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それは  作者: 飛鳥
3/4

終わりの話

すべての結末 SIDE:R


日野梓。平成一九年五月二日一九時頃、「婦女連続暴行犯」本条敦によって被害者自宅近くの廃工場に拉致、性的行為を含む暴行を受ける。同日二十時に犯人による声明で駆けつけた恋人に発見され、病院へと搬送される。右腕、両足、肋骨三本の骨折及び裂傷。緊急手術を受けた後、入院。五月七日に意識が回復。犯人の残存体液あり。他一八名の被害者の体に残っていたものと同一であることを確認。連続事件被害者であることが確定。


頁を捲る手が止まる。手帳の文字をなぞるように指を動かした。

これだけ、だ。あの時自分が知っていたことは。そして、いまでも知っていることは多くない。日野梓が死んだ後、自分で調べて分かったことがいくつかあった。

彼女の意識が回復したその日、彼女の恋人であった楠虎哲が事故にあっている。彼女の入院している病院の前で、荷物を運搬中のトラックに撥ねられたそうだ。病院の前であったこと、それほど大きくないトラックであったこと、そして信号のためややスピードを落としていたことが幸いしたらしく、一命は取り留めた。しかし、目が覚めた彼は壊れてしまっていたらしい。

どうして。それが、彼が目を覚ましてはじめて発した言葉であり、唯一うわごとのように繰り返す言葉だったそうだ。こんこんと眠り続け、目が覚めては自傷行為を繰り返す。爪は短く切られ、腕には歯型と爪痕が絶えず、常に包帯に血を滲ませていたという。彼女は彼を見て、何を思ったのだろうか。

平成十九年十二月四日。自分が彼女を訪ねて、話を聞いた約一月後。彼女は彼の病室で、彼とともに、眠りに就いた。睡眠薬を大量に飲んだことによる呼吸困難。薬は彼女のもので、彼も彼女も自分で薬を飲んでおり、事件性はなかった。

これが、彼女たちの結末だった。半年後の今、本条敦は法によって裁かれ、現在は刑に服している。

深く息をつく。目を閉じると、まぶたの裏に彼女の表情が張り付いている。あの日彼女は、全てをあきらめた目で、それでも笑って、彼に会いに行くと泣いていたのだ。

 ぱたりと音を立てて手帳を閉じる。さて、休憩は終わりだ。

立ち上がって少しだけ背筋を伸ばす。まだ仕事は残っていた。

霧島涼は資料室を出た。



        SIDE:R  顛末を知った彼の独語     END

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