評判の仲良し姉弟だ。

しかし元々は、血の繋がりが無く、親同士が再婚した際に姉弟になったのである。


 姉さんとは初めて会った時から、何故(なぜ)か気が合い、いつも一緒にいる事が多かった。 


 それは、思春期になってからも変わらず。

その余りの仲の良さのため、友人達からは”一線を超えるなよ”と、何時(いつ)もからかわれていたが。

彼らが言う言葉は、全くの荒唐無稽(こうとうむけい)な訳でも無かった。


 何故なら、僕は姉さんに姉以上の感情を持っていたからである。


 昔は、一緒にいると楽しいと言う思いだけであったが。

成長して、綺麗になっていく姉さんを見ている内に、それとは別の思いも芽生えていった。


 女性らしい膨らんだ胸、細い腰、大きなお尻を見ると、ドキドキしたり。

柔らかく、抱き心地の良い体を、いつまでも抱き締めていたいと思ったり。

滑らかな髪をずっと撫でたり、指で(もてあそ)んでみたくなったり。

その綺麗だけど可愛い顔を、ずっと(なが)めていたかったり。


 それらを感じている内に、姉さんに対する感情が次第に姉弟の枠を超えてしまった。


 一方の姉さんも昔以上に、僕に過剰に密着したり。

熱い視線で、僕を見つめてきたり。

あるいは、密着した時の反応を見て一喜一憂したりと。

明らかに、僕に対する態度が世間一般の、弟の物とは異なる物になっていた。




 **********




 「うわ〜、きれい〜」




 しばらく腕を組みながら歩くと、目的の駅前広場へと着く。


 陸上のトラックほどの広さの広場の中心に、高さ10mほどのツリーが立っていて。

イルミネーションの点滅とクリスマス特有のデコレーションが、冬の透明な空気の中、非日常的な雰囲気を(かも)し出しており。


 そのツリーの周囲を、カップルや家族連れを取り囲んでいた




 「ねえ、もっと近くにいこ〜」




 そう言いながら姉さんが、僕の腕を引いてツリーの方へと向かおうとした所。




 「きゃっ!」




 歩道の段差に(つまづ)いたらしく、姉さんが小さな声を出しながら倒れようとした。




 「あぶない!」


 「(ギュッ!)」




 倒れようとする姉さんを、慌てて僕は抱き止める。




 「・・・」


 「・・・」




 姉さんを抱き止めると、僕はその状態で固まったまま二人は見つめ合い。 




 「ご、ごめん!」


 「(ギュッ・・・)」




 しばらくして自分の状態に気付いた僕が、慌てて離れようとしたが。

今度は、姉さんの方が僕に抱き付き。




 「ねえ、ケンちゃん・・・。

 お願い・・・、お姉ちゃんをギュッとしてちょうだい・・・」


 「う、うん・・・・」




 僕を(うる)んだ瞳で見詰めながら、そう言って抱擁(ほうよう)懇願(こんがん)してきたので。

僕は、小さく返事をして抱き締めたままでいた。




 「後ろからギュッってして・・・」




 姉さんがそう言って立ち上がりツリーの方を見たので、僕は姉さんの腰を後ろから抱く。




 **********




 「ケンちゃん・・・、きれいだね・・・」


 「うん・・・」




 姉さんを後ろから抱いたまま、二人でツリーを眺めている。


 ツリー眺めながら、横からチラチラと姉さんを見た。


 (きら)めくイルミネーションの中にある姉さんの顔は、何時(いつ)もの何倍も綺麗に見える。


 姉さんはツリーを見て言っているが、僕は姉さんを見て言っていた。




 「ケンちゃんはお姉ちゃんを包めるくらいに大きくなったんだね・・・」




 姉さんは、前を向いた状態で前に回した僕の手を握る。




 「ケンちゃん、もっと強く抱いて・・・」


 「(ギュッ)」


 「はぁ・・・」 




 姉さんが更なる強い抱擁を要求してきたので、僕が強く抱くと。

感に耐えない溜息を漏らす。




 「ケンちゃん・・・、気持ち良い・・・」


 「僕も気持ち良いよ・・・」




 僕の抱擁に、姉さんがそう言ったら。

僕も姉さんの柔らかく抱き心地の良い体に、ついそう言ってしまう。 




 **********




 こうして僕は、抱き心地が良い姉さんを後ろから抱きながら、二人でクリスマスツリーを何時までも眺めていたのであった。






                   二人で見上げるクリスマスツリー 終

こんなやっつけ作品をご覧くださり、有難う御座います。

それでは皆さん、良いクリスマスお送り下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 他の読み切りもそうですが、らぶいちゃが感じられて良かったです。 [一言] その後の二人がどうなったのかが読みたいです。
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