コンタクト
調子に乗ってもう一話更新。
「……ありゃあ一体なんだ?」
光を抜けた竹田は見たことの無い地形、建造物に戸惑っていた。
まず、目に入ったのが巨大な城とそれを囲む様にして円形に広がっている街と思わしき景観と外周にそびえ立つこれまた巨大な壁だ。
中世のヨーロッパでもこんな国の作り方は無いだろう、簡単に言ってみれば漫画や映画にあるファンタジー物の何々王国とか呼ばれてそうなモノだ。
一際高く外壁が作られており、その盛り上がった外壁の中に巨大な鉄門があった。
その鉄門からはコンクリートどころか石ですら舗装しているようには見えないものの、硬く踏みならされて出来たであろう地面が真っ直ぐ伸びている。
その伸びた地面の先は広く開けているが、近くには先の見えない森が広がり、別の方角には緑の深い山が連なっている。
「雅人さん……、これは一体……?」
「あ、あぁ。冬子か、無線が直ったか。これは俺も分からん……」
雪村の声からして彼女も呆然としているだろう、巨大な雲に飛び込み、日本に向かって飛んでいたと思ったら見たことも無い建造物と地形しか見えないのだから。
「……日本国内でハリウッド級のファンタジー映画の撮影計画とかありましたか?」
「無い、と思う。流石にこんな……、空にいる俺達からしても大きく見える城と街、それに山を作る何て芸当、神にでもならないと出来無いぞ」
「ですよね……。あっ、竹田さんの方でGPSは何か映っていますか?私の方は真っ暗になっていて何も映っていないんです」
雪村に言われて慌てて自分の機体チェックをする。
GPSは自分の奴も反応無し、画面が消えている。
時計・燃料のメーターは止まっていて後は正常かどうかは分からないが、姿勢指示器は自分の感覚通り真っ直ぐに飛べているだろうし、他も機体を動かせば計器は動いている。問題無いと見ていいだろう。
その事を伝えると雪村も全く同じ状態だと言う。
「視界不良で計器着陸をする訳でも無いし、他の計器が何か駄目になってても良かったんだが、よりによって燃料が分からないとは……」
「射撃演習の飛行先で、機体トラブルによる不時着を余儀なくされた場合のバックパックを持ってきてましたよね。その中に簡単な整備道具を一式仕舞ってあるので何処かに着陸して機体を調べてみますか?」
「あぁ、あったな。一日分の食料と水も入ってる奴だな。必要ないとは思ってたが、こんな事になるとはな」
頭の中に浮かんでいる『ここは異世界だ』『元いた日本には戻れない』の言葉が違和感無く受け止められる、何故こんなにも冷静でいられるのかは自分でも分からないが、恐らく間違いないだろう。
俺たちは何故か別の世界に迷い込んでしまった。
「……ここは私達の居た世界では無くて、もう帰れないんでしょうね」
「冬子もそう思うか、俺もそうだと感じた」
「「……」」
何とも言えない空気が流れる、かと言って絶望感だとか焦燥感だとかは浮かんでこない。
只々もうこの世界で生きていくしか無いんだろうなと言う気持ちが自分にスッと入り込んでくる。
「折角新しい人生を始めれる世界に来れたんだ、二人で畑を耕してひっそり暮らす隠居生活とかゆっくり出来て良いんじゃないか。行く宛も無く長い旅に出るとか」
「二人で、ってプロポーズのつもりですか?」
「なっ、ばっ!そ、そんな事は行ってないだろう!」
無線越しで良かった、これが冬子と向い合っての会話だったら碌に返事すら出来ずに詰まる所だった。
冬子が生まれた時から一緒にいる俺だが、見飽きる事が無い程に美人に育っている。
身長170cmで女性にしては高め、これは俺の身長が174cmで少し危機感を覚えている以外特に言うことは無い。
問題は髪は邪魔になるからと何時も肩にかかる前に切るからサッパリとしたショート、これが俺のドツボその一。
次にスタイル、肌は白く足が長い。胸は去年一緒に海に行った時に見た水着姿からしてEよりのDで貧乳も過ぎた巨乳も余り好きでは無い俺にとっては嬉しいモノ。
パイロットとして体力を付けるためのトレーニングも毎日欠かさずしている為身体全体、特に腰も引き締まっている。
臀部も海に行った時に思わず触ってしまいたくなるほど……。
「竹田さん、さっきからウヒウヒ言って何を考えているんですか」
「い、言って無いだろう。それよりまた竹田さん竹田さんって、雲の中抜けた後に最初に『雅人さぁん』って言ってただろう。何で竹田さんなんだ」
「そんな猫撫で声は出してません!どうせさっきもエロい事を考えていたんでしょう、この変態オヤジ」
「か、考えて無いぞ!大体まだ俺は二十後半に入ったばっかりだ、オヤジ何て言われる歳じゃない。ナイスガイの範疇だ!」
「ぐっ、確かに引き締まった身体に厚い胸板。顔も少し濃いぐらいが私に取ってドストライクのナイスガイ……。って違います!」
「殆ど無線が拾って無かったぞ、何て言った。ナイスガイって言ったか?」
「い、いいいいい言ってません!そんなにナイスガイになりたいなら、あそこに見えるドラゴンを倒すくらい……。えっ?」
「はっ?ドラゴン……?」
無線越しに痴話喧嘩を起こす二人が唖然としながら見つめるのは、山から王国に飛んでくる大型爆撃機以上の大きさの赤いドラゴンだった。
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