第1話:練習と痛み
コミケ初日!私はいけねぇ!明日もいけねぇ!そもそも今年もいけねぇ!来年もいけねぇ!再来年もいけねぇ!!
悔しさを込め過ぎたのか作者が途中で崩壊しましたがお気になさらず。
「……うっ…う、ん?」
目を覚まし、重く感じる自分の体を起こす。朦朧とする意識をどうにかして復活させて周りを確認する。
空気は都会と違って気持ちのよい…新鮮なもので部屋に入る風も心地よい。
ふぅと一息ついて私…八野 神奈は藍さんの言っていた"幻想郷"にはもしかしたら辿り着けたのかもしれない。証拠となる物はないが、そんな気がした。
取り敢えずこうして布団を掛けてもらったのだから、恐らくここに住んでる人はいるのだろう。障子を開けて外を見ると石畳とその先に鳥居が見えるところからここは神社なのだろう。
そんな事を考えていると背後の襖が開き、少女のお、と言う声が聞こえる。
振り返り挨拶しながら状況や居場所を把握しようとするが、その時には既に少女の姿は消えていた。代わりに聞こえるのは誰かを呼ぶ声。
「霊夢~。気がついたみたいだぜ。」
「あぁ…今行くわ。」
そんな会話がしてすぐ、二人の人物が私のいる部屋に入って来た。一人は黒髪で、服装は恐らく巫女服…紅と白が殆どを占めており大きな紅いリボンも特徴的だ。きっとここに住んでいる人なのだろう。
もう一人はふわふわとした金髪と、白と黒の服。流石にこれだけではこの人の正体は見抜けない。
そんな事を少し考えていたが今は考え事よりも挨拶をすべきだと気付き、頭を下げる。
「あっ、助けて下さり、ありがとうございました。八野 神奈と言います。」
「あぁ、気にすんな。ま、目の前に急に意識を失ったお前が現れたんだから、流石に放っておく訳にはいかなかったしな。」
目の前に急に人が現れる…とても変な話だ。しかし見付けてくれたのが優しいこの二人であった事に改めて安堵と感謝をする。
「ほ…本当にありがとうございましたっ。」
「いいのいいの。…って、そう言えば名乗ってなかったわね。私は博麗 霊夢、よろしくね。」
「私は霧雨 魔理沙、普通の魔法使いだ。…あと敬語とか堅苦しいの私は苦手だから別に無理しなくていいんだぜ?」
どうやら私が敬語が…まぁ、正直な所話すのも苦手なんだが、魔理沙さんはすぐに気付けたらしい。
私は笑顔を作りながら尋ねる。
「う、うん。…えっと、それで…?ここはどこなのかな?」
「ここは幻想郷。人妖神霊魔物怪物問わず受け入れる…お前の世界から見れば知られる事のない不思議な世界だ。……で、お前はどうやって此方に来たか、覚えてないのか?」
…どうやら存在はしていたらしい。そして私は無事にこの世界に入れた様だ。
後はこの世界が本当に相応しい物なのか…そして私が…変われる場所なのか、それだけが知りたい。
「おい、大丈夫か?」
「あ…いえ、まぁ…訳あって私が望んで来たの、此方に。」
「…望んで来たって…寝てからこっちに来たって事か?」
「ううん、私はただ念じればいいと言われたから強く念じたの。その直後に意識を失って、今に至るのだけど…。」
「!……ねぇ、言われたって一体誰に?」
直後、自己紹介から黙っていた霊夢さんが身を乗り出して尋ねてきた。
「八雲 藍って言う人だけど…。」
「…成程、ありがとう。」
そう言って先程座っていた場所に戻る。八雲 藍さんとはどういった繋がりなだろう。巫女と…多分九本の狐の尾があったから…妖怪、となると巫女と使い魔……は考えられない。それなら霊夢さんがすぐに藍さんに聴く事は出来るだろうし、今の様に悩む顔は作らない筈だ。
「それにしたっておかしいぜ、思うくらいじゃ幻想郷に入るってのは人間じゃ不可能だ。」
その魔理沙さんの呟きに今度は私が頭を抱える番となった。…言うべきか、言わざるべきか。少し悩んだものの、解決する為には白状すべきだろう。
「それは、私の能力が…思った事を現実にさせる力があるからだと思う。」
告白すると二人の表情が固まっていたのが分かる。
それもその筈。物を望めばそれが実体となり、願えば様々な事が叶う。不可能など殆ど存在しない。そしてこれは…思っただけで全てを消す力だってあるのだから。
これが私の秘密であり、悩みでもある。しかしそんな私が迎えた展開は思っていた物と全く異なっていた。
「なぁなぁ、じゃあ魔法道具とか色んなもん出せるって事だよな?!な?!」
魔理沙さんは目を輝かせ、霊夢さんはあまり興味のなさそうな、何かを考えてる様な顔をしていた。
「お、驚かないの?!」
「それに驚いてたらここじゃやってけないしね。…ってどうしたのよ?」
…驚いた。まさか、こんなにもあっさりと受け止めてくれるとは思わなかったのだ。安堵からか少しだけ涙が溢れてしまう。
「あは…あはは……。」
私でも、許される世界、受け入れてくれる人。こんな世界を、そこに住まう人達を絶対に無くす訳にはいかない。
そう胸に誓いながら泣いていた。
「さて、早速だけどここで生きていくためだ!少しばかり私と霊夢が鍛えてやるぜ!」
そう言って私、霧雨 魔理沙は箒を左手で掴み幻想入りを果たした少女、神奈に右手を差し出す。
色々と事情があるようだが能力について一応の自覚をしており、尚且つここで生きていく事を決めたとの事なので私達は神奈に最低限の事を教える事にした。
ここの地理、そこに住む者達。そして幻想郷で広く知れ渡っている"スペルカードルール"との説明をする。
スペルカードルールは幻想郷での様々な問題事を解決する為のシステム。これを知らなきゃ後々大変だろう。
そう考えしっかりと教えると今度はいよいよ──簡易的ではあるが───弾幕ごっこの時間だ。
境内で私と神奈は距離を取ってからある事に思い出す。
「おい、神奈!弾幕は出せそうか?」
神奈は両手を前にだし数秒程そうしていると光球が発生する。淡い光を放つそれは少し儚げにも見えるが、上出来だ。
本人の口からも大丈夫そう!という返事が帰ってくる。
「ならルールは簡単だ!私の弾幕を出来る限り捌く!その為なら何したって構わない!それじゃあ…行くぜ!!」
今回は私の新しく出来た弾幕のテストにもなる。いい機会だと思いながら私は緑色の液体が入った試験管を数本投げ、私が指を鳴らすと試験管は破裂。中からやはり緑色の光を纏い、弧を描く弾幕が神奈に降り注ぐ。
神奈はしっかりと軌道を確認しながら躱す。
「上だけじゃないぜ?」
私が腕を上げると神奈を囲うようにして十二個の魔方陣が配置される。そしてそれら全てが小型の弾幕とレーザーを放つ。
小刻みに放たれるレーザーと扇状に広がる小型弾幕。そして上から降り注ぐ緑色の弾幕はとても避けられる物じゃない。
しかし神奈は顔色1つ帰る事なく全弾躱し、私を視界の中央に捉える。
─────来る、そう感じた私は身構えると神奈は手にしていた弾幕を放射状に放つ。その範囲内にあった魔方陣は全て砕け散った。
「う、嘘だろ?!」
…1つ考えられるのは先程戦う前に出したあの光弾。あれを使わず、ずっと力を流していたならどうだろうか。
もし力を最大限にまで溜めた光弾を放てば魔方陣も弾幕も、掻き消されるだろう。
ここまで、理解するとはな。恐ろしいぜ。
───だから、私も少し全力でいかせてもらう!!!
八卦炉を取り出し、勢いよく此方へと走る神奈に向ける。霊夢が顔色を変えて叫ぶが私としては試したくて仕方ないのだ。
神奈の力を!
ドオォウッ!!!
八卦炉からの巨大な咆哮とレーザーが放たれる。私からは神奈の姿は見えないが加減はした。
果たして──マスタースパークは大きな衝撃音と共に、上空へと弾かれ直後、大爆発を起こした。
「うわっ?!」
生じた風圧により吹き飛ばされつい箒からも手を離してしまう。この高さから落下したら怪我では済まない。
私はどうする事もなく目を瞑った。
…覚悟していた衝撃や痛みは、いつまで経っても訪れない。恐る恐る目を開けると目の前には霊夢…ではなく、神奈の顔があった。
瞬間、血液が急速で回っている様な感じがする。こんなに顔を近くさせたのは霊夢位だが…。いや、そうじゃない。
整った顔立ち、潤った丸い目、頬に当たる滑らかな髪の毛…吐息の温かさが感じられる距離しかない神奈を見て私は動悸は激しくなり、限界を達したのか…そこから意識を失った。
「…あれ?魔理沙さん。魔理沙さーん?」
「気絶してるみたいね、やれやれ…」
今度はコイツを寝かすのか…と呟きながら魔理沙さんを背負う霊夢さん。私は石畳に散らばる試験管の破片を拾う。
「痛っ…」
指からぷっくりと血が出てくる。痛みもある。
これは夢なんかじゃない。この世界は幻じゃない。
そう思いながら私は空を見上げ、幻想郷に来れた事を喜んだ。
はい、予定よりも投稿が遅れました。本当にすいません。
夏休みなのに親の監視とか忙しくてキツいです(・ω・`)
夏休みとか、エンジョイする為にあるもんだろ←
更新速度は遅いですが(私は)幻想入りしない様にしっかりと書いていきたいです。
後、ダイジェスト版ではなくなります。
かなり長くなる事も御容赦ください