五話
僕はイケメン(多分)に話しかけたのだが彼は僕を見たまま動かない、まさかと思うけど立ったまま気絶とかしてないよね?
そんな事を考えていると馬車から三十代くらいのおじさんがひょっこりと顔を出しイケメン(多分)に話しかけた。
「えっとカイン君?これはどう言う状況なんだい?」
おじさんはまだ若干困惑しているようだ、それはさて置きこのイケメン(多分)はカインくんと言うらしい、人の名前はコミュ力の高い僕としては忘れちゃ駄目な項目なので、魂に刻み付ける勢いで覚える。
「いや、おっちゃん……俺の名前はカインじゃなくてカイルだよ……」
違うじゃないか、でもすでに僕はカイルをカインとして覚えてしまったからカイルくんの声を聞くたびにカイルくんのフルプレートアーマーを見るたびに僕はカインと言う名前を思い出す事になるだろう。
カイルくんはそんなおじさんの声に落ち着きを取り戻したのか、兜を取って僕に話しかけてきた。
「えっと、君が助けてくれたんだよな?嫌なら答えなくて良いんだがどうやってレインウルフ達を追い払ったんだ?」
どうやらあの青色狼はレインウルフと言うらしい、しかしカイルくんをイケメン(多分)と呼んでいたがやはり整った顔立ちで赤髪に赤目のイケメンだった……
「爆発すれば良いのに」
「ちよっと待って⁉︎確かにお礼も言わず変な質問したのは謝るけどそこまでされる事を俺はしたの!⁈」
おっと、どうやら心の声が漏れてしまった様だ、僕は木から降りて、カイルくんに話しかけようとしたが、なんと言おうか迷う、正直に異世界から来たばかりで困ってると言っても信じてもらえるか分からないし、何より異世界を説明するのが面倒臭い、うん、記憶喪失で行こう一番楽だと思うし。
「いやいやさっきのは冗談だよ、それより僕は記憶喪失と言う奴でね、今困っているんだけど助けてくんない?あぁ勿論何から何まで面倒見ろと言っているわけじゃない、近くの町まで僕を連れて行ってほしいんだ、後は自分でなんとかするからさ」
そんな口から出まかせを言ってみるとカイルくんは狼の事など忘れた様に(『影の主役』の応用)哀れんだ顔になり、後ろのおじさんも僕を心配してくれている様だ、信じてくれた事に安心したがむしろ騙されやすい彼等が心配になった。
「安心してくれ‼︎状況は分からんがあんたに助けられた事はわかる、私が責任持って町まで送ろう」
おじさんが感極まってそんなありがたい事を言ってくれた、本気でこの人いつか騙されるんじゃないか?僕はおじさんにお礼を言うとおじさんは笑顔で僕を馬車の中に入れてくれた。