四話
別視点と言うのをやってみたかったのです。
sideカイル・ブランド
俺は今日、冒険者として商人が乗る馬車の護衛をしていたんだ、いつも通りに拠点にしてる町から故郷のブランド村までの往復二時間の簡単な依頼、道中は危険度Eのゴブリンがたまにでてくる程度の冒険者ランクD+の俺としては鼻歌まじりで出来るような依頼だったのだ。
ゴブリンとは緑色の肌をした背の小さい鬼の様な姿をしていて、人間で言うと十歳位の身体能力しかない、しかも頭が悪いので群れで襲われても連携が取れずにお互いを邪魔しあうため少し出来る奴ならむしろ一匹より三匹の方が楽だったりする弱い魔物だ、しかしそれは普通のゴブリンの話で、その上位種のボブゴブリンは危険度Dで俺も複数を相手にすると負けるし、十数年に一度出現するゴブリンロードは危険度A-の国を挙げて討伐する様な化け物だったりするのでゴブリンは見つけしだい駆除する事が冒険者相互組合、通称ギルドの利用規約Dランク以上の冒険者に関する項目に記されている。
この様にゴブリンとは人間にとって害獣であり、ほっとくと人類を絶滅させかねない災害でもあるのだ、話は戻るが俺は商人の馬車を護衛していて村から町へ戻る途中ゴブリンの上位種を見つけたのだ、そのゴブリンはソードゴブリンとゴブリンヒーラー、どちらも危険度E+の一月に一度現れるかどうかと言うゴブリンだがどちらも普通のゴブリンより少し強いだけで個体としては大した事は無い、しかし上位種二体を相手にするとなるとその危険度はD+ほどにまで跳ね上がりその片方がゴブリンヒーラーだと危険度C-になる、つまり俺一人じゃ勝てる確率の方が低い……と言う事を商人のおっちゃんに説明し、街道を少し引き返し旧道から町に向かったのだが、不幸は重なるもので気がつけばレインウルフの群れに囲まれてしまったのだ、レインウルフは危険度Cの雨を求めて移動する魔物で俺は剥製でしか見たことがない、群れで行動するため危険度Cであり、はぐれだとソードゴブリンと同じE+程度だがその統率された連携攻撃に技量の無い者はたちまち食い殺されると言う恐ろしい魔物だ、まだゴブリン共と戦ってた方が勝ち目あったのに……
そう後悔した俺だが、俺は命を懸けておっちゃんを守らねばならない、勿論だが俺は仕事だからと言う理由で命を懸ける程馬鹿じゃ無いし、見ず知らずの奴の為に死んでやるつもりもない、しかしおっちゃんは別だ、村にいる時から親切にしてくれてまだまだ未熟な俺を護衛として雇ってくれた恩は忘れる事など出来ないだろう、勝てなくとも追っ払うぐらいしてやる!!
不幸中の幸いレインウルフは頭が良いので犠牲者が多い様なら諦める、さらに俺の装備は元騎士だった俺の爺さんのフルプレートアーマーだ、関節部じゃなければ奴らの牙は通らない、相性は良い、行ける!!
そうやって俺は自分を奮い立たせ、おっちゃんに馬車から出ない様に言うと技能『挑発』を発動しレインウルフの注意を引きつける、今は互いに牽制しているがいまにも襲いかかってきそうだ徐々に間合いを詰められているのが分かる、飛びかかってきたら取り敢えず殴ると決め、魔力を使い身体能力を強化する、だがその時レインウルフ達が突然動きを止めガタガタと震えだし中には気絶する者もいる。
「なっ!何が起こったんだ!?」
俺は気がつけばそんな事を口走っていたが群れのボスと思われるレインウルフが仲間に吠え逃げだそうと促しているの見て安堵すると同時に、さらなる危機が自分に迫っていると気ずくと周囲を警戒する、レインウルフは気絶した者を除き全ていなくなり辺りは不気味な静寂に包まれていた、すると突然上から声をかけられたのだ。
「大丈夫?僕が助けてやったからお礼してくれてもいいよ」
俺は声のする方を見上げるとそこには黒ずくめの少年が木の上に立っていてニヤニヤとこちらを見つめている、少年は随分と整った顔立ちをしており、少し目にかかる程度の黒髪に黒目と言う珍しい色で逆にその肌は驚く程白く病気か何かではないかと疑ってしまう、華奢で見た感じ身長は160㎝程度と低く一瞬女かと思ったが、程よく低く良く通る声は間違いなく男のものだと考えその可能性を消す、そうして目の前の少年について考えていると馬車の中から商人のおっちゃんが顔を出し話しかけてきた。
「えっとカイン君?これはどう言う状況なんだい?」
カインくんの魔力による身体能力強化は筋肉だけで、しかもツカサの使う身体能力強化と比べると魔力を血流に乗せて巡回させたりはしていないので効率が悪く、ツカサと比べて強化率は三割程です。